第二十四話 惚れ薬トッピングの苺
「キャロライン姫、何処か廻りやすい道をお願いします、その間、俺とイミテが皆を邪魔します!」
「判った、近道を行こう! 飛行型以外は行けない道を!」
キャロラインはドラゴンを上空へ登らせる手綱を握り、俺はイミテに命じて、他攻略者の足下を邪魔してやろうと思った。
「イミテ、もし蔓を作れるなら、皆の足を絡み取れ、一瞬でもいい。転ぶように」
「魔力が必要だ、媒体はどうする?」
「イミテちゃん、俺の指囓ってみ。ア、食いちぎらないでな」
「ふむ、こうか? ――?!!物凄く、良き魔力を持っているな、どうしたこの魔力」
「毒物って魔力込めて作るから、どんどん体内に溜まっていったんだよ。魔力と毒素の強さで、普通は死ぬんだけど、俺こういう体だからなあ。毒を食べる度に魔力が溜め込まれるんだ、それでも皆、俺に毒入り紅茶とかやめねーんだけどな!」
「――悲しき産まれよな、だが充分だ、魔力としては!」
俺の体の表面にある汗だけでも、魔力の備蓄となっているはずだと思ったらやっぱりそうだった。
イミテは俺の人差し指を囓りながら、蔓を大漁に皆の足下へ纏わり付かせ、転ばせていく。
皆からは非難囂々、阿鼻叫喚図が出来上がった。
「はっはっは、後が怖いな-!!」
「多分、恨まれるであろうな」
「まじで教科書気をつけないと……」
と会話していたら、体が揺れたので、慌ててドラゴンを操るキャロラインに捕まる。
キャロラインはドラゴンに触れあえることに大喜びで、俺に振り返り、今までで一番無邪気な笑みを見せる。
「お、いいじゃん、その笑顔」
「え?」
「不自然じゃない笑みだ」
「り、リーチェ様……――そういうのは、好きな子にしか言っちゃいけないんですよ」
「そうなのか?」
「……素を褒められたのは初めてだから、勘違いしますよ!!」
キャロラインは俺に舌を見せてから、道が定まったのか下降して、苺のあるマップに移動する。
苺は各種色んな色合いがあり、キャロラインは目を白黒させながら着地する。
「苺にこんなに沢山種類はあったのだろうか」
「リーチェ様も不思議ですよね」
よく近くに行けば、立て札があり、そこには『金色の苺を食べたもののみ、普通の苺を持ち帰る資格がある。個数は食べたものの二分の一を持ち帰れるものとする。※リーチェ・ベルナルドは金ではなく銀色を食べきることとする』
……これが、ロデラの行ってた特殊プレゼントかァ。
これ多分中身、毒なんだろうなあ。
毒自体はきかねぇと思うけど、過去の思い出が疼いて、ぶふうとお腹が痛くなると同時に痒くなる。
何にせよ、山ほどある苺のなかから、銀色を探すのって難しいが今は迷うことなく選別するしかない。今此処にいるの俺のチームしかいないし!
「キャロラインは金色を! 俺は銀色を探すので! イミテは他チームきたら出来るだけ妨害してくれ!」
「判ったよ! 任せて!」
苺をかき分け、出るわ出るわ山ほど、苺たちが、色鮮やかでカラー豊かなものが。
銀色を一粒見つけたので、食べてからステータスを出す指先の動きをして、ステータスを見てからぞっとする。
『惚れ薬は効きません! バッドステータス無効!』
これ他の生徒がもし食べたら大変じゃねーの???
ロデラさぁん、何考えちゃってるの?!
これは他の生徒に害を与えてはいけない、銀色の苺を食べきるしかねぇ!!
ずっと惚れ薬きかねぇきかねぇってシステムに言われてる気ィするけど、知ったことか!
キャロラインの困惑していた瞳に輝きが見えた。
「リーチェ様、金色あったよ!」
「じゃあ苺を指定の係の案内に従って貰ってきてくれ! 俺、銀色探すから!!」
くっそ、思った以上に銀色が多くてタイムロスが酷そうだ。
イミテの邪魔を乗り越えた猛者どもが、乗り込んできた、目には憎しみを宿していた。
ウン、さっき転ばせた人達だな!
「どけ、リーチェ! 苺を貰うんだ!」
「リーチェ様最低! 苺独り占めする気?!」
罵声が酷いけどそれだけのことしたから、しょうがねぇな!って思う。
銀色苺のカウントが残り一個になったところで、他の生徒が銀色苺を食べた。
嫌がらせのつもりだったのだろうけれど、洒落にならない!
「よせ馬鹿、銀色は食べるな!」
「そんなこといって、先に妨害したのお前なんだからな! ……ン? んんん?」
銀色苺を食べた男子生徒の一人が目の色を変えて、「ロデラ姫様の為の命いいいいいいい!!!!!!」と言いながら、いきなりゴールへ向かっていった。
手を組んでいたらしき人が、驚いた様子で追いかけていった。あのチーム棄権になるだろうな……。
「キャロライン姫様失礼、リーチェ様が課題失敗したようなので、取った分の半分は減らせて頂きます、以降苺の補充は出来ません」
「そ、そんな!」
「キャロライン、構うな、次行くぞ!」
「はい!――ッふふ」
「どうした?」
「素のリーチェ様の方が素敵だと思ったから。敬語じゃなかったり、人に荒っぽい貴方のほうが貴方らしく見える」




