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第二十二話 金にたやすく釣られる男

「キャロライン姫、もし良ければ、俺と組みませ――」

「リーチェ様……? やだ、いけませんわ、年頃の男女が仲むつまじく、声を掛け合うなど……リーチェ様、どうしてその人を選ぶのですか」

 ぞくぅっと背筋が泡立った、変な声が出そうになる、背筋をつつーとなぞられたのだから。

 ロデラ姫だ、うっとりとした眼差しで俺を見つめている。


「ろ、でら姫様、あの」

「リーチェ様? 姫は悲しゅう御座います、あの誓いが嘘だったかのような……現世がお嫌ではなかったのですか?」

「あ、そんな時代もあったけど」

「けどとかだからとかでもとか、聞きたくないです、そんなのリーチェ様だなんて認めませんわ……そんな御方なわけがないものッ」

「ロデラ姫、頼むから向こうへ。オリエンテーリング始まる前に話したいんだ」

「……リーチェ様、もしも貴方が勝つのであれば。たった一人の犠牲と、多くの犠牲、どちらを選ぶのか楽しみですわ」

「え――」


 ロデラ姫はにっこり笑うなり去って行った、キャロラインが躊躇ったように俺に声を掛ける。

「何というか独特の人だね」

「あ、ああ、昔からああなんですよ。あのもしよければ俺と組みませんか」

「勿論いいですよ! 宜しくお願いします、リーチェ様! 私、足を引っ張らないように頑張ります! リーチェ様は甘王国のお菓子についてお詳しいのですか?」

「うーん、どうだろうね。一つだけ材料に心当たりはあるよ」

「どんな材料ですか?!」

「ここでは秘密。誰が聞いてるか判らないからな」


 つい妹にする仕草みたいに頭をぽんぽんと気軽に撫でてしまったが、はっとして、キャロラインを見つめるとキャロラインの顔が赤い。

 ああ、ウン――恋する目って、こういう目だよなぁ。


 イミテが俺の足の甲を思い切り踏みつける。

「いって!!!!」

「だらしない顔をしていたからな。目的をお忘れかと」

「あ、いやいや、大丈夫だイミテ。ディスタードは誰と組むんだ、ろ、う……」


 言葉を失った。


 ディスタードがシルビアに声をかけられていたからである。

 シルビアと何らか話し、がたがたと震え、項垂れていた。

 シルビアは俺と視線が合えば、にっこりと微笑んだ。


「貴方様の親友は心が深いですね、私と組んでくださるって」

「おい、ディスタード!」

「ご、ごめんよ、だって、金貨二百枚前払いには耐えられないんだ……ボクだって悩んだンだぜ?! 友情と金貨、どちらをとるかって五秒くらい!」

「ディスタードてっめ、覚えてろ!」

「我が盟友よ、今日だけは許してくれッ!! あのことは言わないから!」

「あのこと? ディスタード様お詳しく……」

「いいや、それだけは人道に反するから、金貨を何百枚つまれても話さないからね、シルビア姫!」


 断固として言い切るディスタードに、シルビアはくすくすと笑い、しょうがないと言いたげな顔でさっさと去ろうとしたが、振り向きざまに言葉を残していく。


「リーチェ様、貴方様は結果的に未来における自分の首を苦しめましてよ、今のままですと。私と仲良くした方がいいと、思いますのに、不思議な方」


 熱烈なアプローチ。だけど何処かその中に紛れ込んでるような気がする毒の花。

 笑顔を見つめるだけでも、魅入られてしまう気がした。



「シルビア様」

「なぁに、リーチェ様」

「今回振る舞われるお菓子に暖かいお菓子もあると思います……暖かいケーキ、選べたらいいですね」

「……――あ、貴方って方は、本当に罪深いこと」







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