第二十一話 個人的なプレゼント兼いやがらせ
あかん、この子見てると胃が痛い。背中も黒歴史を思い出したことから、痒くなる。
思い出す思い出す、この子に色々仕組まれて、毒薬チャレンジされた過去を。
「それでは皆様、オリエンテーリング頑張ってくださいましね……その、あたくしも応援しておりますわ」
可愛らしい声と笑顔に、男性陣が盛り上がる中。
敵視する視線が二つ。キャロラインと、イミテ。
シルビアは我関せずといった様子で、指のささくれチェックをしていた。
キャロラインの好感度が気になるところだ。キャロラインの好感度を維持しながら、ヴァスティへの愛に目覚めて欲しいのだから。
できることなら、永遠の二番手ポジションが美味しいと思う、この流れでいくなら。
だから出来るだけ、キャロラインの好感度は下げたくないんだよな。
「リーチェ様にだけ、あたくし個人からプレゼントも各所に用意しておりますので……あの、その……受け取って、ね?」
男性陣から注目を浴びる、先ほどのイミテの包丁的眼差しみたいなものが何十倍も突き刺さる感覚だ。
まぁうん、今まで、薄らと気付いていたけど、口にしなかったけど。
これ、敵に回したな!!! 男子生徒全員!!
ぱっと見、シルビアにもキャロラインにもロデラにもモテている、不吉の象徴に触れた男。
これは、中々に、手出ししにくいから、陰湿な嫌がらせとかきそう。
「リーチェ君、教室から出るときは教科書盗まれないようにな!!」
ディスタードも同じ考えが過ぎったのか、無邪気な笑顔で気遣われた。
守ったり庇ったりする様子がないのは、悪意があるからではなく、面倒なのだろう。
最近判ってきた、したたかな面もある、ディスタードには。
だから全てが全て、悪いとも言えないし、今の状況下で味方になってくれている分には大変有難い。
それを。
踏まえて。
言おう。
「俺、前世で何かしたのかな」
オイスター事件だっただけだよ!!!!!!!!!
*
オリエンテーリングの説明が行われるので、皆で講堂に集まる。
講堂では立派な壇上があり、そこでアレク先生が長々と説明をしている。
「アレク先生がどうして説明してるんだろう?」
「知らないのか、あの先生実はどこかの王子だって噂もあるんだぞ」
男子生徒の噂話が耳に入ったのか、アレク先生はシィと指の仕草だけで男子生徒を黙らせ、改めてルールを確認する。
「素材や具材が各所に、設置されています。生徒諸君は、うまく組み合わせて、甘王国の食材を食べてください。食材を得るためには、食材を規定量食べてください。その食材を得たなら、次のポイントへ。規定量食べられず駄目なら、棄権してください。これは胃袋の勝負です」
各所のプレゼントって、これ毒紛れてるの確定だなー???
アレク先生が物言いたげにこっち見てるしなーー???
「素材や具材はばらばらです、街に点在していまして、早い者勝ちかつ、奪い合い有りです。最終的に上位五名の成績を、カウントします。それでは、午後に始めましょう、皆さん気合い入れてくださいね。ああ、そうそう、近くの森――ヘリオスの森には最高級の食材は一点だけあります。ですが、あまりお勧めはしません。魔物がでます。素材奪い合いのための決闘も、許可は既に誰にでも下りてますので。この食材だけは食べずにでも大丈夫。それでは解散」
知ってる、このイベント知ってる!
確かこのヘリオスの森の最高級食材手に入れたら問答無用でどの組み合わせでも一位とれるんだよな!!
問題は誰と組むかだ、ディスタードは一位になったらディスタードに惚れられてしまう可能性が、あのヴァスティの予言だと……いや、極端な話キャロラインからの好感度が八方美人になって誰のEDにもいけない可能性があるんだ。
だから、俺のルートがあるからマシだと、ヴァスティは判断して、俺に勝てと言ったんだろうな。正規ルートに入れと。
となると決まった。




