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第二十話 オリエンテーリングの日

「御機嫌よう、ディスタード様」

「うむ、御機嫌よう! 元気かね、はっはっは!」

 あの決闘からディスタードは大勢の生徒から人気が出た、勝負を代理して勝つという弱きを助けた未来の騎士という存在は、もてにもてた。

 シルビアのほうは、真っ向から誰よりも先に決闘をしかけた女性ということで、少し強気で勝ち気な女性という人気もでた、一部で。

 ディスタードは人気を楽しみ、シルビアは面倒くさそうな思いを押し隠した表情で、笑顔で対応していた。

 俺? 俺はディスタードの影に隠れて勝利だけ貰った卑怯者ってことで、益々皆から嫌われちゃった。

 まぁ気にしないけどな。逆に考えると、近づく人の狙いが見えやすい。

 シルビアと仲良くしたいか、キャロラインと仲良くしたいか、ディスタードを紹介してほしいか、イミテを貸してくれのどれかだ。

 どれもお断りじゃ!!


「今日も嫌われモノナンバーワンだな、君は!」

「おはようっす、ディスタード様。今日はオリエンテーリングらしいっすね」

「うむうむ、生徒同士の交流を深める為にらしいな! ボクはッ、君とは争いたくないっ、故に手を組もうな、心の友よ!」


 ――ゲームでもそういえば、あのヤンデレリーチェとディスタードって仲良しだったなァ。ほっとけない性格なのか、面倒見がいいのか、判らないな。


「心の友よ!」

「二回も言わんでいいっつの、一緒に頑張りましょうね」

「うむ! それにつきましては、今回のお値段……」

「やっぱり組まない!!」

「嫌だなぁ、冗談だよ! はっはっは!」


 ただのカモとみられてるに、三万円。



「おはよう御座います、リーチェ様ッ、ディスタード様!」

「あ、キャロライン様だ、ごきげんよう! 今日も雪のように素敵な髪と、素敵に凜と輝く瞳ですね! うっ、眩しい、麗しくて目が焼ける!!誰か、誰か水をここに!」

「ディスタード様、過剰な褒め方は嫌われますよ」

「リーチェ君ッ!!!!!冷たいなァ、君の心はアスモーラ地帯の氷よりも、冷たい!」

「キャロライン様御機嫌よう、何かあったんですか、目が少し、腫れてます」

 ディスタードを無視して、弱気なキャロラインに話しかける。何かで泣いた証のように、赤くキャロラインの目は腫れていた。

 キャロラインは微苦笑すると、「何でも無いですよ」と誤魔化し、俺の隣へ座った。


 ――うん、アッシュルート、ないなこれ!!

 迷いがなかったもの、俺の隣に座ることに対して。他に座りたい席とか見てないし。

 アッ、アッ、向こうでアッシュ様がこっち睨んでる、いや正確に言うと俺を睨んでる!

 すみません、ライバルですもんね、でもそれなら奪っていっていいんですよ?!

 そこからヴァスティルートにするけどな!?!


「おはよう御座います、皆々様方」

 シルビアがしずしずと取り巻きと一緒に教室に入ってきた、シルビアは俺と目が遭うとにこりと笑いかけ。アッシュの隣へ座った。

 何を話しているのかは聞き取りづらく、判らなかった。


 アレク先生が入ってくるなり、賑やかだった教室が静かになり、アレク先生は皆に笑いかけた。


「本日は天気もいいですね、おはよう。さて今日は皆さん知ってるかもしれませんが、甘王祭というオリエンテーリングの日です。個人で挑むのは基本ですが、中にはライバルの人と手を組まなければならない瞬間もあります。これを機会に皆さんお友達の名前を覚えてくださいね」

「先生、何でかんのーさいなんですか?」

「一位の人には、珍しいお菓子が振る舞われるからですよ。他の方にも、甘露水も振る舞われるようですし。東方にある甘王国からの商品が振る舞われる日なんですよ、反応を見るのも兼ねて。貿易の試験台のようなものですね。当然、甘王国からの使者や、お姫様もいます――皆さんに紹介します、どうぞお入りください」

 甘いピンクブロンドヘアーをうねらせた可愛らしい少女が教室に入ってくる。

 イミテをクール系としたら、キャロラインは元気系で、シルビアはお淑やか系。

 お淑やか系だけども強気なあたりが少し、このお姫様と違う。

 少女は間違いなくお淑やか系ではあるが、内気な少女の様子。

 薄いアクアマリンみたいな瞳を潤ませてから、はにかんだ。

「初めまして、ロデラ・スコーピオンと申します。気軽にロデラとお呼びくださいましね、特に――リーチェ様?」

 教室が一気にざわつく、え、俺……俺、ですか?

 イミテの視線がいったい。すっげいったい。これ包丁だったらぶっさされて怪我してるレベルで視線が刺さってる。


「ロデラ、様?」

「リーチェ様、覚えてませんか? 幼い頃……秘密の誓いを交わした仲では御座いませんか」


 恥じらう姿に可愛さに悶える衝動と、混乱が同時に押し寄せてくる。

 思い出せ、前世を思い出す前の記憶を思い出せ――ッ!!

 ヤンデレ時代だった、あのかつてを!!


「あ、……――」



 ふと、過ぎったのは。



(あたくしも将来、リーチェ様のような毒を作りたいです。この世界の医療はすごいんですもの……)

(じゃあ将来、俺が死ねる毒を作ってよ、現世には飽き飽きしているんだ)

(はい! お任せください! あたくし、精一杯頑張りますの……そしてリーチェ様に認めて貰う頃には、リーチェ様はあたくしだけのもの……)



 ヤンデレ仲間という記憶だけが過ぎって、ふぐぅ!!っと俺は俺でかっこつけた黒歴史が過ぎったことで、腹部を押さえて俯く。

 胃が、痛い。


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