第十九話 リーチェの自信のなさ
「主殿よ、いよいよ私はあの清らかな魔力の者が気に入らない」
「ど、どうしてだ」
「人の幸せを決めつけるところだ、それと主を! キャロラインと! くっつけようというところだ!」
見目はつんけんとした様子だが、ぷりぷりと怒ってる様子らしい。
イミテは視線が合うと、ふいっと反らして拗ねている。
「主殿はそれは人間であり人間と番うのが当たり前であるが、それはそれとしても私は気にくわない。実に、不愉快ぞ!」
「まぁ落ち着けよ、俺達の狙いはキャロライン姫様と、ヴァスティをくっつけることだ。それは変わらない――しかし、困ったな。シルビアだ問題は。シルビアがどうあっても今の流れだと、邪魔してくる。そこまで俺に拘る理由が分からないな……」
「そりゃあ惚れとるからだ!!」
「い、いや、そういう目には見えねぇんだよなぁ……」
「何故お前様に判るというんだ?!」
「最初の頃の、好意の目では、あまり、ない気がして。それでも仲良くしようってのはよく判んないンだが」
「ほほう、百パーセント自信を持って、惚れられた時の目が判るというのか?! お前様は前世でもてたのか!」
「これっぽっちももてたことないっす!!」
「ならば百パーセントではなかろ! 惚れてるのだ、あれは!」
「い、イミテちゃあん、ちょっと欲目ぬこうか。俺そこまでもてないと思う」
「前世のお前様は見目がどうだか判らぬが、性格は控え目。控え目故に、きちんと話を聞く。控えめでポジティブで、現世では見目の良く、尚且つ王子という身分。お前様は自分の価値が判っておらぬのだ!」
「……控えめってもてるのか?」
「話をきちんと聞き、適した話を出来る雄はもてると思うぞ、人間であれば」
「人の話を聞くのは基本だろ」
「それが出来るようでいて出来ない奴が多い、ディスタードは極端だが見れば判ろう?」
ディスタードごめん、すげェ納得しちまった……!
いや、でもディスタードは濃ゆい層に人気はあるって聞いているしなァ。
実際の学園生活ではどんだけもてるかは判らんが。
「イミテそういや風呂入らないのか」
「ああ、水浴びせねばな。この部屋に湯ははれぬが、水は張るスペースがあるらしい」
ああ、あの洗面所の隣にある、バスタブだけがあるスペースか。
あそこは何のためにあるのかと思っていた、シャワーもお湯も出るわけではないのに。
お清め用らしいと納得した。
「あの水浴びは今後私が使う、お前様は覗くでないぞ」
「ああ、うん」
「馬鹿者、そこは嘘でも悔しがったり寂しげにするものだ!」
イミテは小さな舌をぴっ、と一瞬出してしかめっ面をした。あかんべぇとやつだ。
それをしてから、さっさか水浴びにいった。
――人間ではない、とは、いえ。
同じ一つ屋根のもとに、女の子が裸で水浴びして、理性の心配をしかけていたが、疲れていたからか、すぐさまふらふらとベッドに行き、横になった。
色んなことがありすぎて、疲れたのだ。
すややかに眠り、その日の夢は妹に、ヴァスティの攻略秘訣を教わるものだった。




