第十八話 感謝すべき?本命ルート選択
「だからといって、国や貴方を思うヴァスティを見放していいって道理はないと思うよ。貴方の自由を選びたい気持ちも大事だ、だけど、それじゃあまりにも、……悲しい。キャロライン姫様、予言を重視しながら貴方の自由も重んじる未来を決断するお手伝い、させてくれませんか?」
「……! ど、うして?」
さぁ考えろ、とっておきのイケメン台詞考えろ!
おりてこいおりてこい、誰もが落ちるようなイケメン台詞ゥウウウ!!!!
「放っておけないから、かな」
主にヴァスティがな!!!!!とは言えないけど、それで充分だった様子で、姫様ははにかみ、有難う、と告げた。
「判った、貴方に相談する、今度から。――そうね、ヴァスティのこと、神様だと思いすぎていて大事なこと忘れていた。ヴァスティだって人間だもの、見放されたら、悲しい、ものよね……相談して良かった。大事な基本の気持ちを、忘れそうになっていた気がするわ」
おっし、セーフセーフ!!
あっぶね、と心の中でお祭り状態なのを悟られないように、食べ終わって去って行くキャロライン姫を引き留め、女子寮まで送っていく。
女子寮まで送れば、授業には間に合わないけど、イミテと話す時間くらいはあるだろう。
ディスタードにも御礼を言いそびれてしまっているし。
「イミテ、予定変更だ。姫様の婿候補に俺が一旦なる。そこから、最初の目的を目指すぞ。でないと、この世界の未来はやばい……いや、このままだとキャロライン様は国外追放になってしまう」
「お前様の望み通りに――ったく、でれでれしおってからに!」
*
二日に一度の報告って話だったが流石に今日は報告会な予感がしたので、早めに風呂に入る。
風呂は皆、侍女なしで入るのが初めてだったようで戸惑いを見せていたが、俺はさっさか済ませて、お先にあがっていった。
部屋に戻れば、鈴から咳払いが聞こえる。
部屋にある林檎でもむしゃむしゃと食い散らかしていた時だったから、ごくんと大きな塊が喉を通過して、咳き込んだ。
口と鼻が林檎の味ですっぺえすっぺえ!!
『お前には感謝していいのか、苛ついていいのか最早わかんねぇ……』
「何だどうした、っけほ」
イミテが俺の背中を摩り、気遣う中、気にした様子なくヴァスティは話を続ける。
『一つお前に感謝すべきは、お前が姫様に気を持たせたお陰で俺の国での役目として、首の皮は繋がった。お役御免になりそうだったが続けてくれとなった』
「俺にぶつけたい怒りってのは?」
『お前以外に姫様の婿候補との未来が見えなくなったからだよ!!! アルデバラン王子との輝かしい未来が! ディスタード様との未来も悪くなかった!』
「他にも確かもう一人候補いたよな?」
『よく知ってるな、もう一人の候補は、アレクという教師だ』
「あー、あのくせ者な先生か……」
『姫様自身も、お前に惹かれつつある。もう止めようがないんだ、くそゴミ虫が』
「いやだって、あそこで引き留めないと、お前……」
『――どこで引き留めたほうがよかったのか、どこの言葉が姫様に響いたのか自覚しているということは、お前は計算したあとか? 姫様が、破綻の道へ行かれぬように』
「……くわしいコトはいえねぇけどさ、俺だって闇雲に姫様やお前の邪魔したいわけじゃあねぇんだよ」
闇雲に人の幸せを壊して楽しんでいるわけじゃないと、伝えたくて出た言葉だ。
ヴァスティは暫し考えた様子だったが、咳き込みながら、言葉を口にする。
『次の、学園のイベントはオリエンテーションだ。そこで一位になった奴が姫様の心を射止める。こうなったら――お前が、射止めろ、完全に。射貫け』
「それは対個人か、チーム戦か?」
『個人戦だ、だが損得で手を組む奴らも出てくるから、最終局面まではチーム戦みたいなものだ』
「お前は俺が婿でいいのか?」
『……婿無しよりは、マシだ』
「もう一つ聞いて良いか、どうしてお前は姫様の意志を聞かないんだ? 姫様がどうしたい、かとかそれに沿わないのか?」
『――……頭が痛い。すまん、そろそろ連絡を終えるぞ』
それは比喩とかではなく、がちめに頭痛がするのだろう、大きく咳き込んでいる今にもやばい咳が途切れた。
イミテと視線を交じらせる。
イミテは不愉快そうに、結界を作り上げ、俺と作戦会議を。




