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第十三話 第三の攻略キャラ兼天災

「契約獣と契約する方法は簡単です、相手へ自分の一部を与える。髪の毛でも、爪でも、愛用している指輪でも何でも良いです。そして相手がそれを囓ったり、飲んだりした瞬間、契約は成立します。その点に注意事項があります、契約後、本当の名前を教えるのが大事です。本当の正体を知らない相手に、誰だって命を預けたくないでしょう? やってみせますね」

 アレクサンドル先生は、自分の愛用らしき装飾が地味な指輪を一つ、ペガサスに与えるとペガサスは最初匂いを嗅いだり、すんすんと様子を窺って、アレクサンドル先生へ鳴いたりしていたが、すぐに指輪へ囓りついた。

 瞬間、ペガサスは綺麗なエメラルド色の灯りを纏い、先生へ呼びかける。

『パドリック』

「パドリック君ですね、僕はアレクサンドル・スピカですよ。宜しくお願い致します。――さて、実践してみましょうか、皆さん」


 生徒達が好奇心の眼差しに満ちる。どの動物にしようか皆悩んでいるが、動物が並んでいる此処はやはり獣臭い。しかして、皆契約後、動物たちは人の姿を取るなり獣臭さが一切なくなるのだった。


 本当の名前、か。


「イミテ」

「何だ?」

「俺、さ。俺、今、前世の記憶が戻っているんだ」


 皆が聞こえないよう、皆が騒いでる間にイミテだけに話しかける。

 木陰が涼しくて、さわさわと木々が靡き、イミテは風に靡く黒髪を抑えながら俺を振り返る。

「前世とな?」

「うん、本当の名前を教えた方がいいのなら、俺にとって本当の名前ってそっちの気がして」

「――教えてくれるのかお前様。それはまだ誰にも話したことのない、話であろうに?」

「うん……俺ね、イノウエアラタっていうんだ」

「……お前様……タイミングを考えぬか?」

「え?」

「ほれ見ろ、本物の契約の証になり髪の色が若干変わってしまったではないか、っふふ、罪作りな男だな」

 イミテの髪の内側――インナーカラーがピンク色へと変化した。


「可愛いじゃん」

「馬鹿者、からかうでない! しかし、そうか、前世、か。来世もお前様の人生を追いかけたいよ」






 こんにちわどうも、ナチュラルに契約の儀を不吉とされてる黒龍と交わしていた俺です。

 キャロライン姫が選んだのは白い子供のドラゴンで、人間になると白髪の騎士の姿をしていた。シルビア姫が選んだのは、白い大蛇で人間になると緑髪の魔道師みたいな姿になっていた。


 さてはて、見学が終わるか。

 次は剣術の授業だな、女の子は魔道の授業か。

 剣術の授業は隣のクラスと合同で、隣のクラスには婿候補王子がいるから打ち解けられたらいいんだが。


「リーチェ様、お食事のお時間に誘いに参りますわ」

「え、あ、あの」

「――リーチェ様、私とは仲良くしたほうが良いとは思いましてよ?」


 ほんの少しだけきらりと光る猫のような瞳に、俺はどきりとし。

 しばしの間シルビア姫と見つめ合った――シルビア姫はにこにことし、俺は息を呑む。


 この顔は――何かを、知っている。


 何を? 何を知っている? それとも、キャロライン姫を選ぶなと言う牽制か?

 目を眇めただけで元は白い大蛇だった男が、前へ出てシルビア姫を隠して俺を睨み付ける。

「ルル、駄目よ。その方は丁重にね、大事な御方なの」

「しかし、シルビア様――ッ……ち、気にくわねぇんですよ、かくも美しく可憐なシルビア様からのお誘いであるのに断ろうとするなど、言語道断だ!」

「身内からの美辞麗句が物凄い」

「ンだとぉ!? 舐めてるのか、このもやし王子!」

 ルルと呼ばれた男は、杖に手を掛け、睨み付けてくる。すると、イミテはさっと俺の前に現れ俺を庇う。

「おっと、リーチェを攻撃するのであれば、私が剣となるぞ」

「退けよ、黒髪」

「貴様――ほう、気付きながらそう呼ぶか」

「そうだよ、気付かない馬鹿はいねぇし、口にする勇気ある馬鹿も僕くらいだ、なあ退・け・よ、黒髪」



 ぶわっと周囲に空気の圧が広がり、風となる。

 俺はイミテにひっつかまり、シルビアは静かに立ち薄らと微笑み、イミテを観察していた。


「そうね、――少し。ほんの少しだけ。仲良くした方がいいと判ってくださるような『説得』を、お願いして良いかしら、ルル」

「ええ、任せてくだせぇよ、力で判らせるくれぇなら! 次の授業終わりにでもどうだ、ああ?」

「おい、イミテ、応戦するなよ!?」

「だがこのまま引いたら、お前様はシルビア姫の言うことを聞かねばならぬぞ!? 決闘を引き受けもせず、引くのであれば負け犬以下だ!」

「決闘?」

「ようは――喧嘩を売られているのだよ、朴念仁!」

 マジかよ、と驚きながらシルビアを見やる。シルビアはにこりと艶やかに微笑みながら、口元に指先をあてる。


「あら決闘は契約獣がいて成り立つものでしょう? 貴方にはいない、そうですよね、リーチェ様?」

「うっ!!! そ、そうだ、俺はこのイミテしか仕えてくれる奴がいないぞ!」

「人間の女性相手に決闘はしたくないのよ、それなら諦めるしかないかしら?」

 諦めてくれるならラッキーかな、っと思っていたら。

「リーチェ様が、諦めてくれるしかないかしらね?」


 そういうことかよぉ!! はめられてる、俺はめられちゃってる!


「先生、決闘って……なんすか!?」

 茫然とみていた先生に決闘という情報がないことを示し、説明を促す。だって先生は言ってなかったしな!

「人間同士、姫君や王子貴族が学園で争いを起こすわけにはいきません、小さな喧嘩であってもね。そこでそのようなときは契約獣同士に代理で闘わせるのですが……はぁ、早速ですか」

 アレクサンドル先生は、盲点だという顔をして溜息をついた。

 イミテが黒龍だと周囲にばれてはいけないというのに、決闘を申し込まれている状態だ。どうしろっていうんだ!


「はっはっはっは、これは面白い場面に出くわしたぞ! 良い、実にイイ、素敵だな、爽やかに汗を流せる瞬間に出くわすとは! 殴り合って和解というタイミングだな!? 宜しい、弱きを助け強きを挫く、そこのリーチェ君の代わりにこのボクが代理決闘してやろうではないか!」


 声が突然響き、空から赤いグリフォンが降り立ってくる。

 赤いグリフォンに載っていた人が、皆の視線を集め、くるくる三回転周りながら着地し、少し目を回した後に、俺へ視線を向けてから、シルビア姫へ笑いかける。


 ――こいつ!


 こいつ、次の授業に出てくる予定だった攻略キャラのサンヘル伯爵家の長男だ!


「さぁ弱きは誰だ、名を呼べ、ボクはディスタード・サンヘル! 将来の騎士隊長とはボクのことだよ!」



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