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第十二話 アレクサンドル先生の授業

 心の中で、騒動が落ち着いたことにほっとしながら、授業が始まるのか、茶髪の眼鏡をつけた男性が入ってくる。

 少しだけおどおどとした様子で、俺と目が遭うとふわりと青い目を微笑ませた。


「ほら授業が始まりますよ、各自教室に戻ってください。さて、本日より皆様は王子や姫、もしくは貴族などの身分などを一切合切忘れてください。今日より貴方方は何者でも無い、ただの生徒であり、ただの人だ。ここできっちり各々の目的の為に学んでください」

 教師は自分の名前を、黒板に書き出す。

 黒板にはくねくねした字が連なっていたが、この国の字は俺には読めるようで、日本語の発音で脳内にインプットされた。

 アレクサンドル・スピカ先生、か。確かこの先生も攻略対象だよな。

 この先生、ストーリーは忘れたけどキャロライン視点だとかなりの変わり者だった気がする。

 攻略ルート入らなければ温和な先生っぽいが。


「まず最初に、それぞれ契約獣と契約し、従者を作り、身の回りの出来ない箇所を補って貰うところですが、ええと、リーチェ君。君は人間の側仕えもいるし、見学ということで宜しいかな」


 戸惑った後に、人間の側仕えを許している辺りで、アアこの先生は校長先生より内部事情を聞いたのかと察し、返事をした。


「はい、構いませんが、今後イミテの同行を許してくださいますか?」

「大丈夫ですよ、ただ何でもかんでも侍女を頼らないように。さて、皆さん、教室の外へ行きましょうか。獣たちが待ってますよ!」


 にっこりとアレクサンドル先生は笑い、皆は教室の外へ出た。

 俺は教室の中でまだ何かを考えているらしきシルビア姫を置いていけず、一緒に行こうかと誘おうとした刹那、イミテに腕を引かれ、先へ外へ出てしまった。


 シルビア姫の眼差しが、ほんの少し、忘れられない。



 何処か、切ない色をしていたから。





「どうした、イミテ」

「あの者は良くない匂いがする」

「どうして?」

「清廉な魔力と同じ匂いがする。同一人物という意味ではなくてな」

「――どういう意味だ?」

 メインキャラじゃないからだろうか? 悪役だからだろうか。

「それと、実際会って判った。私はキャロライン姫が好きではない。お前様や、ヴァスティのように守ろうとは思えない。だから、今後はもしあの者を守るとしたら、お前様の命令がない限りは自らの意志から守らぬぞ」

「どうして突然そんな言葉を言い出すんだ!?」

「出来るなら」

 ぐっと唇を噛みしめ、イミテは悔しげだった。

 イミテは悔しげに唇を噛みしめ、俺の腕を痛いくらいに引っ張り、何者かを睨んでいる。目に見えない何かを。


「出来るならお前様の意思を守りたい、相談も聞き続ける。……だから、できる限りはする。しかして好かん事実は話しておいたほうがいいと、思った次第だ」

「好かないのはどうしてだ、あんなに真っ直ぐな子なのに」

「そうか、お前様には真っ直ぐに見えるか……私には、歪に見えるのよ、リーチェ」


 グラウンドにつくなり、イミテは俺からすっと離れ、侍女らしい振る舞いをし始める。

 温度差に戸惑いながら、皆の邪魔にならない位置で授業を見学しておく。


 あらゆるファンタジー映画に出てきそうな生き物たちが、見て見よこれぞ神秘であると言わんばかりに連なって礼儀正しく一列に座している。

 生徒達は先生の合図を待ち、アレクサンドル先生が皆が揃ったことを確認するなり、最初に並んでいるペガサスへ手を伸ばしたてがみを撫でる。


「初めに。契約獣はただの侍者ではない、きちんと、相手が自分無しでは生きられない生物であることを覚悟するように。生死の末に世話が出来なくなるのは仕方ないけれども、それでも最期まで世話をし続けることを忘れてはいけませんよ」

 それは暗に俺にも言えるよ、と言わんばかりにちらりとアレクサンドル先生は俺へ視線を一回だけ投げかけてきた。



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