第0話 オイスター事変
先日泊まっていった妹の荷物から、ゲームを発掘した。
『ピュアクリスタルを守り、世界征服から守ろう! RPG学園ラブロマンス!
――〝運命の聖女~クリスタルの涙~〟』
要素てんこ盛りだな!
一見キラキラした男ばかりが写っているパッケージからして、所謂乙女ゲーかな、などと思いながら、興味半分がてらやってから飯を作る。
今日の晩酌は酢味噌で和えた生牡蠣だ。生牡蠣が俺は大好きだった。
生牡蠣を飲むように食べていたら、次の日腹を壊し、魘される。
『お兄ちゃん、そっちに私のゲームあるでしょ? 持ってきて!』
「待って、お兄ちゃんまだヴァスティ編クリアしてねーんだよ……」
『何勝手にやってるの! あれ予言者システム使わないと無理だよー? 正規ルート入ってからでないと、ヴァスティルートだとヴァスティは初見必ず死ぬし』
「え、そうなのか」
『あれね、一回はヴァスティ死なないと、ヴァスティルートクリアできないの。予言の愚かさを知るのよ。ヒロインが今まで信じて頼ってきた予言を、ヴァスティに関してだけ翻してヴァスティを予言者から解放した結果がヴァスティルートのエンディングよ、スチル最高なんだから!』
予言者システムってあれか、ヴァステルデという一見キラキラした世界トップクラスの予言者がいるんだが、そいつの言う通りに百パーセント行動しなければ、攻略対象達が勝手に火花散らして蚊帳の外になり、クリアできないパートがある。しかもRPG要素のある世界でさ、世界が救われるか否かもかかってる。キャラを攻略出来るか次第で。
それがくそつまらないと思ってヴァステルデの言う通り全て反対に行動していった結果、ヴァステルデは病で死ぬしヒロインが国外追放フラグまでいってゲームをそっと閉じたんだった。
「兎に角お兄ちゃん、今お腹が大活躍中だから」
『友達に貸す約束しちゃってるの! おねがーい、もってきてー! 今度牡蠣フライ奢るから!』
「オイスター大惨事のお兄ちゃんにそれ言う!? しゃあねぇなあ」
お兄ちゃんは妹思いだからね、腹が大惨事でもゲームを持って行き、そして呆気なく事故に遭い、意識を失う。
意識を失う寸前に思ったのは、「食べ物全部、毒素関係なく食いてぇよう……」だった。