あらすじ(801 ガルマニア帝国の興亡(43) ~ 850 ガルマニア帝国の興亡(92))
皇帝ゲーリッヒは、軍を出す真の目的はマインドルフ軍を討つことにあると、ツァラト将軍に打ち明けた。
ヌルチェンからの報告でマインドルフに謀叛の兆しがあることを知り、帝都ゲオグストにいた四将軍にはマインドルフと決別することを約束させ、更にゴンザレス将軍とザネンコフ将軍にも調略の手を伸ばしているという。
対するコパ軍の方でも、ゴンザレスを味方に引き入れようと動き始めていた。
難民を受け入れて水と食糧が枯渇した自由都市リベラには、その難民の原因となったギルマンから蛮族を統括するローラが支援に訪れ、急場を凌ぐことができた。
一方、放漫な策戦で食糧が尽きたコパ軍は、無謀な城攻めを始めていた。
その最中、魔女ドーラが記憶を取り戻す。
かつて旅商人から身を興したマインドルフは、取引先の小国を乗っ取り僭主となった。
ところが、先帝ゲールのガルマニア帝国に屈し、方面将軍となった。
その間、謀叛の誘惑に駆られることもあったが、今日まで自分を抑えていた。
それが今回はなかなか抑え切れずにいるうちに、自分に向けて追討軍が出発したことをまだ知らなかった。
眠ったようであったコパ軍五万は、突如ヒューイの城を猛攻した。
腹背に敵を迎えぬため、兵士たちに財宝の略奪を認めたのである。
城はすぐに落ちたが、援軍はおろか敵も攻めて来ないためチャドスは訝り、斥候に飛んだドーラの報告を待つ。
ドーラは、ヒューイ軍三万が先にゴンザレス将軍の砦を攻めようとしていると知り、もう一方のマインドルフ軍三万の様子を見ようと飛び去った。
その直後、ヒューイ軍上空にヌルチェンが現れ、ヒューイ将軍を殺した上で、兵士たちに皇帝ゲーリッヒの真の狙いを説明する。
ここから反転し、ツァラト将軍の指揮下でマインドルフ軍を攻めよというヌルチェンの話に、兵士たちは狂喜した。
三万の軍勢の説得が済むと、ヌルチェンはゴンザレスの砦へ飛んだ。
ちょうど援軍の催促に来ていたチャドスを、ヌルチェンは『幽の玉』で強制転送した。
そのようなこととは知らぬドーラは、コパにマインドルフが謀叛を起こしそうだが、それはゲーリッヒの罠だろうと報告した。
大きな音に驚いたドーラとチャロア団長が外に出てみると、首が前後逆になった宰相チャドスの死体が落ちていた。
すぐにヌルチェンの仕業と見抜いたドーラは、体格が似ているチャロアに、チャドスの影武者になるよう命じる。
一方、遂に全軍を停止させたマインドルフ将軍は、部下たちに反転してゲオグストを攻めるつもりであることを明かした。
自軍を鼓舞することに成功したマインドルフであったが、ツァラト将軍率いる六万の軍勢に待ち伏せされていたことを知り、愕然とした。
が、敢えて戦わず、再び反転してコパ軍の方へ向かって行った。
頑なに皇帝ゲーリッヒの援軍要請を断っていたザネンコフ将軍も、ヌルチェンに諭されて渋々出陣を決めた。
その頃、マインドルフ軍の接近に気づいたコパ軍では、その対応で揉めていたが、直接マインドルフから皇帝軍に追討されているから援けて欲しいとの伝令が来たため、コパ本人が承諾してしまう。
マインドルフからの同盟申し入れを即断即決してしまったコパを、ドーラは厳しく非難した。
しかし、コパが逆ギレしたため、ドーラは捨て科白を吐いて飛び去った。
一方、同盟成功の報告を受けたマインドルフは、コパ軍が籠る城を迂回し、かれらを盾にして国外へ逃げるつもりだと腹心に告げた。
そのマインドルフを追うツァラト将軍に、ヌルチェンはコパ軍も潰すようにとの皇帝ゲーリッヒの命令を伝える。
財宝の略奪を認めたことが徒となり、コパ軍から次々に兵が脱走した。
しかも、頼みのマインドルフ軍が来る気配もなく、ツァラト軍六万の接近が先に知らされる。
コパは全軍で迎撃させるようチャロアに命じたが、二人とも裏切った兵に殺されてしまう。
一方、コパ軍を迂回して逃げるマインドルフ軍は、ゴンザレス軍と遭遇する。
マインドルフが旅商人であった頃、当時は山賊であったゴンザレスに何度も襲われたため、自分が領主となった際に報復し、その弟ダニエルを殺したという。
その復讐の念に燃えるゴンザレスは、半分の兵力しかないにも拘わらず、無謀な攻撃をしようとしていた。
その頃、コパとチャドス(実際にはチャロア)の首を差し出して降伏を申し出て来た者たちに、正義感の強いツァラトは激昂し、処罰を命じた。
マインドルフは自軍を二手に分け、部下に一万でゴンザレスの砦を奪いに行くよう命じ、自身は残る二万を率いてゴンザレス軍一万五千と激突した。
逃走を足止めするつもりで待ち伏せしていたゴンザレス軍は、一方的に攻められ、苦戦していた。
マインドルフ軍とゴンザレス軍の激突を、上空から魔女ドーラが見物していた。
どちらか有利な方へ付こうと見ているうちに、当初優勢であったマインドルフ軍が、長距離を疾走した疲れから、次第に押され気味になって来た。
ところが、マインドルフが上空のドーラの姿を見つけ、取引を持ち掛ける。
承諾したドーラは、兄ドーンに交替し、ゴンザレスを討ち取ってしまう。
ゴンザレスの死により、元々山賊上がりが多く、ゴンザレス個人に従っていた兵士たちが次々に戦線を離脱し、軍勢は潰走した。
しかし、マインドルフは勝利に酔う余裕もなく、別動隊が奪ったゴンザレスの砦に、ドーラと共に立て籠もった。
ツァラト将軍率いる追討軍が到着した時には、既に戦いは終わっており、マインドルフ軍三万のいる砦を、十万を超える軍で包囲することになった。
ゴンザレスの砦を占拠したマインドルフ将軍は、魔女ドーラと共に入城する。
そこへ、コパ軍の崩壊で行き場を失くした東方魔道師たちが仕官を求めてやって来たため、ドーラの配下とした。
一方、その東方魔道師たちの長であったチャロア団長は、コパ将軍と共に首だけが皇帝ゲーリッヒの前で実検されていた。
影武者と気づかず、宰相チャドスの首として提出したツァラト将軍に対し、ゲーリッヒは蟄居させるよう命じる。
十万を超える大軍でマインドルフ軍が立て籠もる砦を包囲したツァラト将軍に、三万のみを率いて帰還するよう皇帝ゲーリッヒの命令が下る。
戦線を離脱しようとするジョレとポーマを宥め、ツァラトは後事をザネンコフに託した。
一方、帝都ゲオグスト周辺に残っている残る二将軍、リンドルとハリスは機会を窺っていた。
ガイの里では、ハンゼ少年がプシュケー教団のヨルムを懐かしみ、自分の父親になって欲しかったと祖父に告げた。
更にハンゼが自分の本当の父のことを尋ねると、祖父は躊躇いながらもまだ生きていると教えた。
ガイ族の宿敵であるガーコ族の長、ハリスだという。
今はガルマニア帝国の方面軍将軍となっているそのハリスの許へ、マインドルフの使者として魔女ドーラが訪れ、同盟を呼び掛けた。
ツァラト軍三万が抜け、士気低下する包囲軍。
旧コパ軍の投降兵の脱走も相次ぐ中、ドーラに暗示を掛けられたジョレとポーマは、ザネンコフ暗殺を企む。
一方、帰還したツァラト将軍は、皇帝ゲーリッヒの叱責を受けていた。
遂にザネンコフを討ち果たそうとしたジョレとポーマであったが、逆に木剣で打ち据えられた。
しかし、尊敬するツァラトが蟄居させられたことで、皇帝ゲーリッヒを見限ったザネンコフは、勝手に陣を引き払って帰国してしまう。
それを知ったマインドルフはジョレとポーマを懐柔し、愈々皇帝への道を歩み始めた。
マインドルフとの和議にすぐに応じたジョレとポーマであったが、抱えている軍勢のうち、リンドルとハリスから供出された兵たちをどうすべきか悩んでいた。
強硬策を主張するポーマに対し、マインドルフは水と食料を援助して帰すように命じ、リンドルとハリスの懐柔を画策する。
一方、自由都市リベラの危機的状況が落ち着き、ゾイアは、剣豪将軍と呼ばれるザネンコフに会いに行くことにした。
ゾイアはザネンコフに会いたい理由をゲルヌたちに説明した。
亡きゲール帝の双剣術を最も良く知る人物として予てより会いたいと思っていたが、現在、皇帝派からも反皇帝派からも孤立しているため、できれば援けたいというのである。
一方、そのザネンコフを討伐するため、皇帝ゲーリッヒは遂にマオール帝国からの援軍を承諾してしまう。
ザネンコフに会いに行くというゾイアに、ゲルヌ皇子の擬体であるゲルニアが同行を申し出た。
ゲルヌに似すぎていることを危ぶむゾイアに、ゲルニアは白頭巾を被ってガーコ族に成りすますという。
そのガーコ族の一人、ハリス将軍の許を魔女ドーラが訪れ、マインドルフ将軍の麾下に付くよう説得したが、ハリスはマオール帝国から大規模な援軍が来る可能性を示唆した。
二十万もの援軍を貰えばガルマニア帝国そのものを差し出さねばならなくなるというドーラに、ハリスは、ヌルギス皇帝の目的はドーラと同体の兄アルゴドラスへの復讐だろうと告げる。
同じ頃、そのハリスの息子であるハンゼは父を捜す旅に出た。
一方、ゲルヌ皇子の許へは、プシュケー教団の女騎士ファーンが家臣にして欲しいと言って来た。
第三の目による精神交流によって、ゲルヌ皇子はゲルニアと情報を交換し、ファーンの正体がタンファンであることを確認した。
しかし、サンサルスを信じ、家臣として受け入れることにした。
ゲルニアから話を聞いたゾイアも心配ないだろうと推察し、ザネンコフ将軍の領地へ向かう。
そのザネンコフは、皇帝ゲーリッヒがマオール帝国の援軍を受け入れたらしいと知って嘆いていた。
ガルム大森林を南北に貫く『森の街道』を、龍馬に乗った皇帝ゲーリッヒと、それに並行して飛行するヌルチェン皇子が、南端の岬へ急行していた。
マオール帝国からの援軍二万を迎えるためであった。
一方、圧倒的に兵数が不足しているザネンコフ将軍の許へ、謎の傭兵がやって来た。
傭兵志願者が双剣術を使うと聞き、ザネンコフは自ら試合することにした。
旅商人のガイアックと名乗る人物は、二本の長剣を自在に振るい、剣豪将軍と呼ばれるザネンコフを打ち負かしてしまう。
騒然とする中、ガイアックは実はゾイアだと正体を明かす。
相手がゾイアだとわかると、ザネンコフはその連れと共に自分の私室に招いた。
ここへ来た理由を尋ねられたゾイアは、連れに頭巾を取るように告げた。
その顔を見て驚くザネンコフに、ゲルニアは額の第三の赤い目を通じてゲルヌ皇子に交代し、理由を説明した。
五日は掛かるだろうと見込まれていたマオールからの援軍が三日で到着し、皇帝ゲーリッヒは喜ぶ。
その皇帝の動きを訝るマインドルフ将軍は、ザネンコフ将軍を援けるべきか迷っていた。
魔女ドーラと密談しながら、いっそ皇帝側に付くという手もあると悪巧みを巡らせた。
その一方で、マインドルフはかつての部下のハリス将軍の配下から、マオール帝国と魔女ドーラの因縁を聞き出していた。
帝都ゲオグスト郊外の別荘でリンドル将軍とハリス将軍が密談してると、ハリスの部下がやって来て、城に息子のハンゼが来ており、父に会うまで帰らないと駄々を捏ねているという。
ハリスはその部下に、今は大人しく待っていて欲しいと伝えるよう頼んだ。
ところが、ハリスの伝言を告げられた後、ハンゼは城から追い出されてしまった。
そこへ、盗み聞きしていたヌルチェンが姿を現した。
地形が複雑な中原東北部でも特に交通が不便なザネンコフの領地へ入るため、マオール軍二万は細かく軍勢を分け、少数で山間地の隘路を進軍していた。
そこを謎の襲撃者一人に狙われ、多数の怪我人を出してしまう。
その正体について、ヌルチェンはアルゴドラスではないかと推測した。
マオール軍を襲撃している謎の男は無論ゾイアであった。
バロードに迷惑が掛からぬよう、素性を隠したまま、木剣だけで攻撃していたのである。
その間に、ゲルヌはゲルニアの身体を経由して、ガルマニア帝国軍の説得を行った。
ギルマンから帰国しないゾイアを心配する統領クジュケの許に、ゲルヌ皇子からの手紙が届く。
ゾイアは、ガルマニアの内戦そのものにではなく、マオール帝国が中原に干渉することを防ぐため、個人として参戦するという。
その頃、ゲルヌの意を受けたゲルニアが、ツァラトの屋敷に侵入しようとしていた。
単身ツァラトの屋敷に忍び込んだゲルニアは、痺れ薬を塗った刀子で刺されてしまう。
それは、ツァラトの屋敷を見張るようヌルチェンに命じられたハンゼ少年であった。
ツァラトからの説得も聞き入れないハンゼを、ゲルニアの身体を通してゲルヌが、ハンゼの頭部に魔種が埋め込まれていることを暴露した。
ゲルヌはゲルニアを経由してツァラトとハンゼの説得を試みた。
皇帝家への忠誠心から返事を渋るツァラトに、外国勢力に頼ることの危険を力説していたゲルヌは、力尽きて気絶してしまう。
しかし、ツァラトは心動かされ、マオール軍と戦う決意を固める。
一方、単身ザネンコフ領に入ったハリス将軍は、ヌルチェンと出くわした。
ヌルチェンからハンゼの魔種を抜いて欲しければ協力せよと迫られ、ハリスは承諾する。
その用件とは、ここ何日かの魔女ドーラの動静を調べて欲しい、というものであった。
同じ頃、ギルマンで気絶から目醒めたゲルヌは、ファーンの異変に気づいた。
タンファンとしての記憶が甦ったらしいファーンに、ゲルヌは努めて穏やかに話して殺気を逸らし、サンサルスの名を告げて元のファーンに戻すことに成功した。
その頃、マインドルフの城を訪れたハリスは、ヌルチェンの依頼より一歩踏み込んで、魔女ドーラに謎の襲撃者かどうか直接問い質した。
ハリスから名指しされたドーラは、逆に謎の襲撃者の正体はゾイアに違いないと断言し、ポーマ将軍やジョレ将軍にも噂を広めるよう唆した。
そのハリスを脅していたヌルチェンは、自分の留守中にツァラトが逃げたことを知り、敢えて皇帝ゲーリッヒに叱責されつつつも、悪巧みを巡らす。
マオール軍の後詰を命じられながら、ゲルヌの説得で行軍を中断していたガルマニア帝国軍一万は、懐かしいツァラト将軍の声で目醒めた。
ツァラトに鼓舞され、兵士たちはマオール軍と戦うべく、進軍を開始した。
そのマオール軍を迎え撃つ側のザネンコフ将軍の砦にハリスがやって来て、ゾイアに息子ハンゼの救出を依頼した。
ハリスにハンゼの救出を約束したゾイアは、謎の襲撃者の役目を終え、ツァラト将軍とマオール軍の行方を追った。
マオロン軍の近くでゲルニアを見つけ、ハンゼの無事も確認できたが、そこにヌルチェンが待ち伏せしていた。
ヌルチェンの攻撃を軽く躱したゾイアは、いきり立つヌルチェンにツァラト将軍が一万のガルマニア帝国軍を率いて迫っていることを警告した。
捨て科白を残してその場を去ったヌルチェンは、マオール軍を立て直そうとするが、頑固なタンドール将軍に一蹴されてしまう。
砦から出て来たザネンコフ軍は、全員が木剣を手にしていた。
謎の襲撃者の噂を聞いているマオール軍は、それだけで恐慌状態となり、南へ向かって敗走し始めた。
その南に領地を持つポーマ将軍のところへドーラが現れ、マオール軍を迎え撃つよう進言した。
その頃、ザネンコフの砦に入ったツァラトは、ハリスと帝国の将来を話し合うことになった。
ハリス、ツァラト、ザネンコフの三人は、ゲーリッヒに失望しながらも、敢えて謀叛は起こさず、本人の反省を促そうということで一致した。
一方、南下するマオール軍を夜営させたタンドール将軍は、皇帝ヌルギスから中原の征服地は自分のものにして良いとの許可を得ていると鼓舞した。
夜営しているタンドール将軍の天幕を訪れたヌルチェンは、征服した土地の所有を許すなどとは父の皇帝から聞いていないとタンドールを詰った。
しかし、事実は逆で、自分だけが知らされていなかったとわかり、ヌルチェンは配下の親衛魔道師隊共々引き上げて行った。
翌日、ポーマ将軍は一万五千の軍勢ながら、自信満々でマオール軍二万を待ち構えていた。
最初からマオール軍を舐めてかかっていたポーマ将軍は、見たこともない戦法に戸惑ううちに、討ち取られてしまう。
敗走するポーマ軍を援けるべきジョレ将軍は逃げてしまい、壊滅的な状態になったところへ、ドーラから交代したアルゴドラス率いる一万五千の援軍が到着した。
タンドール将軍は、絶好の機会と勇躍し、アルゴドラスに一騎討ちを申し込んだ。
受けて立ったアルゴドラスは、武器の不利をものともせず、タンドールを馬ごと一刀両断してしまった。
これを機に、マオール軍は投降した。
思わぬ敗戦の報告を受けたゲーリッヒは激昂したが、実の祖父であるガルム族の族長ギランは、叛乱の可能性があると告げ、森へ逃げることを勧めた。
ギランの進言に怒り、その首を刎ねようとしたゲーリッヒはギリギリのところで踏み止まり、身重の妻と共に逃げることを承諾した。
迫って来るリンドル軍一万五千に対し、直属軍二万は抵抗せず、帝都ゲオグストは再び無血開城された。
帝国を簒奪したリンドルは、当面元首として統治すると宣言した。
それを伝え聞いたザネンコフは不快感を露わにしたが、ツァラトに宥められる。
寧ろ、一番衝撃を受けたのはマインドルフであり、新帝国の建設を進めつつ、反撃の準備をジョレに命じた。
ガルマニア帝国の政変は、当然バロードにも伝わって来た。
ウルスラ女王は、今後の情勢分析を秘書官のラミアンから聞いた。
リンドルとハリスの勢力が四万、ザネンコフとツァラトの勢力が三万五千、それに対し、アーズラム帝国皇帝を僭称しているマインドルフの勢力が十万であり、三つ巴の争いとなるだろうという。
そこへゾイア来て、沿海諸国へ行くと告げた。
ラミアンはすぐにゾイアの意図を察した。
今後マオール帝国からの干渉を避けるためには、東廻り航路の制海権を握る必要があるからだという。
ウルスラはラミアンの分析力を褒めながらも、祖母ドーラの動向に不安を感じていた。
そのドーラは、マオロン軍の捕虜から、ヌルギス皇帝の真の狙いが聖剣であることを聞き出していた。