あらすじ(101 探索行(4) ~ 150 前哨戦(6))
蛮族の秘密を探るため北方へ侵入した、アーロン辺境伯、ゾイア、マーサ姫、ペテオ、そしてロックの五人。
瘴気が強いため、日中でも動き回る腐死者を倒しながら、一行は結晶の森に到達した。
その美しい結晶が実は猛毒であることを、ゾイアは見抜く。
その時、一行は二十名ほどの蛮族と出くわすが、それは食人の風習があるマゴラ族であった。
マゴラ族が他部族を襲い、女を一人攫って行こうとしていることに気づいた一行は、女を助けるために戦いを挑んだ。
途中、一人だけはぐれたロックは、憑依している赤目族に、逆に助けられる。
マゴラ族を斃したゾイアたちは、すぐにンザビ化する相手に困っていたが、助けた蛮族の女から石油を使うよう勧められ、ンザビを焼却した。
そのレナという女は、蛮族の中で唯一交易を営むシトラ族で、中原の言葉も多少わかるため、案内役として一行に加わることになった。
レナの案内で更に北に進んだ一行は、スカンポ河の上流の渓谷に架かる鉄橋を発見する。
レナの説明では、凡そ百年ほど前から年に一度現れる中原の男カーンが、鉄の巨人に造らせたものだという。
そこへ、マゴラ族二百名が先日の復讐にやって来た。
一行は橋を渡って逃げることにし、渡った後、石油を撒いて火を点けた。
渡った先の岩山には、隧道が掘られており、一行は中を進む。
途中、別行動をとった憑依状態のロックは、鉄の巨人、機械魔神を発見した。
一行は、その後は順調に進み、リード湊近くに出ることができた。
その頃バロードでは、ニノフの許にいたタロスが記憶を取り戻す。
しかし、逆にティルスとして過ごした期間の記憶を失い、親友のベゼルを見てもわからなくなっていた。
それどころか、ニノフでさえ、裏切り者カルボン卿の手下と詰る。
タロスを説得するため、ニノフはニーナの姿を見せる。
それを、密かに目撃した魔道師カノンは、軍師ブロシウスに連絡した。
記憶を取り戻したタロスは、ウルスを捜す旅に出る。
そのウルスは、両性具有の秘密を知ったブロシウスから、密約を持ち掛けられた。
ブロシウスは、カルス王の出生に纏わる疑惑を説明し、かれに『アルゴドラスの聖剣』が渡されなかった理由を教える。
そこで、皇帝を裏切ってでも中原を統一するために、聖剣が使えるウルスラと手を結びたいと言う。
しかし、ウルスラは、そういう話はウルスにしてくれと、はぐらかした。
ウルスの情報を得るため、商人の都サイカを訪れたタロスは、小人族の情報屋ギータから、ウルスが自らガルマニア帝国の人質になったと聞く。
更に、ウルスがガルマニア帝国の後ろ盾で即位するらしいとの噂が中原を駆け巡る。
バロードでは、聖剣を所有しているカルボンに対し、ケロニウスがニノフに渡すよう説得するが、ニノフ本人が断る。
その代わりニノフは、蛮族の帝王カーンこそ、死んだと思われていた父カルス王であろうと、カルボンに告げる。
そのカーンは、遂に野盗『暁の軍団』の砦を乗っ取り、団長のバポロを屈服させた。
タロスはギータと共に変装し、ウルスが即位をするという、かつての魔道師の都エイサに潜入した。
一方、エイサに到着する直前で体調を崩したウルスの部屋では、突然時間が止まり、旅の途中で出会った書店の老主人が訪れた。
時の狭間に潜っているのだと説明する老人は、自ら失われた種族長命族のサンジェルマヌスだと名乗り、アルゴドラス聖王の友人だという。
また、アルゴドラスは両性族であり、子孫であるウルス・ウルスラもそうなのだと教えた。
しかし、因果律を乱さないため、時の狭間での出来事は忘れてしまうから、必要な記憶だけ残すと告げて去って行く。
体調が回復したウルスはエイサに入り、カルス王の前の時代まで聖王家の子孫が住んでいた荘園バローニャで、戴冠式に臨むことになった。
諸外国の来賓を前にした挨拶で、ウルスはウルスラと交代し、女王になることを宣言する。
しかし、魔女として糾弾され、会場は大混乱となり、ウルスラを護ろうとしたツイムが、衛兵に斬られてしまう。
絶望的な状況の中、ウルスラはサンジェルマヌスの名前を思い出す。
時の狭間に現れたサンジェルマヌスは、ツイムを助けるため、ウルスラに前日に時渡りするよう指示した。
タロスとギータが泊まっている前日の宿屋に出現したウルスラとツイムは、時の狭間での記憶は失っていたものの、適切な状況判断でエイサを脱出する。
しかし、大怪我をしたツイムを連れて遠くへ逃げることは困難であるため、ガルマニア帝国ともバロード共和国とも対抗し得る第三勢力であるプシュケー教団に保護を求めることにした。
ウルスラたちが去った戴冠式会場に、突如ゲール皇帝がやって来て、エイサを新帝都ゲルポリスにすると宣言すると共に、ブロシウスに三万の軍を率いてバロードを攻め滅ぼせと命じた。
そのバロードには、蛮族と『暁の軍団』の連合軍一万二千が迫っていた。
全体の総大将は蛮族の帝王カーンことカルス王であったが、そこに同じアンドロギノス族の母親が現れ、男性形となって一軍を率いるという。
迎え撃つバロードには、蛮族たちが攻めて来る西側国境に兵力を集中するべきというニノフと、首都防衛が第一であると主張するクマール将軍との対立があった。
クマールの意見を採用したカルボン卿に、ニノフは、それなら『アルゴドラスの聖剣』を貸して欲しいと願う。
が、拒絶され、ニノフは僅か五千の機動軍のみで西側国境に向かった。
ニノフは、『荒野の兄弟』のルキッフや、蛮族軍を追って渡河して来た北方警備軍に援軍を要請する。
ルキッフは独自に敵を攪乱するといい、ゾイアは先に『暁の軍団』の砦を落とすべきだという。
ニノフ軍がたった五千しかいないと聞いたゾイアは、一計を案じ、先に自軍の半分の四千を副将ペテオに率いさせて援軍に向かわせ、自分は残りの半分で砦を落としてから合流することにした。
先行するペテオは、ロックが何かに取り憑かれているのではないかとの不安をゾイアに告げてから出発した。
ゾイアもそのことが気懸りではあったが、砦の攻略に集中する。
綱を繋いだ巨大な弩を撃ち込み、そのロープの上を走って砦の中に侵入したゾイアは、獣人化を制御しながら、蛮族の留守部隊を斃していく。
が、あまりに多勢に無勢で、次第に窮地に陥ったが、砦を護るはずのバポロが門を開いて逃げたため、一気に形勢逆転した。
砦に半分の二千を残して抑えとし、ゾイアは二千を連れて、主戦場であるワルテール平原へと向かう。