あらすじ(51 罠 ~ 100 探索行(3))
記憶を失い、野盗『荒野の兄弟』の闘士ティルスとなったタロス。
一方、生活の糧を稼ぐため、ロックの従兄リゲスの紹介で、野盗『暁の軍団』の覆面ウォリアとなったゾイア。
両野盗の縄張りを懸けた闘士試合で、遂に二人が闘うことになった。
両者一歩も退かぬ名勝負であったが、『暁の軍団』の首領のバポロは、試合の結果に拘わらず、ティルスの応援に来ている『荒野の兄弟』の首領ルキッフらを殺害しようと罠を仕掛けていた。
逸早く罠に気づいたルキッフは、血路を開こうと奮戦する中、聞き覚えのある野獣のような咆哮を耳にする。
それは罠に巻き込まれたゾイアであった。
獣人化したゾイアは、瞬く間に『暁の軍団』を蹴散らした。
しかし、自分が試合をした相手がタロスだとは気づかぬまま、ウルスを捜すために北長城へ向かってしまう。
スカンポ河を下り、南の大海に出たウルスは、同行するツイムが沿海諸国のカリオテの人間でありながら、北方警備軍に所属している理由を聞いた。
若い頃にグレて海賊『ラカム水軍』の一員となっていたツイムは、偶々襲った船に乗っていた同じカリオテ人の母子に同情し、助けてしまった。
掟により、生きたまま人喰いザリガニの餌にされかけたところを、助けた母子に経緯を聞いた北方警備軍のマリシ将軍に救い出されたという。
その話を聞いた夜、嵐の中を本当に海賊に襲われ、ツイムはウルスを連れて小舟で脱出した。
極限状況の中、ウルスはウルスラと交代すると、ツイムに事情を説明し、魔道を使って島に避難する。
ところが、その島は『ラカム水軍』が拠点に使っており、そこには元首領のラカム本人もいた。
ウルスラと協力してラカムを取り押さえたツイムだったが、そこへラカムの娘で現在の首領であるミラが仲間を連れて戻って来る。
追い詰められたツイムとウルスラを救ったのは、ツイムの次兄ファイムの率いる連合警備船団であった。
カリオテ海軍の『南風号』の船長でもあるファイムによって、二人は無事にカリオテへ送られることになった。
バロードでは、シャルム渓谷の戦いで名を上げたニノフのことを調べていたカルボン卿が、ニノフがカルス王の庶子であることを知って驚く。
ニノフが自分を捨てたカルス王を恨んでいるらしいと聞くと、カルボンはそれを利用しようと、ニノフに接近する。
カルボンは、ニノフを新設する機動軍の将軍にすると約束し、ニノフもそれを引き受けた。
しかし、ニノフもまたウルス同様に両性具有であり、同体の妹ニーナは、父の仇であるカルボンに取り入ろうとする兄のやり方に疑問を呈した。
北長城へ向かったゾイアとロックは、北方警備軍の新兵として採用されることになった。
ゾイアは、その実技試験で知り合ったペテオと共に、偶々襲って来た蛮族のクビラ族と戦う。
戦いながら獣人化してしまうが、そのことで却って頭角を現すことになる。
ところが、あまりにクビラ族の攻撃が手緩いと不審がるゾイアのところへ、蛮族の別動隊がスカンポ河を下っているとの急報が入った。
マリシ将軍は、蛮族にとって禁忌であったはずの行動に驚き、娘のマーサに辺境伯アーロンへの急使を命ずる。
ちょうどその頃、アーロンの許へ、バロードから外交参与で元魔道師のクジュケが訪れていた。
同盟締結の話し合いの最中、マーサがやって来て、蛮族が河を下っていることを報せる。
アーロンは直ちに警備の兵を派遣するが、クジュケは蛮族が中原側に渡る可能性を指摘した。
マーサが去った北長城では、ゾイアとロックがマリシ将軍に身分を明かしていた。
その結果、ゾイアの捜すウルスと、幼い頃にロックたち母子を助けてくれたツイムの二人が、既にここを離れ、カリオテに向かったことを知る。
ゾイアは、当分は北方警備軍に残ると宣言し、ロックも同意した。
クジュケの予想どおり、蛮族たち二千名は中原側のリード湊に上陸した。
カルボンから、僅か千騎で鎮圧するよう命じられた機動軍のニノフは、決死の覚悟で出陣する。
ところが、苦戦しているところへ、背後から『暁の軍団』千名が迫っているとの情報が入った。
引き返せば挟み撃ちになるため、ニノフは直感的な判断で、そのまま敵中を突っ切り、河に出るよう指示を出す。
すると、ちょうど北方警備軍からの援軍として箱船に乗って来たゾイアたちが到着したため、ニノフは一気に反転攻勢をかけた。
蛮族の帝王カーンの使いだという白いコウモリに変身する美女に唆され、援軍千名を率いて来た『暁の軍団』のバポロ団長。
ところが、その美女から事情が変わったので、蛮族も一緒に連れて砦に戻るように言われる。
一方、無事にカリオテに着いたウルスは、船酔いの逆の状態でファイムの屋敷で眠っていたが、悪夢に魘されて起きると、ウルスラが消えたと告げた。
そのウルスラは、記憶を失ったタロス、即ちティルスの身体で目醒めた。
一時的にティルスと心が入れ替わった状態で、蛮族の帝王カーンの姿を見、声を聞いたウルスラは衝撃を受けた。
その瞬間、自分本来の身体に戻ったウルスラは、その事実をウルスに伝えようとした。
だが、その時カリオテへガルマニア帝国の艦隊が来航し、ウルスの身柄を要求して来た。
艦隊は宰相チャドスの用意したマオールのものだが、代表として乗っているのは軍師ブロシウスであった。
その要求に悩むカリオテ大公スーラの許に、ウルス本人がやって来て、ウルスラと交代する。
驚くスーラに、ウルスラは事情を説明し、自ら進んでガルマニア帝国の人質となることを申し出た。
ガルマニア帝国の艦船にツイムと共に乗り込んだウルスは、ウルスラの計略どおりにブロシウスに接近する。
怪しみながらも、ブロシウスはウルスの母国奪還を支援する約束をし、ガルマニア帝国の帝都ゲオグストへ連れて行く。
同時に、ブロシウスはニノフのことを調べさせるため、魔道師のカノンをバロードへ派遣した。
そのニノフのところへ、『荒野の兄弟』の首領ルキッフの使いとして、ティルス、即ち記憶喪失のタロスが訪れた。
蛮族の帝王カーンからバロードへ行くように勧められたというティルスは、ニノフにカーンとは自分の父カルス王かもしれないと聞き、気絶してしまう。
ニノフたちを助けた後、スカンポ河の警戒に当たっていたゾイアは、あれ以来蛮族の動きがないことに疑問を持ち、この際北方を探索すべきと考えた。
その提案をしにマリシ将軍のところへ行くと、同じことを考えたアーロン辺境伯が来ていた。
ゾイアは、アーロンと一緒に北方探索へ行くことになり、更にマリシの娘マーサと哨戒兵のペテオ、最後にロックが加わることになった。
しかし、そのロックに赤目族が憑依していることは、まだ誰も知らない。