~第一章~ 始線
まだ推理は始まりませんので、そのつもりで読んでいってください。
「……ょうぶ?」
(あの煙は何…?)
「…いじょうぶ?」
(あれはどこ…?なんでわたしが…あんなことに…)
「大丈夫?紅目さん?」
(…!?)
そうして紅目 心音は意識を現実に戻された。
今は彼女が通っている高校で、始業式が執り行われている。
彼女は隣の席の彼女を覚醒させた女子に対して、
「ありがとう…ございます」
とだけ言った。
「いいよいいよ!それより、気分悪そうだけど大丈夫?顔色が真っ青だよ」
紅目 心音は驚いていた。
(この人…誰なんだろう…)
彼女の記憶の中にはこの親切な女子が自分の知り合いだという記憶がない。彼女は人に対して驚くほど関心がない。未だに同学年の同性の名前さえ、意識して憶えているのは片手で数えられる程度である。
その親切な女子は先ほどの声掛けに紅目が答える前にさらに続けて話しかけてきた。
「私は不知火 未唯っていいます!よろしくね、紅目さん」
始業式の最中なので大きな声は出せないはずだが、その親切な…不知火の声はとてもはっきりと聞こえた。
紅目はその自己紹介に対して、ただ軽い会釈をするだけで済ませた。
(不知火って名前の人がいたの…知らなかった)
彼女の新しい年の始まりは、この女子との出会いから始まった。
………
「紅目さん、これから一年間よろしくね!」
今は始業式後のHRの時間。隣からかけられた声は、とても聞き馴染みのある声であった。
(なんか…こうなる気がしてたけど…)
「えぇ、よろしくね。不知火さん」
彼女は先ほどと同様に、ただ軽い対応をするだけで済ませた。済ませようとした。
「うん!私、去年から紅目さんに興味があって、だからこうしてお話しできてるのがすごくうれしい!」
「そ…そうなんだ」
この私にすごい興味を示してくるこの女子、不知火さんとの出会いから私のこの一年が始まった。
とても濃い…高校二年生の一年が…
あと数話で本格的に推理(謎解き)が始まっていくと思います。たぶんですが。