桃太郎~老夫婦本気モード~
この作品はフィクションで、実在の神仏・団体・ゲーム等とは関係ありません。
最近の桃太郎は動物を食い物で釣らないし刀を使わないと聞いて。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へシヴァ狩りに、おばあさんは川へ選択に行きました。
おばあさんは川べりで洗濯物の入ったタライを置くと
「さぁて、それじゃあ始めるとするかね」
と言って洗濯物を取り出します。
「くんくん…これはまだ洗わなくて大丈夫。
こっちは……っく、去年逝った隣の菊婆が川向こうで手ぇ振っとった。
あれが三途の川か。これは洗わにゃならんのう。」
こうしておばあさんは持ってきた洗濯物を洗うか洗わないか選択していきます。
全部洗え。
そうしておばあさんが選択して洗濯していると、川上から大きな桃が1つ流れてきました。
「おやおや、これは見事な桃だこと。持って帰るとするかね」
おばあさんはそう言いながら、川の中へと入っていきます。
結構な流れの速さですが、おばあさんは物ともしません。
昔の年寄り、足腰強いな!
そうして大きな桃を両手で抱え込んだおばあさん、
「年寄りなめんなぁ!」
この年まで鍛えに鍛えた功夫による軽気功を応用して、桃を潰すことなく持ち上げました。
昔の年寄り、パネェな!
拾い上げた桃と洗濯物を一緒にタライに入れ、抱えておうちへ帰りました。
匂いをかいだだけで臨死体験ものの洗濯物と一緒に入れた桃を食べるとか、衛生面が心配です。
夕方になってやっと、おじいさんは山ほどシヴァ素材を背負って帰ってきました。
「ばあさんや、今帰ったよ」
「おやおじいさん、お帰りなさい。待ってましたよ。ごらんなさいこの桃を」
「ほほう、これはこれは見事な桃だ」
「包丁じゃ刃の長さが足りなくてね。おじいさんに斬ってもらおうと思って待ってたんですよ」
「よし、任せなさい」
そう言ったおじいさんはシヴァ狩りに使っていた剣を抜き、
「ちぇすとーーーーーーー!」
桃を両断しました。
桃太郎やべぇ。超やべぇ。
桃は自重によって切断面から左右に分かれます。
「あ、しまった」
「どうしたんですか?おじいさん」
「種は軽くヒビを入れる程度のつもりだったんじゃが…。
桃が左右に分かれた時に種が割れちまった」
「あらあら」
桃の種は厚く硬い核が芽の伸び出しを邪魔するので、ヒビを入れておくと発芽しやすいのです。
桃の木を育てる気満々のようです。
二人がそんな話をしていると
「おぎゃあ、おぎゃあ」
と勇ましい産声を上げながら、種の中に元気な赤ん坊がいるではないですか。
よかった、中身まで両断されなくて。どんな斬り方したんだ?
こうして老夫婦のもとにやってきた赤ん坊は桃太郎と名付けられ、そのまま育てられることとなりました。
なお、桃はスタッフが美味しく頂きました。大味でした。
おじいさんとおばあさんは、それは大事に桃太郎を育てました。
桃太郎はだんだん成長するにつれて、超絶剣技のおじいさんと気功の達人のおばあさんに鍛えられ、当たり前の子どもに比べてはずっと強くなりました。
ある日、おじいさんは桃太郎に言いました。
「桃太郎や、お前さんちょっと鬼ヶ島に行って、鬼を狩ってきなさい」
「何故ですか? おじいさん」
「鬼ヶ島の鬼は、方々の国からかすめ取った宝を貯め込んでいるということじゃ。
討伐ついでにお宝を頂いてくればウハウハじゃ。
これまでの鍛錬の成果を見る試験にもなるしの」
「分かりました」
こうして桃太郎は鬼を退治しに行くこととなったのです。
自分たちは何の被害も受けてないのに。
こいつら鬼か。
鬼退治に行くにあたり、おばあさんは桃太郎のためにきびだんごを作ることにしました。
その間ヒマなおじいさんは、旅のお供を見繕ってくると行って出て行きました。
きびだんごのお弁当ができあがる頃、ちょうどおじいさんも戻ってきて
「桃太郎や、こいつらを連れて行きなさい」
そう言っておじいさんは3匹の動物を桃太郎の前に連れてきます。
「おじいさん、こいつらは何ですか?」
「この犬は『あぬびす』だそうじゃ。
ワシの心臓を天秤にかけて罪の重さを量るとかぬかすからボコボコにした。
逆に心臓をえぐり取ってやろうかと思ったら服従するというでな。
喋る犬なんぞ珍しいから連れてきた」
おじいさん、神をも恐れぬ所行です。
「こっちの猿は『せいてんたいせい』とか言っとったか?
自分が世界で一番強いとぬかすから手合わせしたらこれが弱くてな。
ボコボコにしてやった。
キントンに乗って空を飛べるとか面白いことをぬかすでな。
こいつがいれば道中退屈せんだろうと連れてきた」
キントンじゃねぇ。
そう思いながらも怖くて反論できない猿はただ下を向いてぷるぷる震えています。
「こっちはキジじゃ。きびだんごばかりじゃ飽きるじゃろうと思ってな」
食う気か。
キジがおじいさんの言葉に反応して必死の逃亡を図ります。
そして即座におじいさんに剣の腹でビンタされて落ちました。
こうしておばあさんのきび団子を受け取り、3匹のお供を連れて、桃太郎は鬼ヶ島を目指します。
桃太郎がずんずん進んでいくと、やがて広い海に出ました。
ふと疑問に思った犬がたずねます。
「桃太郎さん、桃太郎さん、この先は海です。どうやって渡るのですか?」
「普通に走って行けばいいだろ?」
「え?」
「え?」
右足が沈む前に左足をつき、左足が沈む前に右足をつけば良いと主張する桃太郎。
無理に決まっていると船の調達を主張する犬。
実践してみせる桃太郎。
無理矢理に挑戦させられて沈む犬。
この隙に逃亡しようとして桃太郎に撃墜されるキジ。
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結局、桃太郎は走って渡り、猿はキントンで飛び(キントンじゃねぇ)、犬は猿にお姫様抱っこ、キジは普通に飛ぶことになりました。
犬猿の仲ってなんだっけ?と思わされる絵ヅラです。
しばらく走って/飛んでいくと、海の果てにぼんやり見えていたものが、だんだんはっきりと島の形になって現れてきました。
やがて鬼の城が見え、門前で見張りをしている鬼の兵隊が見えてきます。
その頃になると、鬼の兵隊も桃太郎たちに気づきます。
兵隊達は慌てて叫びます。
「大変だ、大変だ、犬をお姫様抱っこした猿が空を飛んできたぞ!
人間も海を走ってくる!!」
「ふざけんな!!」
怒られました。本当なのに。
そうこうしている間に上陸した犬と猿が、あっという間に見張りたちを倒します。
おじいさんにボコられた鬱憤晴らしのために、ここぞと暴れる犬と猿。
その後、猿は門を乗り越えて内側から開けるために岩壁をするする登ります。
その間に犬は門に体当たりしてぶち破ります。
猿、せっかく登ったのに意味ねぇ。
こうして桃太郎は何をする必要もなく奥へと足を進めるのでした。
桃太郎が城内の広間に入ると、そこには猿にさんざんボコられて顔が真っ赤に腫れ上がった鬼と、もう少しで犬に頸動脈を食い破られそうな状態で組み伏せられた顔面蒼白の鬼がいました。
赤鬼と青鬼です。
3分くらい前まではノーマルカラーでした。
あと、犬もちょっと青いです。実はキントンで乗り物酔いしてました。
「降参です。降参です。命だけはお助けください」
鬼たちがそういうので、桃太郎は戦うことなく鬼たちを許しました。
そして、城内にあった荷車に鬼が貯め込んでいた宝物を山と積んで持ち帰ることにしました。
鬼たちがまた悪さをしないように、桃太郎は鬼たちに言いつけます。
「また貯め込んだ噂を聞いたら成敗に来るから、覚悟しておけよ」
また悪さをしないようにです。大事なことなので二回言いました。
帰りも桃太郎は荷車をかついで海を走り(荷車はかつぐ物じゃねぇ)、
猿はキントンで飛び(キントンじゃねぇ)、
犬は猿にお姫様抱っこ(乗り物酔い悪化で胃の中身をリバースしそう)
キジは普通に飛んで帰りました。
家ではおじいさんとおばあさんが
「もう桃太郎が帰りそうなものだが」
と言い言い、首を長くして待っていました。にょいーん。
そこへ桃太郎がさも得意げな様子で帰ってきます。
おじいさんもおばあさんも喜んで宝物に飛びつきました。
お前ら形だけでも桃太郎の帰りを喜んでやれよ。
猿はようやくお役御免と喜び跳び回り、犬は乗り物酔いでまだグッタリ、キジはこの隙にそっと去ろうとしてあっさり桃太郎により捕縛されました。
空は青々と晴れ渡り、庭には桜の花が咲き乱れていました。
あ、きび団子食ってねぇ。
おしまいおしまい。
参考:
『シヴァ』
ひんぬー教3主神の1柱。破壊と再生を司る。
ひんぬーの素晴らしさを手ずから広めるため、仮初の肉体で降臨して活動中。
最近は東の島国で活動しているが、きょぬー派に目の敵とされ、仮初の肉体を破壊されては再生し、再生しては破壊されを繰り返す日々を送っている。
まさに破壊と再生を司る神!
『アヌビス』
どこかの犬頭な神様。天秤で心臓の重さを量るのがお仕事。
有給休暇を利用した海外旅行でちょっとはっちゃけたらこのザマだよ。
『斉天大聖』
残像法師と天竺に向かった話が有名な猿。にょいーん棒と空飛ぶキントン的な何かが便利。
俺様最強!と思っていたプライドと自信はおじいさんにより粉微塵にされたが、鬼をボコったことでちょっとだけ回復した。
没ネタ1:桃太らない伝説
おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が1つ流れてきました。
「なんじゃろうね、この不自然に巨大な桃は? 怪しいから手を出さないでおこう」
こうして桃太郎は、大海原へ旅立ったのです!
一方その頃、シヴァを一方的にボコるおじいさんの噂に戦慄した鬼たちは、無条件で全面降伏することに決定。
鬼と人の関係は、血を見ることなく改善したのでした。
めでたしめでたし。
没ネタ2:シヴァ狩りPT@2
おじいさんは集会所へ寄ってから山へシヴァ狩りに行くことにしました。
~集会所~
「おーい。誰かおるかい?」
「おうお前さんかい。今日はどうした?」
「ちょいとそこの山までシヴァ狩りに行こうかと思っての。
竹取の、一寸の、ヒマならおぬしらも一緒にどうじゃ?」
「おお、行くぞ」
「ワシもじゃ」
そう言っておじいさんたちは武器(太刀、片手剣、ガンランス)を手に取ります。
ありえない武器が混じってる...。
「じゃあ行くとするかの。せーの...」
「「「ひと狩りいこうぜ!」」」