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俺の力は異世界まで届くらしい  作者: 鈴代なずな
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1-1

■1

「ワシは王だ」

 王城で、王は言った。

「王だから、突然現れた竜巻に吹き飛ばされたりするはずがない」

 ヒュゴオオオオオオ!

「ぎゃあああああああ!」

 突如発生した横向きの竜巻に、王は側面の壁にまで吹き飛ばされた。

「これは……」

 その光景を、妖精は見ていた。そして、ある直感が走る。

「これは、勇者様の予感がします!」


---


別所達真べっしょたつま。十七歳。身長は百七十一センチ」

 ある日の夜のこと。少年――達真は自室のベッドの上で、そんな声を聞いた。

「なんだ?」

 起き上がり、室内を見回す。

 部屋の入り口は、しっかりと木製の扉で閉め切られている。そこから右手側には本棚と勉強机があるが、いつも通りどちらにも漫画が並んでいるだけで、喋るものなどない。

 左手側はベッドなので、考えるまでもなかった。ベッドの下には謎の殺人鬼どころかエロ本一冊隠す隙間もない。一応タンスもあるが、人が入れるものではない。

 どうということもない部屋だ。が……

「どうということもない人間ですね。黒目黒髪、判別はできても大した特徴はない顔、と」

「誰だ!」

 部屋の奥には窓があり、道路を挟んだ向かい側にある、幼馴染の家が見えた。しかし部屋は二階なので誰かが覗いているはずもなく、道路にも人の姿はない。

 それでも声は聞こえ続けていた。気のせいなどではない。小さな女の子のような、それでいてどこか擦れた、生意気な雰囲気のある声。それが言うのだ。

「ですがまあ、そっちの方が”それっぽい”かもしれませんね。この幸運を手にするには」

「幸運?」

 首を傾げた時、ふと気付く。声は真上から聞こえていたのだ。

 達真は戦慄しながら、慌てて見上げた。そこには――

「おめでとうございます! あなたはこの度、記念すべき我がフォーラング国の五十人目の勇者様に認定されました!」

 じゃじゃーんという様子で両手を広げる、人がいた。

 いや、人ではなかった。ぱっと見は普通の女の子だが……ひどく小さかったのだ。

 手の平より少し大きい程度だろう。それが宙にぷかぷか浮いて、達真を見下ろしていた。

「え? あぁ、えぇと……?」

「つきましては下記のアドレスより登録を完了し、勇者様認定記念特別プレゼントをお受け取りください」

「お前……誰だ? っていうか、なんだ?」

「むう。おかしいですね、勇者様みたいな人間はこう言えば簡単に乗せられると聞いたんですけど」

 相手の言葉を全く無視して尋ねると、相手もこちらを全く無視して、身体よりさらに小さなメモ帳らしきものをめくり始めた。

「なんかしれっとひどいことを言われた気がするが……そんなあからさまな迷惑メールみたいなのはいいから」

 達真は呆気に取られながらも、ひとまずそれを止め、改めて問いかける。

「それよりお前はなんなんだ? 人間じゃないよな? っていうかなんで俺の個人情報を知ってるんだ? そういや勇者とか言ってたけど……いや、それは迷惑メールだから関係ないのか」

「関係大有りです!」

 問いは無視して、彼女は大声で言ってきた。

 天井付近から、すいーっとこちらの眼前にまで下りてきて、浮いたまま詰め寄ってくる。

 近くで見ればますます人間ではない。顔立ちは、整った美少女といった様子だが、黒目も白目もなく、緑色の宝石がそのまま埋め込まれたような双眸である。髪も青と白のグラデーションのような色をして、見る角度によって色が変化するようだった。

 極めつけは背中に生えた、蝶に似た二枚の羽だ。

 ありていに言えば、そう――

「妖精?」

「そうです。あなたはいわゆる異世界の勇者に選ばれたのです!」

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