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77.バルネア完成!

――二か月後

 諸君。見てくれたまえ。これがローマだ! おおローマ。ローマよ。俺は感動に打ちひしがれている。

 ついに公共入浴施設「バルネア」が完成したんだー! 名前はまんま風呂だけど……


 公共風呂「バルネア」は木製のログハウス風の建物が外観で、苦労に苦労を重ねた大理石を床に敷き詰めた浴槽に、ゴボゴボとお湯が出るライオン風の口。

 浴槽のサイズはなんと、縦十メートル。横二十メートルにもなる巨大なものだ!

 さらに、「ポンプ」「浄化」「お風呂用の加温」のオパールを惜しげもなく使用している。


 実はお湯を循環させる必要はなかったんだけど、俺の拘りで実装された。上下水道にも「ポンプ」のオパールは使うからその実験も兼ねてだけど。


 素晴らしい! 何度見ても素晴らしい!


 おお。バルネア。バルネアよ。汝はなんと美しい事か。


「ピウス様! お待たせしました!」


 待ち合わせをしていたティンがバルネアへやって来た。彼女の装いは胸に黒の絹帯を巻き付けて、腰布を巻いている。腰布の裾は短く、しゃがむと全部見えてしまいそうな長さだ。

 これはパンツが無かった為の緊急措置で、いずれ水着を開発してやろうと俺は意気込んでいる。

 一方俺はというと、麻の布を腰に巻いただけの姿でこれも水着の代用のつもりだった。


 バルネアは水着着用で入る温浴施設にしたのだ。古代ローマのサウナは裸だったが、ここでは男女共に入浴できるし、裸だと戸惑う人もいるだろうと配慮してみたんだけど、それは俺が現代人の感覚で裸だと恥ずかしいんじゃと思ったに過ぎなくて、実は裸でも問題なかった……

 歴史を顧みてみると、日本の江戸時代は男女混浴だったらしいし。男女別の習慣は西欧から入って来たんだったか。

 ま、まあ。水着着用のお陰でいずれパンツとブラジャーが発達するはずだ! 悪い話じゃない。た、たぶん。


「ティン。風呂に入ってから街の様子を見に行こうか」


「はい!」


 ティンが手を差し出して来てまた戻したので、俺は彼女の手を握りしめて浴槽へ促す。彼女は戸惑ったようだったが、俺に体を寄せて来た。最近少しティンが大胆になって来た気がするぞ。

 実はティンと一緒に風呂に入る予定はなかった。俺は一人で風呂の様子を確かめた後、ローマの様子を見学する予定だったんだ。

 俺はそろそろ街の開発が落ち着いて来たから、外へ出て行こうと考えている。その確認として今日ローマの視察を行おうと思っている。たまたま、ティンが俺の家で家事当番をやっていてくれていたから、ご一緒したってわけだよ。

 外へ出るといっても、まずはナルセスと会うことからだな。先月人間の街――フランケルという名前だったらしい――の冒険者の宿でナルセスへ伝言をお願いしたところ、多少の手数料で引き受けてくれて、彼らからの連絡ではナルセスがフランケルに来てくれるとのことだった。

 ちょうどローマの街建設も落ち着いて来たから、この機会に外へ出ようというわけなんだよ。


 俺はティンと浴槽に腰を下ろし、ふうと息を吐く。湯加減は少しぬるめだが、やはり風呂は良い。昼間から何してんだって話だが、明るいうちの風呂も好きだ。朝風呂も好きだ。

 もちろん夜入るのも好きだ。


「ピウス様、お風呂大好きなんですね!」


「風呂は良い。疲れも取れるし、毎日の心労も癒してくれる……」


「私がピウス様の癒しになれればなあ……」


「ん? 何か言ったか? ティン?」


「いえ! 何でもないです!」


 そういえば、この前ティンが卵とかうわごとで言っていたな……あれはどういう意味なんだろう。聞いたらダメだと自重していたけど、何のことなのか興味はやはりある。


「ティン。卵……」


「卵? え、えええ! ピウス様!」


 何故かティンは真っ赤になってうつむいてしまった! 卵って何? 何だよー!


「ど、どうしたんだ……ティン」


「ピ、ピウス様はその……卵が欲しいんですか?」


 卵で思い出した! ラヴェンナの街もこの後見学する予定だった。ラヴェンナも最低限の整備が終わり、いよいよ商人らに声をかける予定なんだ。外へ出るつもりだけど、ラヴェンナの様子は定期的に見に来ないとだな。

 行商が上手くいってるのかなど確認することは多々ある。外へ出る理由は大きく、ラヴェンナへ人を呼び込むことと外部にある国の状況を調査すること。


 卵と言えば、俺にとっては鶏の卵なんだよなあ。人間の街では鶏も牛も飼育されているから、ラヴェンナやローマでも飼育したいところだ。鶏は素人でも何とかなりそうだけど、牛は難しいだろうなあ。


「卵……ティンも欲しいのかな?」


「え。ピ、ピウス様となら……」


 俺と? 何か話がズレてる気がする……良くない予感がするぞ……

 何やらティンの顔が至近距離に、彼女はギュッと目をつぶり唇をんっとこちらへ向けている。


 な、何? この展開! こ、こんな誰でも来るような場所で。


 俺は思わず彼女を抱きしめてしまう。彼女の柔らかさと、暖かさに頭がクラクラしてくる。俺が抱きしめると、彼女も俺の背中に腕を回してくる。

 な、流されてこんなことをしていいのか? ちゃんと話をした方がいいんじゃないか? いや、でも。あああ! 理性が。


 ベリサリウスが誰にも手を出していない状況で、俺がはっちゃけていいのかとか頭によぎるが、俺の欲望が理性を侵食していく。


 俺はティンをさらに抱き寄せると、彼女も自ら俺に密着してくる。

 互いの唇はもう指先一本分も離れていない。


 俺は彼女にそっと唇を合わせ、離れると今度は彼女から俺に口づけをしてくる。そして再度口づけを交わす俺達……

 俺の手が彼女の背中を優しく撫でると、彼女も愛おしそうに俺の肩や首を撫でてくる。


――ガタっと誰かの足音が!


「あら、お邪魔だったかしら」


 口に手をあてニヤニヤとこちらを見ているのは、腕を胸の前で組んだエリスだった!

 よりによって一番見られたくない奴に見られるとは! 彼女もティンと同じように胸と腰に絹の布を巻き付けている。ティンと違い布の色は黒だったけど。


 俺はエリスの声と共に、ティンを抱いていた腕を離すが彼女は離すどころかさらに強く俺を抱きしめて来る。

 たぶん、恥ずかしさでこうなってるんだろうけど……


「エリスさん!」


「プロなんとかさん。お楽しみのところごめんなさいねー」


 エリスはさも楽しそうに俺へ声をかける。ちくしょう! この状況は何も言い返せない。


「ティン。すまない。こんなとこで……つい……」


「ピウス様! 私なら……いつでも!」


 だからそんな発言をエリスの前でするなー! 案の定あの悪魔はものすごーくいい笑顔をしているじゃないか!


「ふうん。ティンと新しくできたお風呂場でよろしくやっていたってわけー?」


「ち、違いますって! エリスさん!」


「どう違うっていうのー?」


 困った俺にティンが助け舟を出してくれる。ちなみにまだ俺に抱きついたままだ。


「エリスさん! 違います! 私はまだ抱きしめてもらっただけです!」


 こら! ティン! 地雷を踏み抜くな!


「へえへえ。まだね。ふうん。まだなのねー。じゃあこれからなのかしらねー。やーらしー」


「わ、私はいつでも!」


 ティン。もう頼むから。俺のライフは既に無いぞ…… 

 俺はこの場を落ち着けるのに、三十分くらいかかったとだけ言っておこう。そしてエリスへベリサリウスとのデートの約束の手配をしろと約束させられた……


※ラブコメ反対ー。許さん。

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