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ネバーランド

作者: 白い聖龍

 自分で怖いと思ったことを書きました。

 自室のパソコンで俺はとあるサイトが開くのを待っている。


 パソコン画面には”Not Found”のページが写っている。


 インターネット利用している人なら知っていると思うが、これはページが削除されていると言う意味だ。


 普通ならこんな画面が出た時は、さっさと別のページを検索エンジンで調べてこのサイトのことなど忘れてしまうだろう。


 しかし、そんなサイトを俺はすでに1時間待っている。 それには理由があった。


 実は俺が利用としているのは、世間でいう違法DLサイトだ。


 違法サイトとは音楽やゲーム、ビデオ、書籍などを抜き出したり、データ化したりして無料でダウンロードできるサイトのことだ。


 主に日本ではそう言ったサイトはすぐにネットポリスに通報され、すぐに閉鎖されてしまうが、海外では結構なサイトが活動しているのだ。


 そして中学生で欲しいものがたくさんある俺にとってはまるで夢のような話なのだ。


 「後、1時間か…」


 自室の部屋の壁に掛かっているキャラクター物の時計の針を見てそう呟いた。


 時間は現在、夜の11時だ。


 何でもこのサイトの管理者は変わり者らしく、日付が変わる夜の0時から1分間だけサイトの中に入れるトップページに入ることができるとのことだ。


 まぁここまでは学校で昼休みにパソコンに詳しい同級生から聞いた話だ。


 自分で少し調べてみると、このサイトネット上では結構有名らしくアングラな掲示板サイトでは今まで発売したゲームや漫画だけでなく映画やアニメもすべて揃っているとのことだ。


 そいつからサイトのURLを教えてもらいこうして何にもない”Not Found"の画面を見続けていたわけだ。


 サイトの名前は”ネバーランド”、管理者の洒落かなんなのかは知らないけど、童話に出てきたピーターパンが舞台にする島の名前だ。


 差し詰め俺はピーターパンが迎えに来るのを待っているウィエンディと言ったところか。


 「それにしても暇だな」


 幾らなんでもずっと”Not Found”の画面を見続けるのは正直つらい。

 

 両親はすでに寝てしまい、我慢のできない中学生の俺はブラウザーから新しいタブを開いて、アングラなチャットサイト開いて、このネバーランドについて他に情報がないかと、掲示板の一覧に目を通していく。


 「……ん?」


 数多乱立するチャットルームの中に気になる物を見つけた。


 「”ネバーランドの秘密”?」


 そのタイトルをクリックして掲示板を開ける。


 中に入るとすでに先客がいるらしく、ルームには20人ほどが入室しておりかなりの文字が書き込まれていた。


 内容を上から読んでみると、どうやら書き込んでいる連中はルームを立てたここの主にその秘密とやらを聞き出そうと必死みたいだ。


 チャットをしばらく見てみたが、主が書き込んだ形跡はない。


 そして30分が過ぎた頃には、書き込んだ連中も興味を失ったようで1人また1人とルームを退出していった。


 ネバーランドが開くまで暇していた俺であったが、気が付けばルームには主と俺だけが残っていただけだった。


 「釣りだったかな?」


 そう思ってマウスを動かしてチャットルームの退出ボタンをクリックしようとした時だ。


 『おめでとう』


 いきなり文字がチャットに書き込まれた。


 今残っているのは主と俺しかいない。


 俺が書き込んでいないとすれば残っているのは主しかいない。


 『一人だけになるのを待っていたんだ。 君は我慢強いね』


 俺は慌ててキーボードを叩いて返事を書き込む。


 『いえ、偶々暇だっただけです』


 『そう』


 『ところで”ネバーランド”の秘密ってなんなんですか?』


 『知りたい?』


 まるで子供でもからかう様な文字がチャットルームに表示される。

 

 その態度にカチンときた俺は次の様に書き込む。


 『実は釣り?』


 『怒ったなら謝るよ ちょっと待ってて今鍵かけるから』

 

 スレ主がそう書き込むと、チャットルームの画面に”鍵が掛けられました”という表示が出てくる。


 『これで良し じゃあ”ネバーランド”の秘密を教えるね』


 スレ主が言うには管理人が設定た特別なパスワードがあるとの言うことらしい。


 なんでもこのネバーランドというサイトは実はダウンロードするのに順番待ちが存在し、前の人間がダウンロードを終了しないと次の人間がダウンロードが開始されないとのことだ。


 それもネバーランドがインターネット上に存在するのは3時間だけだと言う。


 時間までにダウンロードを完了できなかった奴は強制的にサイトから叩き出され、再び”Not Found”の文字が表示されるらしい。


 けれどパスワードをネバーランドの”管理人室”と書かれたページにある入力画面に打ち込むと、時間は無制限、順番待ちもなしで好きなだけ欲しいものだけダウンロードできると言う。


 このパスワード知っている者は好きな時に”ネバーランド”にアクセスできると言うことらしい。


 まさに裏ワザだ。


 そしてスレ主はこの特別なパスワード知っていてそれを俺に教えてくれると言うことだ。


 「本当かな?」


 あまりにおいしい話に俺はどうしてそんな大事なパスワード教えてくれるのかとスレ主に質問した。


 『なんでそんなことを教えてくれるんですか?』


 『いやちょっと飽きちゃってね。 このままにして置くのも勿体ないからルームを立てて最後に残った我慢強い奴に教えてやろうと思っただけだよ。 まぁ単なるゲームってやつだよ』


 そうチャットルームに書かれて俺はちょっとホッとし、自室の壁の時計を見た。


 時計の針は夜の0時まで残り5分と迫っていた。


 『そろそろ時間だね』


 チャットルームにそう書き込まれると、続いてパスワードが書き込まれた。


 『パスワードは”Captain Hook”だよ』


 『フック船長?』


 まさかサイトの名前だけでなくてパスワードまでピーターパンを捩っているとは思わなかった。


 『それじゃ健闘を祈るよ』


 そう主が書き込むとすぐにチャットルームが閉じられ、俺は待合室に叩き出された。


 「なんでピーターパンの味方の妖精や子供たちの名前じゃなくて、敵の”フック船長”なんだ?」


 教えてもらったパスワードに変な疑問を抱いたが、”ネバーランド”が開く時間も迫っていた為、チャット見ていたタブを閉じて再び”Not Found”の表示のある画面をパソコンモニターに映し出した。


 「後、一分」


 自室の壁に掛かっている時計の秒針がコチコチと一秒一秒を刻んでいく。


 そして残り10秒となった所で俺はカウントダウンを始めた。


 「3…2…1…0!」


 カウント0共にキーボードの”F5”を押してページを更新させた。


 「…………出た!!」


 再読み込みを終わらせ画面には”Not Found”では無く、新たなサイトが表示されていた。


 表示された画面の中心には虹色のフォントで”ネバーランド”と書かれ、文字のすぐ下には入口と書かれたボタンがあった。


 俺はすぐにマウスでポインターをボタンに合わせクリックする。


 すると画面が更新されて右側にメニューと中心より上側にカウンターが設置された画面に飛ばされる。


 メニューには上から”漫画”、”ゲーム”、”動画”など書かれたボタンが配置されていた。


 カウンターを見ると、先ほどまで0と表示されてたいのが、いつの間にか500を超えてた。


 どうやらこの数字が今このサイトにアクセスしている人数らしい。


 数字が1800を超えた時、カウンターの増加がぴたりと止まった。


 俺が時計で時間を見ると現在0時1分。


 ”ネバーランド”の入口は閉じられたのだ。


 今カウンターは”1904”、この”ネバーランド”に入れた人数だ。


 「ちょっと中を回ってみるか」


 徐に右のメニューにある”漫画”と描かれたボタンを押すと、アイウエオ順に上からズラッとタイトルが並んでいた。


 「これが全部タダで読めるなんて……」


 そう思うと俺は喜びで一杯になった。


 他の連中は順番待ちがあるが、俺にはそれがない。


 先ほどチャットで主に教えてもらった夢のネバーランドへのパスワードを俺は知っているんだから。


 俺は画面をメニューのある画面に戻し、”管理室”のボタンを探す。


 マウスのホイールを回しスクロールさせるが、”管理人”と書かれたボタンは見当たらなかった。


 「何だよ。 無いじゃないか」


 やっぱり釣りだったかと思って別のボタンをクリックしようとした時だ。


 「ん?」


 メニューの一番下にボタンでは無く乳母車のアイコンが表示されてた。


 「もしかして……」


 表示された乳母車のアイコンにポインターを合わせてクリックすると、画面のロードが始まった。


 そして管理人室と書かれたページに飛ばされた。


 「ここか。 えっと入力画面は……これか?」


 パスワード入力画面は画面の中心にありすぐに見つかった。


 俺は教えてもらったパスワードを打ち込む。


 「えっと、”Cap……tai…n……Hu……ok”っと」


 ターンと薬指で音を立ててキーボードのEnterボタンを叩く。


 『パスワードが違います』


 そうモニターの画面に表示され、俺は驚いた。


 「あ、あれ?」


 そして入力したパスワードを確認すると、なんてことない打ち間違えだった。


 フック船長の”Hook”の文字を”Huok”と打ち込んでいたようだ。


 「び、びっくりさせやがる」


 文字を打ち直し、再びEnterを押す。


 画面は切り替わり”設定”と書かれた画面へと飛ばされた。


 ページには新規管理者ダウンロードはこちらと青文字で書かれている。


 「これをクリックすればいいのかな?」


 俺はポインターを合わせてクリックをすると、ブラウザが自動的に何かをダウンロードを開始する。


 突然”ガリガリ”と激しい音を立ててパソコンのハードディスクが鳴りだした。


 「またかよ」


 今俺が使っているパソコンは、中学生になった時に自分用のパソコンが欲しいと思ったのだけど、当然、小遣いで買える代物ではなく、それを聞いた親戚のおじさんが昔使ってたパソコンを譲ってくれたものだが、年式が古くたまにハードディスクがけたたましい異音を立てるのだ。


 「いくらただでくれるって言っても10年前じゃな。 ここまで壊れずに動いているのが奇跡だよ」


 そんな奇跡のパソコンのモニター画面でダウンロード時間を確認すると、2時間と表示されている。


 「えっと今は……」


 時計を見ると現在時刻は0時50分、”ネバーランド”から叩き出されるギリギリの時間だ。


 「まぁダウンロードは始まったし、ちょっと横になろうかな」


 考えてみれば中学生の自分が起きていられる時間などとっくに過ぎており、管理人室に入れた安心も加わり急激な眠気に襲われた。


 「ふぁぁぁぁ……」


 パソコンデスクから自分のベットへと倒れ込むように入った。


 「起きたころには……終わってる……だろう……」


 そう呟いて俺の意識がゆっくりと微睡の中に落ちて行った。



 ・



 ・



 ・



 ・



 ・



 ・



 ・



 ・





 「う、う~ん……」


 どのくらい寝てしまったのだろうか。 気が付くと窓の外は薄らと白けていた。


 「えっと……そうだ。 ダウンロードは……」


 寝ぼけた目を擦りながらパソコンのモニターを見ると、そこには”Not Found”と書かれた画面が出ていたが、デスクトップ画面には”ネバーランド”と書かれたフォルダーがダウンロードされていた。


 「これをクリックすればいいのか」


 虚ろな頭でポインターを動かしてそのフォルダーを開き、乳母車のアイコンをクリックする。


 クリックした瞬間。













”チュン”と音を出してパソコンとモニターが落ちてしまった。


 「え!? はぁ!?」


 突然の出来事に俺はマウスのクリックを連打し、本体の起動ボタンを押す。


 しかしパソコンはウンともスンとも言わない。


 「あぁ……マジか……」


 パソコンの死亡に絶望した時、今度はカリカリとハードディスクが音を立てて勝手にパソコンのスイッチが入り起動し始めた。


 「こ、壊れたんじゃなかったのか」


 復旧したパソコンを見てホッと胸を撫で下ろした。


 OSの画面が表示され、次に表示されたのはいつものデスクトップ画面ではなかった。


 「これって」


 モニターに表示されたのは昨晩俺が覗いていたチャットルーム画面だった。


 『やぁ、やっと起きたね』


 チャットにそう文字が表示される。


 「え?」


 『実は君が起きるのを待っていたんだよ。 自分からじゃ動けないからね』


 「なんだよ! どういうことだよ!」


 理解できない俺を余所にモニターがブラックアウトし、画面いっぱいに文字が表示された。












挿絵(By みてみん)

 













 「うわぁぁぁ!!!」


 ・


 ・


 ・


 ・


 ”トン、トン”自室のドアを叩き、ドアノブを回して母親が中に入ってきた。


 「おはよう。 あら今日は早起きね」


 「うん。 たまにはね」


 「偉い、偉い。 じゃあ朝食出来てるからいらっしゃいよ」


 「うん」


 そう答えて部屋を出て行こうとした時、”ドン”と音が鳴った。


 「何の音かしら?」


 首を傾げる母親にこう答える。


 「気のせいじゃない?」


 「行こう。 ごはん冷めちゃうよ」


 「え、ええそうね」


 母親の背中を押してドアへ向かっていく。


 そしてパソコンの方を見てそいつはニヤリと笑った。


 「じゃあ”ネバーランド”をよろしくね。 ”ピーターパン”」


 ドアが閉まる瞬間を俺はモニターの中から外のそいつに向かって叫んだ。


 「出してくれ! 出してくれ!!!」


 俺の願いは空しくドアはパタンと閉めれた。


 もし恐くないつまらないと思われた方は感想でそう書いていただくと作者が歓喜します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編でしたが、ドキドキ感が詰め込まれていて感動しました。オチに向かうときの引きが凄くリアルで好きです。 [気になる点] ないです。 [一言] 私も似た経験があり、(まあ違法DLではなく、ス…
2016/08/21 13:16 退会済み
管理
[良い点] 展開と、画像が効果的 [一言] メッチャ立派にホラーしてるじゃないですかー! なんか、奇妙な物語をちょっと思い出したり ではでは、今後ともご健筆を
[良い点] 怖かったです……。 内容がじわじわ伝わってきて、びびりながら読んでいました。 そして内容に集中しすぎて、途中で出てきた挿し絵にかなり驚きました。 ちょっと涼しくなりました。 [一言] …
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