表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/29

むきだしのその本性

「そんなもん自分と関わる者皆、踏み台にしていかないとやっていけないわよっ!!うちの母親だってそうよっ!!あのドン臭そうなおばさんがあれだけ人の出入りが多い職場で長続きできているのだって、新入りやパートをいびり倒してでもない限り無理だわっ!!みんなそうやって生きているのよっ!!あんたたちみたいに、ちょっとくらいいじめられたぐらいのことで勝手にへこんで簡単に仕事やめて無職になるようなあまちゃんのほうがおかしいんじゃない!!?だっさー!!」


私は無我夢中で今まで溜めていたことをすべて吐いた。もう完全にやけだった。


「私はあんたたちとはちがうっ!!!私はどんな世界でも勝ち抜いてみせるっ!!!どんな奴でも蹴倒してやる!!!」


そこまでいってざまー見ろ!と思ってその場にいた大人たちの顔を見る。


教頭はぎょっとした顔をしていた。これにはしまったと思った。今まで教頭どころか、他の教師達にすら、そんな本性むき出しにしたことなんかなかったからな~。教頭とはこれから先も付き合いがあるだけ、内申に響きそうだ。それに以前の担任である戸山を蹴倒したのが私だとばれたかと思った。ていうか、ここに教頭がいたことすらすっかり忘れていた。


おっさんと一緒に座っていた二人はふるえている。まぁこれは予想通りだ。


問題のおっさんは…。


ちっとも動じておらず、逆に私に目を合わせてきた。そのまま1分ほど沈黙があり、おっさんがその沈黙を破った。


「いいたいことはそれだけですか?」


「・・・えっ・・・?」


「他にあればどうぞ?」


呆れたことにおっさんはまだ私から話しを聞こうとしていた。いつもなら、敵とみなした相手を倒すまで徹底的にやりあうものだが、今回はさすがにこれ以上やったら自分がおかしくなりそうだった…。


「なによっ!これで終わりにきまってるでしょっ!!?わるい!!?」


冗談じゃない!!これ以上あんたとなんか向き合いたくもない!!


「判りました。もういいでしょう。」


こっちはものすごくイラついているのに、おっさんは相変わらず穏やかだった。そんなおっさんが許せなかった。


「あー、六道君。君、彼女を車で送っていきたまえ。こんな時間に女子生徒一人で帰らせるわけには行かないしね。」



こんな時間って?やだっもうすぐ九時じゃん。こんな時間まで生徒に居残りさせる学校っていったい何よっ!教育委員会に訴えなきゃ!いくらうちの親が夜遅くまで帰ってこないからと言ってこれはひどいわ~。親がいつも家にいる家の子だったらとっくに訴えられてるわな~。それにしてもうちの親はこんなときですら、娘が学校でどんな目にあっているか知らないときている。本当にのんきなもんだよな~。


あ~あ~こんな時間じゃさすがに瑠奈の家になんか寄っている時間なんてないよ~。いったい私の時間を何だと思っているんだよ~。


と思っていたら、


「私はいやです。」


と六道と呼ばれていたおっさんと一緒にいた若い男はきっぱりと断った。


「こんなこというのはなんですが、こんな心根が腐ったものとこれ以上係わり合いになるのは真っ平です。こんな奴がどうなろうとどうでもいいですので。」


わぉー!きっぱり言い過ぎー!!まぁ、そりゃそうだよな~。思っていたより頭いいわ~この人~。


「そうかね。それならしかたないな。」


って?そんな幼稚な意見を受け入れるのかよっ!?


「では箕浦君。君が彼女を送っていきたまえ。」


おっさんは今度は一緒にいたおばさんの方にそういった。


「・・はぁ・・・、しかしながら私今日は電車でこちらまで来たものですから、それは難しいので、できればそれはご勘弁願えませんでしょうか?」


おばさんはの方もっともらしい言い訳をしていたが、誰が見てもいやそうな顔をしていたのはわかった。それは明らかに遠まわしな言い方でこんなガキの面倒見るのは嫌だといっているのは子どもの私でもわかった。こいつ確かに口先だけは一応大人だけど、人前でそんなあからさまな評定するのは大人気ないよなと正直思えたわ~。


ってもっと元気なら、この二人に言いたい放題言っていルカもだけど、今はさすがにそこまでする気力は残っていない。


はいはい判りましたよ~だ。だったら、おとなしく一人で帰りますって~。と思ったときだった。


「なら、君は私が送っていくとしよう。」


「・・えっ?」


何でそうなるんだよっ!!このおっさん何にも懲りてない!!それどころか・・・、


「いい機会だ、私も君とはまだゆーっくりと話がしたい。」


だと。なんという嫌なおっさんなんだろ?私は余計にいらいらしてきた。やっとこんな奴を離れることができると思って、ホッとしたばかりだと言うのに帰りまで一緒だなんて納得できない。


「お言葉ですが、そればっかりは私のほうからお断りします。さようなら。」


今度ばかりは帰宅の許可が出た故にか、教頭とボディーガードらしきの二人組は私の行き先を阻んだりはしてこなかった。こんな時間になってようやく開放された。


それにしてもこんなに自分のペースと乱されたのは初めてだ。こんなに自分の考えを引っ掻き回されたことは今までになかった。

それにしてもあのおっさんたちはいったい何者なんだろう?いまさらながら、引っかかることは多々ある。問題はおっさんたちが実は警察がらみの人だったら、アウトかもしれない。あんな醜態を見せてしまったと言うこともあるが、何よりもあの時、自分の暴走が抑えられなくて、思わず自分の本音を暴露してしまったのだから。あんなことを口走ってしまえば、容疑者と疑われてもおかしくはない。しまったな~。1分1秒でも早く、あのおっさんから離れたいとばかり思っていたら、とんだ隙ができてしまった。


ひょっとしたら、私に平和な明日はないのかもしれない。


そう思うとぞっとしたが、今はとにかくひたすら眠い。あんなくだらないことで時間を費やしてしまったのだから、ものすごく疲れたのでそのまま眠りに落ちてしまった。珍しく風呂に入ることすら面倒だと思えて省いてしまうぐらいで。そして皮肉にも先ほど自分が思ったことが本当におきようとは…。さすがに自分もそこまでは思っていなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ