上書きセーブ〜2日目〜
『超能力は存在するのか!?、今日のゲストは若手イケメン天才マジシャン、JOKERさんです!』
『こんばんはー!JOKERでーす!』
『JOKER...、そういや見たなこんな番組』
夏休み2日目、永久の自宅のクーラーは壊れていた、しかし永久は家から出ることはなかった。
彼の顔に生気はなかったが、突然永久ははっとして起き上がる。
『超能力......?』
夢と全く同じテレビ番組を見ることなんてありえるだろうか?
『ありえない...だとすりゃ楓のアレはやっぱ超能力?時間を、巻き戻して...』
しかし永久はやはりどこかやりきれなかった。
夢と同じ番組を見るなんてのはありえない、非現実的だ。
しかしだからといって同じように非現実的な超能力を肯定するのもおかしい。
『そうだ、何て言うんだっけか...デジャヴ、だっけ?そうだ、きっとそれだ、ありえないって、はは...』
『ところでJOKERさん、単刀直入ですけど超能力ってあると思います?』
『ないですよ、ねぇ?』
『えーと、それ、売り文句が【タネも仕掛けもない真の超能力】の僕が否定しちゃったら番組的に大丈夫です?』
『はは、そりゃそーだな』
永久はもう考えるのを諦めたかのように、何もなかったかのようにテレビに見入っていた。
しかしテレビの中の若手天才マジシャンは、永久へのヒントの様に言った。
『けれど超能力の才能がある人は案外そこら中にいますよ、本人、または周囲が気づかないだけだってこともよくありますね』
永久は反射的に立ち上がっていた。
実際、自分でもどうしたいのかはわかっていなかった。
ただ、このまま落ち込んでいるだけで良いなんてのは絶対ありえなかった、本当はとっくに気づいていた。
永久はスニーカーを履くと家を出て走った。
楓がどこにいるかなんてわからない。
それでも永久は走った。
走って、走って、走った。
そして...、
夢で見た、いつも皆の待ち合わせ場所だった公園。
そこに楓はいた。
『楓...!』
永久は息を切らしながら言う。
『ナガヒサ?...どうしたのこんな時間に、お母さん心配してるんじゃない?』
『いや、俺は大丈夫だが、お前こそ女なのに大丈夫なのか?』
違う、と永久は思った。
言いたいのはこんな他愛もないことじゃなかったはずだ。
『私は大丈夫だけど...、そろそろ帰ろうと思ってたとこ』
『そうか』
そして永久は覚悟を決め一度深く息を吸うと、口を開いた。
しかしそれとほぼ同時に楓も口を開いた。
『あのさ、楓』『...ナガヒサ!』
永久は頭を掻くと楓に『先にどうぞ』とジェスチャーをした。
『ナガヒサ、アンタに、謝らなきゃいけないことがあるの』
そう。
楓も言おうと思っていたのだ。
『にわかに信じ難いと思うけど、私...
『超能力、か?』
『えっ!?』
永久は楓と目を合わせる。
『ちゃんと憶えてる、全部』
楓は泣きそうになっていた。
永久は泣きそうな楓の目をしっかり見ながら言う。
『謝らなくても俺が不幸になるのは構わない、流子だってきっと笑って許してくれるさ、もちろん響だってな、けど響はお前が不幸になるのは望まないはずだ』
楓だってわかっていたのだろう、楓は大粒の涙をこぼした。
『けどそれを言ったら私だって、響に死んでほしくないよ...』
『好きな人を助けるために思い出を全部消すのか?...お前の好きな人がお前を命がけで守ったってのに、全部消すのか?...たった1回失敗したからって、全部?』
『うっ、ううっ...』
楓だって心のどこかではわかっていたはずだ。
『そりゃ好きな人が死んだら悲しいさ、戻ってほしいとも思う、けどよ、失敗を全部消して成功して、本当に満足出来るか?』
楓は泣き続ける。
『どっちにしろ、お前は能力を使いこなせてもなかったんだろ、夏休み初日まで戻すなんてよ』
世界に絶対的な正解なんてのはないな、と永久は思った。
楓のやったことだって、間違いとは言い切れなかった。
けど、そんな物語は一見幸せに見えて全く幸せではない物語になる。
それは目に見えていた。
だから永久は...阻止した。
夏休み2日目、終了。
何か詰め込んだ感がすいません
まぁ失敗したことも含めて成功ですから、本編で言ってますしねww(殴
上書きセーブはもう少し続きます