夏休み〜2日目〜
『超能力は存在するのか!?、今日のゲストは若手イケメン天才マジシャン、JOKERさんです!』
『こんばんはー!JOKERでーす!』
『JOKER...、かっこよくて天才マジシャンなんてずるいぜ...』
夏休み2日目、自宅のクーラーが壊れた永久は、友人の佐藤の家に来ていた、朝から晩まで。
そして佐藤はJOKERが余程羨ましいらしい。
『あれ俺らと同じ年だぜ』
そんな佐藤に聞く耳を持たない永久。
『超能力ねぇ...そんなん存在するのかぁ?』
『超能力の前にお前は何で1日中俺んちに存在するんだよ...!?』
佐藤の半ギレのツッコミを聞いた永久は立ち上がる。
『じゃあ帰る』
『いや唐突!?』
『もう21時だしな、それにお前明日もサッカーだろ?』
佐藤は無気力な永久とは違い、サッカー部に所属しているのだ。
その真剣な姿だけは永久は尊敬していた、最近転部してきた子に11番取られたらしいが。
『まあ、じゃあな』
『おう』
そんな佐藤の家を出た永久は偶然先日も遭遇した人物に出会った。
『あ、流子じゃん』
『永久?』
永久は流子の隣に立つ。
『今帰りか?お前んちもクーラー壊れたのか?』
流子はそれを聞いてから佐藤の標識を見て、ため息を吐く。
『馬鹿じゃないの?アンタと違って私は塾行ってんの』
『はっ!...塾行って俺より順位下とかお前の方が馬鹿じゃん』
すると流子は得意技の脛に蹴りを発動した。
『あぎゃっ!』
『うっさい!てか皆すっかり忘れてるけどウチの学校結構エリート校だったでしょ!?』
すると僅かな沈黙が訪れ、やがて流子が口を開いた。
『ねぇ永久』
『ん?』
『私...永久のこと...』
そこまで聞いた永久は笑って口を開いた。
『好きか?』
『ひゃっ!??』
冗談で言った永久は戸惑う。
『え、マジだったのかよ...そんなあからさまな告白する奴...』
『ひ、引くな!お願いだから引かないでください!』
永久も冷静ではいられなかった。
『あのー、本気で言ってんの?』
永久の問いに、流子は無言で頷く。
その顔は真っ赤だった。
『お、お前が本気で言ってるんなら、俺も、そ、その...』
永久は流子の顔が真っ赤だったことに少し微笑んだが、永久もあまり人のことを笑える状態ではなかった。
流子は大きな声で言い放った。
『あなたのことが好きです!付き合ってください!』
『うわ、テンプレート通りの告白文...』
『ちょっと!どうなのよ!?』
永久は深呼吸をすると、いつも無気力を演じようとし...諦めた。
今の永久に無気力な演技は出来なかった。
『こっちこそ...よろしく......お願いします』
同時刻。
暗がりの中に、男女がいた。
ひと気のなくなった夜の公園で、彼らは永久達とは違い、恥じることもなく抱擁していた。
『ねえ、キョウ』
『ん?』
少女はより強く、少年を抱きしめた。
『私がキョウを守る、から、キョウは安心して』
少女は、泣いていた。
何故泣いていたのか、少年にはわからなかった。
少年は笑いながら言った。
『僕は男だよ?僕が君を守るもんじゃないかな?』
『違う、違うの...』
少女はもっと泣いた。
そうして夜は更けていった。
夏休み2日目、終了。