悪意の値段はプライスレス
・・・・・。
吐く息が白く漂う。
「車の中だってのに、なんて寒さだ。いくら時給がいいからってこんな話に乗るんじゃなかった」
そんな悪態も白く漂う。
2月某日
天気、雪、と言うか大雪。ラジオでも連日の雪の情報を流している。
昨日から降り続いた雪のせいで積雪は1mを超えた今日この頃。
オレは2時間4000円前払いの高時給に釣られ、弟の家の雪かきの手伝いをすることになった。
そして、1行目。
雪かき開始から1時間、さすがに疲れ始めたオレは車で休憩しながら、そんな事を呟いていた。
無駄口が聞こえたのか弟が駆け寄ってくる。
・・・フゥーーー。
1つ深い溜息を吐きながら窓を開けるオレに対して。
「兄さん疲れたろ。後少しだし残りは僕一人で大丈夫だから、これでも飲んで車の中で休んでてよ。雪かき終わったら飯でも食いに行こうぜ。」
と缶コーヒーを渡しながら言い残し、弟は白い雪の中に戻っていった。
弟が差し入れてくれた缶コーヒーが思いのほか暖かい。
昔から喧嘩ばかりで今もギクシャクしてると思ってたけど、オレの一方的な思いだったらしい。
何だか缶コーヒーが眠気を誘う。
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・のニュースです。連日の大雪の影響で死亡事故が起こっています。先日、車内で意識不明の状態の男性が発見され、病院に運ばれましたが一時間後死亡しました。死因は一酸化中毒に・・・・・・」
「・・・・・・ハーーー」
溜息は白く漂う。
深い溜息とは裏腹に男は満面の笑みで飲みかけの缶コーヒーを持っていた。