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姫王子が往く!  作者: 沙φ亜竜
チャプター6 エリーとルビアと青空と
37/39

-5-

「エリーちゃんとの口づけは、いかがでした?」


 パールがなにやら楽しそうに微笑みながら、そんなことを訊いてきた。


 式典のあと、私とエリーはそれぞれ式典の衣装から着替えるため、控え室へと戻っていた。

 私の手伝いをパールが、エリーの手伝いをシストがしてくれている。

 もっとも、私のほうには手伝いなどいらないと思うのだが。


「訊くな」


 私はぶっきらぼうに答える。


「あら、イヤでしたの?」

「べつにイヤってわけじゃないが……しかし、男同士なんだぞ?」

「ふふふ。まぁ、気にしなくてもよいのではないですか? 初めてってわけでも、ないのでしょう?」


 その言葉に頭を抱える。

 私は幼い頃からエリーの教育係として城に出入りしていた。学生時代も基本的には男だけのクラスだった。

 騎士団に入ってしまえばそこは男ばかりの世界。女性だけの第一近衛騎士団も存在しているわけだが、顔を合わせることすらほとんどない。

 年齢が近い女性で会っていたといえば、パールくらいのものだが、パールとはそんな関係ではなかった。


 つまり……。


「あ……あら、そうでしたか……。ふふふ。うん、でも、気にすることはないですわ。それはそれで、貴重な体験かもしれませんし」


 パールは、フォローとも言えないような言葉を投げかけた。


「まぁ、べつにいいのだが」


 気にしていても仕方がない。

 どちらにしても、これからしばらくはエリーと夫婦として暮らしていかなくてはならないのだ。


「そういうパールはどうなんだ?」


 思わず意地悪な質問をしてしまう。


「え? 私ですか? うふふ……ノーコメント、ということにしておきます。ちょっと時間がかかりすぎましたね。エリーちゃんとシストが先に行って待っているかもしれません。中庭へ急ぎましょう」


 パールはそう言って、さっさと歩き出してしまった。



 ☆☆☆☆☆



「ルビア、遅ぉ~い!」


 眉を吊り上げるエリーと、軽く会釈をして笑顔で迎えてくれるシスト。ふたりはパールが言ったとおり、すでに中庭で待っていた。

 草花で彩られた、エリーが大好きな中庭。

 ここでお話しよう、そう懇願するエリーに従って、私たち四人はこの中庭に集まった。


「しかしキミたち姉妹は、本当にいいのか? かなりおかしな状況になってしまっていると思うのだが」


 私の問いに、迷うことなく、


「はい、私たちふたりは、王妃様のお考えに従うと決めております」


 と答えるパール。


「だがあの王妃、どう考えても面白がってやっているとしか思えないぞ?」

「ふふふ、確かにそうかもしれませんね……。でも、私はそれでも構わないんです。シストも納得してるわよね?」


 パールの問いかけに、シストも笑顔で答える。


「うん! エリーちゃんが男性だってのは驚いたし、なかなか信じられなかったけど、でもでも、それならケッコンもできるわけだし、嬉しいくらいかも!」


 シストはいまいち、状況をちゃんと理解できていないのではないかと思うのだが……。

 そんな表情を見て取ったからか、パールが言葉をつけ加える。


「私たちはエリー王子のことを……、あっ、姫と呼ばないといけませんね。……エリー姫のことを、お慕いしておりますから」


 そして彼女は私のほうへと向き直ると、さらに続けた。


「それに私は……、ルビア、あなたのことも……」

「……え?」

「……いえ。とにかく、私たちふたり、複雑な感じではありますけれど、エリー姫やルビアと運命をともにするつもりです」


 そう言いきるパールの顔は、暖かな日差しに照らされて、綺麗に輝いていた。


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