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チリかカケラか、チリもカケラも
身動きとれないときはひたすら耐えるしかないね。人の言動をおおらかにうけとめることって、大変な労力がいる。人の噂にあまり幸せなんてありわしないとわかるだけに、つらいって。
そんなことを思いながら、横断歩道を小走りにふらつく。数日前から太陽の光がおかしい。陽炎が出そうな陽気なのに春だし、かといって春の太陽には思えない。その曖昧な感覚はちょっとはださぶい。春なのに春じゃない。そんな感じを誤魔化しながら、世間的な春を受け入れて。
五階建てのビルに入った。一瞬冷房で喉が詰まった。そして、また一瞬この季節に冷房なんて。すぐエレベーター脇の階段をもつれながら足早にかけあがる。実際は歩いているのとかわらない。