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悔しいんだよ。
私は依頼主である正円寺茉莉花の母親に連絡をした。
少しでも長く彼女の作業場所で彼女の残滓に触れていたいから。
「正円寺茉莉花様のお宅ですが、画材が多く、遺品整理に時間がかかりそうな為期限は今週中でしたが今月末に変更していただきたいです。」
【承知いたしました。
…本当、あの子は昔から絵を描くことが好きで──】
今亡き娘の自慢話を聞かされた後、私は正円寺茉莉花の作業部屋の遺品整理を始めた。
「なにこれ、アクリル絵の具?絶対出ないよ。」
「筆同じサイズの奴もたくさんあるな。」
「筆ほっそ!!」
「えぇ〜上手いのにクシャクシャにされてる〜。」
なんて、ボソボソ独り言を言いながら作業をすると時間が過ぎるのがあっという間。
私が空を見た頃には夕焼けに染まっていた。来た時の美しい青空の面影全くないが、違う方向性の美しさを醸し出している。
そろそろ帰らなくては。
そう思った時だった。
「ん?」
足元に一つの紙が流れてきた。
おそらく作業部屋の奥深くに押し込められた物だろう。
【不合格
正円寺茉莉花様
拝啓
時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度は、本学芸術学部入学試験をご受験いただき、誠にありがとうございました。
慎重に選考を行いました結果、誠に残念ながら、今回はご期待に沿いかねる結果となりました。
せっかくご志望いただいたところ、このようなお知らせとなりますことを深くお詫び申し上げます。
何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
今後のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
敬具】
「落ちてるんだ、この人。」
確かに高卒って言ってたっけ。
まぁ、良い。
大学なんてもの、行っても行かなくても彼女は変わらないで自分の道を進んでいったんだろうから。
そんなのは憶測でしかない、確かにそうだ。
けれど、きっと彼女の熱を浴びたら貴方もそう思う事だろう。
熱の残滓の元で。




