うまれたての満月
掲載日:2026/03/03
北風が凛と吹き
月が消えゆく 遠くの漁り火
足元はゆらめいて
ガラスの向こう側には
空の海に沈む月
波打ち際の紅い貝殻みつけたら
裸足の足を思い出す
時に流され 消えた蝋燭
黒煙の雨に洗われて
再び現れる金の三日月
ひとつ ふたつとさざめきながら
満ち潮に誘われてゆく
そういえば ひな祭り
夕刻の山間に焼かれた
桃色のケーキの雲も頂いた
北風が流れて 薄氷に放たれた矢
夜空を突いて 羽ばたく
北風に瞬くひとつ、ふたつ、みっつの星
あの黒い瞳の輝きに似て息を離さずに
皆既月食を遠くから見ていた
雪 桜 若葉色の金平糖をあの子と食べた
放たれて再びうまれた満月のひな祭り




