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〜酒場《酔いどれ山羊亭》の夜〜  作者: 酔学亭バルド


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3/4

冒険者あるある対決

〜酒場《酔いどれ山羊亭》は今日も平和じゃない〜


 夜の《酔いどれ山羊亭》は、妙な熱気に包まれていた。


「さて」


 店主バルドが、カウンターをドンと叩く。


「今夜の対決テーマは

 冒険者あるあるだ」


 途端に、あちこちから笑い声が漏れた。


「それ、全員一つは心当たりあるやつじゃない」

 ミレイナが嫌そうに言う。


「だからこそだ」

 ロウは眼鏡を押し上げ、静かに笑った。


「ルールは簡単。

 一番“分かる……”って空気を作った方が勝ち。

 赤面と苦笑いが多い方が負け」


「嫌な勝負だなぁ!」



第一戦:ミレイナ


「じゃあ行くわよ」


 ミレイナは立ち上がり、堂々と言った。


「冒険者、回復薬は“まだいける”って言って使わない」


 一拍。


「分かる」

「あと一撃耐えられる」

「死ぬ直前まで温存する」


 酒場中がうなずいた。


「で、結局使う前に倒れるのよ」


「やめろ、思い出す」


 ロウは小さく咳払いした。


「これは強いな……」



第二戦:ロウ


 ロウは静かに指を立てる。


「冒険者、危険な依頼ほど“報酬が安い理由”を深く考えない」


 沈黙。


 次の瞬間。


「……あ」

「それはダメだ」

「考えちゃいけないやつ」


「“簡単な調査です”の時点で察するべきなんだよな」


 バルドが腕を組んでうなずく。


「酒場評価、高いぞ」



第三戦:ミレイナ


「まだあるわ」


 ニヤリと笑う。


「冒険者、装備を新調した直後に限って罠にかかる」


「ある!」

「初日でヒビ入る」

「血糊が落ちない!」


 ロウは目を伏せた。


「……新品ローブが、沼で」


「聞いてない!」



最終戦:ロウ


「では、これで終わりにしよう」


 ロウは一瞬だけ間を置き、淡々と告げた。


「冒険者、酒場では強気。翌朝、全員ボロボロ」


 完全沈黙。


 そして


「うわぁぁぁぁ」

「それ言うな!」

「二日酔いと筋肉痛!」


 ミレイナは頭を抱えた。


「はい負け!

 完全に私たちの明日の話!」



罰ゲーム


「よし」

 バルドが満足そうに言う。


「負けたミレイナ、罰ゲームだ。

 “冒険者あるあるを一つ、自分の失敗談で語れ”」


「それ一番恥ずかしいやつ!」


 だが逃げ場はない。


 ミレイナは深呼吸し、観念した。


「……冒険者、地図読めるって言って迷う」


 どっと笑いが起きる。


「私、三時間同じ岩見てたことある」


「あるあるすぎる!」


 ロウは静かにグラスを掲げた。


「素晴らしいオチだ」


「次はあんたが負けなさいよ」


 酒場《酔いどれ山羊亭》は、今夜も冒険に出ない冒険者たちで賑わっていた。

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