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第7話 樹海最深部の囁き

霧が極端に濃くなる樹海の奥、三人の足取りは疲労で重い。膝に痛みが走り、息は荒い。それでも、凛の胸には戦いを経て得た覚悟があった。


「……ここまで来たな」

凛は拳を握り直し、花梨と零を見つめる。二人も微かに息を切らしながらも、瞳には希望と決意が宿っていた。


──森の空気が変わった。


霧がざわめき、木々の影が歪む。まるで樹海そのものが三人を最後の関門へと誘っているかのようだ。


突然、目の前の霧が渦を巻き、黒い影が無数に浮かび上がった。先ほどの刺客以上の圧倒的存在感。蔓が絡みつき、赤い瞳が森を見渡す。


「……これが、最深部の試練か」

凛の声には緊張と興奮が混ざる。花梨は小さく震えながらも光を掲げ、零は落ち着いた表情で三人の呼吸を合わせる。


影の群れが一斉に襲いかかる。蔓が森の奥から巻き付き、三人を追い詰める。凛は拳を振り、花梨の光が影を拘束、零が動きを封じる。連携のリズムは完全に同期し、影は徐々に押し返される。


しかし、影は単なる敵ではなかった。樹海の意思を宿し、心理を試すように揺らめく。恐怖や孤独が三人の胸に押し寄せ、思わず涙がこぼれる瞬間が訪れる。


「……もう無理かも……」

花梨が小さな声で呟く。凛はすぐに手を握り返し、優しく笑う。


「花梨、俺たちはここまで来た。諦めるわけにはいかない!」

その言葉に、花梨の目が再び輝きを取り戻す。零も深く息を吸い、拳を握り直す。三人の心が一つに重なる瞬間、樹海が応えるように霧が光を放った。


──そして、その中心に現れたのは、古びた石像。

蟻拳の紋章が刻まれ、凛の胸に懐かしい感覚が蘇る。祖父が語っていた拳の秘密、その始まりの地――樹海の奥深く、ここに蟻拳の力の源が眠っていたのだ。


「……これが……蟻拳の源……」

凛は拳を握りしめ、心の奥で祖父の教えと樹海の意思が一つになる感覚を味わった。


その瞬間、影の群れが最後の総攻撃を仕掛ける。三人は呼吸を合わせ、拳と光で立ち向かう。極限の緊張感、恐怖、興奮が同時に襲い、涙が頬を伝う。


──全力の一撃が樹海の霧を裂き、影を打ち破った。


森が静まり返り、霧がゆっくりと晴れる。三人は膝をつき、全身が震え、胸に熱い感情が渦巻く。恐怖、孤独、戦い、絆、希望――すべてがここに集まった瞬間だった。


「……俺たち、やったんだな」

凛が微笑むと、花梨も零も小さく頷く。涙が自然に頬を伝い、心の奥に温かさが広がった。


樹海の奥深くで、蟻拳の秘密は静かに眠る。

そして三人の心には、仲間と共に乗り越えた絆と、さらなる試練への覚悟が刻まれた。



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