第6話 樹海の奥の影
霧がさらに濃くなる。三人は疲労を感じながらも、互いの存在で支え合い、一歩ずつ樹海の奥へ進む。
「……静かすぎる……」
零が囁く。視界はほとんど効かず、森のざわめきすら止まったかのようだ。凛は拳を握り直し、花梨の手を軽く握る。
──その瞬間、霧の奥から鋭い気配が迫った。
「……来た!」
凛は瞬時に構え、花梨も零も戦闘態勢を取る。影が霧を割って現れたのは、秘密結社の精鋭、二体の刺客だった。白影の時よりも大柄で、鎧のような霧で身を包み、赤い瞳が二人を射抜く。
「……ここで立ち止まるわけにはいかない!」
凛は心で叫び、拳を振るう。蔓や木々を利用しながら刺客の攻撃をかわす。花梨は光を集中させ、零が隙間を作る。三人の連携が完全に機能する瞬間、樹海がざわめき、霧が光を反射して戦場を覆う。
刺客の一体が凛を狙い、鋭い刃のような霧を振りかざす。凛は反射的に拳を叩き込み、刃を弾き飛ばす。しかしその反動で足元が崩れ、膝をつく。花梨が光で支え、零が踏み込んで影を押し返す。
「……大丈夫、凛!」
花梨の声が胸に響き、凛の心に熱いものが込み上げる。恐怖も孤独も、涙腺の奥で力に変わる瞬間だった。
三人は息を合わせ、連携攻撃を繰り出す。凛の拳が影に突き刺さり、花梨の光が追い打ちをかけ、零が動きを封じる。刺客の霧が破れ、赤い瞳に一瞬迷いが走った。
──心理戦が戦況を決める。恐怖、迷い、信念。すべてが戦いを左右する。
凛は拳を握り直す。心の奥で祖父の声が蘇る。
「恐れるな。力は、己を信じる心から生まれる」
その声と花梨、零の存在が背中を押す。三人の心が完全に共鳴し、樹海そのものが力を貸すかのように拳と光が融合する。
一撃が刺客を貫き、霧の中で彼らの姿が崩れ消えた。森は再び静まり返るが、三人の胸には高揚と達成感、そして涙が自然に流れた。
「……まだ終わってない。次がある」
凛は拳を握り直し、花梨と零を見つめる。二人も小さく頷き、互いの存在に力をもらったことを確認する。
樹海は深く、そして確実に彼らを試していた。
──次なる試練が、さらに深く、さらに苛烈に待っている。




