第5話 樹海の試練:最初の関門
霧深く覆われた樹海の奥、三人はしばらく歩みを止め、足元を確認していた。森全体が異様に静まり返り、枝や蔓のざわめきすらも息を潜めたかのようだ。
「……ここが、最初の関門か」
凛は拳を握りしめ、心臓の鼓動が全身に響く。花梨は零の手を握り、微かに震えながらも目を輝かせる。
その時、霧の中から無数の黒い影が立ち上がった。蔓や木の影が人の形に変化し、三人を囲む。目は光らず、表情もない。だが、凛は直感で感じた――
──これはただの敵ではない。試練そのものだ。
「……いくぞ!」
凛が叫ぶと、花梨と零も呼応する。三者の心が一瞬で同期し、樹海の微かな呼吸まで感じ取る。
影が一斉に襲いかかる。蔓が絡みつき、森の地面を震わせる。三人は反射的に体をひねり、蹴り、飛び跳ねる。凛の拳が最初の影を打ち破り、花梨の光が次の影を拘束し、零が隙間を作って突破する。
しかし、影は無限に湧き上がるかのようで、圧倒的な数に三人の呼吸が乱れる。
「……こんな数、どうやって……!」
零の声に、凛は胸を高鳴らせつつも冷静さを保つ。
「焦るな、協力すれば突破できる!」
凛は花梨の手を握り、視線を零に向ける。三人の呼吸が合わさり、連携の動きが生まれる。拳、光、移動――森のあらゆる要素を利用して、影の動きを押さえ込む。
影の中の一体が突然、凛を狙って飛びかかる。凛は反射的に拳を振り、影を弾き飛ばすが、その勢いで足元の蔓に足を取られる。バランスを崩し、倒れそうになった瞬間、花梨が光で彼を支えた。
「凛、大丈夫!」
その声に胸が熱くなる。凛は拳を握り直し、涙が自然に頬を伝う。恐怖、緊張、孤独――それを超えて、仲間との絆が力となった瞬間だった。
三人は再び影に立ち向かう。零が先頭で影の動きを読み、花梨が光で援護し、凛が拳で突破口を作る。連携が完成した瞬間、影は霧に吸い込まれるように崩れ去った。
森が静まり返り、霧がゆっくりと薄れる。三人は膝をつき、息を整える。全身が震え、胸に高揚と達成感が混ざる。
「……やったな」
零が微笑むと、花梨も頷き、凛も拳を握りしめた。
だが、霧の奥から微かな囁きが聞こえた。言葉ではなく、樹海そのものの意思のようだ。
──まだ試練は続く。
──そして、この森には、さらに深い謎が待っている。
凛は拳を握り直し、二人の背中を見つめる。
「……行こう。俺たちは、ここからさらに強くなる」
三人は互いに手を取り合い、樹海の奥深くへ歩を進めた。
恐怖も孤独も、すべて力に変えて。




