(1)
夜22時近く、終了を意味するベルの音が教室内に設置されているスピーカーから聞こえた。
「では、本日はここまで。みんな、ちゃんと今日の授業内容を復習しておけよ」
塾講師はそう言うと教卓に置いてあった教科書などを抱えて部屋から出ていった。私は机の上に並べていた教科書やノートや筆箱を通学カバンにしまった。席を立ち忘れ物がないか周りを確認してから私は教室を後にした。
私が通っているこの塾は5階建てのビルの2〜5階に入っている。2階が受付、3~5回に教室がある。2階の受付では入退室を確認するための機械があり、そこにタイムカードをかざすことで入室や退室を記録している。記録は塾に入会したタイミングで登録した親のメールアドレス経由で親のメールに送られる。
このシステムには塾をサボることを防止する効果と生徒の安全を管理する役割がある。私はタイムカードをかざすためにエレベーターに乗り2階に向かった。
2階には多くの生徒がいた。それもそのはずである。同じような時間に終わった教室がいくつもあり、その生徒全てがここ2階でタイムカードをかざさなければ帰れないからである。私も順番待ちをするために列に並んだ。順番が来たらタイムカードをかざす。名前と時間、退室という文字が間違いなく画面に出ていることを確認してから私はその場を離れ階段で1階に降りた。
2階からエレベーターに乗ってもいいのだが、エレベーターに乗るよりも階段で降りた方が早く1階にたどり着くため私はいつも階段で降りている。
この塾までは徒歩で来る人もいれば自転車で来る人もいる。親に車で送ってもらう人もいるし電車で来る人もいる。私はこの塾の最寄駅の隣の駅近くに住んでいるのでいつも電車で塾に来ている。今日もいつも通り電車で来た。
この塾から塾の最寄り駅までは5分ほど、駅までの道沿いにはコンビニ、弁当屋、居酒屋、キャバクラやバーがあるがコンビニ以外立ち寄ったことがない。というか私にはいらない店ばかりだ。
学生のためキャバクラやバーは行っても入れないし、居酒屋にも要はない。弁当を買いたいのならわざわざ弁当屋ではなくコンビニに行けばいいと思っているので弁当屋にも要はない。参考書などを見るために本屋があればいいなとは前から思っているが、無いものは仕方がない。お腹が少し空いていたので、私はコンビニに立ち寄ることにした。