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第一部:『今川義元編』 第10章:「帝国布武、知識が創る天下」

いよいよ第一部・今川義元編、最終話です。

桶狭間で織田信長を破り、徳川元康を討ち、斉藤家を滅ぼして、美濃・尾張・三河を含む東海道を掌握した義元。

けれど彼の目標は「戦い」ではなく、「再編」。

現代の知識を活かし、乱世に終止符を打つ国家構造、知に支えられた帝国の礎を築く時が来ました。


知識と統治、そして未来を見据える者だけが進める“次のステージ”へ

稲葉山、今は“岐阜城”と名を変えたこの地の天守から、私は東海道の大地を見下ろしていた。

斉藤家の滅亡から、すでに二旬が経っていた。


「尾張、三河、美濃、遠江、駿河……東海道の中心は、すべて我が手にある」


泰朝の報告に、私はただ頷いた。


戦は、終わった。

だが、それは“破壊”の終わりにすぎず、“構築”の始まりだった。


「税制は、三段階で構成する。まず農地には収穫量に応じた定率課税を」

私は地図と収穫報告書を睨みながら言った。


「商人・職人には銀納による市中税。貨幣流通の安定のため、南蛮貿易で得た品も活用する」


「殿、それでは銀の価値が暴落する可能性が」


「ならば“信用”を制度化する。帳簿と証書に基づく“取引の記録”を町役所が管理するのだ」


私は、既に“紙”と“印”を活用した新しい会計システムを導入しつつあった。

各地に商業所と物流路を整備し、徴税も「記録」によって透明性を持たせた。


「殿、街道建設が進んでおります」

「計画どおり、城下町から三方向に延ばせ。道はまっすぐ、幅八間、両脇に街道灯を」


私は、古代ローマの“アッピア街道”を参考に、軍道兼物流路を整備していた。


馬が通り、人が行き交い、物資が流れる道。

それこそが国家の血脈となる。


これにより、緊急時には軍が三日で国境まで移動できる。


「殿、町民の間で“識字帳”の需要が高まっております」


「良い傾向だ。寺社の教えだけでなく、算術と地理も教えるように命じよ」


子供たちに配布された小冊子は、識字率を飛躍的に上げ始めていた。


知識は、人の心を動かし、社会を変える力を持つ。


一方、内政だけではない。

「泰朝、北への使者は?」


「既に上杉家へ到達し、謙信公より返書が届いております。“一度、お会いしたい”と」


「謙信は、まだ我らの“異質さ”に気づいていないな」


上杉家、武田家、そして未だ混乱する関東・関西情勢。


私の“知の帝国”は、いずれ他の転生者たちとも交わる。


だが今は、その“予兆”すら知られていない。


私は新たに制定した文書に署名し、その上から朱印を押した。

【帝国府布告 第壱条】

「武によらず、知により治める」

「学ぶ者は貴く、治める者は責務を負う」

「戦なき世を、我らが築く」


これが、“布武”の真意だ。


「戦って終わらせるのではない。戦いを知で乗り越え、秩序に転じる」


それが、私の思想であり、今川義元という器を通じて生まれた、新時代の灯火だった。

第一部・今川義元編、完結でございます。

ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。

義元という“敗者”に転生した歴史学者が、その知識で未来を切り拓き、

戦国の混沌に“秩序”を持ち込む物語、お楽しみいただけましたでしょうか?


そして、物語は次の視点へと移ります。


第二部に登場するのは、近畿を宗教と科学で支配しようと目論む【本願寺顕如】。

転生したのは、現代の科学者。

彼が目指すのは「信仰」と「科学」の融合による新たな国家像

それは、救いと狂気の狭間に揺れる“倫理なき宗教帝国”。


疫病を操り、人体実験すら辞さないその手法は、正義か悪か。

信者たちが涙を流し、祈る先にあるものとは。


次回予告も含めて、第二部【本願寺顕如編】に、どうぞご期待くださいませ。

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