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令嬢は借金まみれ!? 社交界の怪しげ投資詐欺に巻き込まれました!  作者: ぱる子


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第13話 再会と駆け引き③

 その一方、会場の二階にある小さなバルコニーから、ステラとフローレンスが下のホールを眺めていた。目線の先では、さっきまでレオン・カトリーナ・エレノアが会話していた場所が見える。三人が一旦離れ、それぞれ別の客と話し始めたタイミングで、ステラが口を開いた。


「ふふ、ついにレオンが戻ってきましたね。お嬢様がどんな対応をするか見ものだと思っていましたが、案外おとなしく交渉に応じたようですわ」

「ええ、金になるなら嫌な相手でも利用する。それが今のエレノアでしょう。……レオンもあれだけ捨て台詞を吐いてたくせに、ちゃっかり復帰してきたわね」

「カトリーナって子もたいがいですよ。自分の家の借金を抱えたまま、アルディアス家の詐欺同然の投資に乗ろうとしているなんて。まあ、私たちには悪い話じゃありませんが」


 ステラは「あくまでも他人事」といった風で肩をすくめる。フローレンスはバルコニーの手すりに寄りかかりながら、下のホールを見下ろしている。


「この状況、ますますカオスになってきたわ。アルディアス家の計画にレオンとカトリーナまで加われば、どんな騒ぎになるのやら」

「ふふ、私たちにはいい展開でしょう? どちらにしても最終的に崩壊するとしても、今のうちに儲けられるだけ儲けておけばいいんです」

「そうそう。エレノアたちが成功したらしたで分配金がもらえるし、失敗したらしたであなたなんて逃げる気満々ですしね。私も仲介料をつかんでトンズラすればいいだけ」


 フローレンスは悪びれもせず笑う。その目はまるで狡猾(こうかつ)な狐のように輝いている。ステラもまた、「私が命令されてやっているだけという体で、いくらでも逃げ道はあるわ」と口元を吊り上げた。


「ま、あとで痛い目を見るのはアルディアス家かレオンたちでしょうね。そういえば、カトリーナの家も相当ギリギリらしいじゃないですか」

「らしいわね。つまり双方とも金を探しているだけの関係。……あんな形で再会して、このあとどうなるかしら。想像するだけでゾクゾクしない?」

「ええ、とても興味深いです。誰が一番悲惨な終わり方をするのか、考えるだけで楽しみになりますわ」


 二人は視線を交わし、バルコニーの上で声を潜めて笑い合う。まるで悪役同士が「いずれ彼らはどう転んでも自滅する」と確信しているような、黒い笑みを浮かべているのだ。どちらも“自分だけは損をしない”という自信があるからこそ、こうも無邪気に笑えるのだろう。


「とにかく、今はレオンたちが出資を決めることでさらに計画が盛り上がる。それに釣られて他の投資家も一層活気づくわね」

「はい。するとガイル様とエレノア様はますます強気になり、ますます騙しやすくなるわけです。……最高の展開ではありませんか」

「そういうこと。いずれガタが来るかもしれないけど、その前に私たちが儲けられるだけ儲ける。……それが私たちにとっての成功よね」

「ええ、全く同感ですわ」


 フローレンスとステラは顔を見合わせ、バルコニーから階下を再び見下ろした。そこにはレオンとカトリーナがいる。少し離れたところではエレノアが別の投資家と談笑しつつ、時折レオンの方を盗み見る。


 その三人の様子を見て、フローレンスとステラはまるで感情のこもらない瞳で観察を続ける。その顔には「どちらが転んでも私たちが得する」という確固たる打算がはっきり浮かんでいた。


「さあ、今夜はいよいよ『同窓会』の開幕ね。エレノアとレオンの間に何が起こるか……見物だわ」

「そうですね。カトリーナという混ぜ物も加わって、さらに面白いことになるでしょう。私たちは適当にサポートして、適当にお金を引っ張れば十分」

「ええ、崩壊の時まで指折り数えておくとしましょうか。その瞬間も、きっと愉快な見世物になるもの」


 そう言って二人は、さも楽しそうにバルコニーを後にする。社交界の喧騒と音楽が彼女たちを出迎えるが、そこには穏やかな祝祭ではなく、「打算と裏切り」が充満した疑似的な盛り上がりしかない。


 こうしてアルディアス家のパーティ会場は、レオンとカトリーナが正式に参入することで、新たな混沌を呼び起こす。エレノアたちの詐欺計画がいよいよ危ういバランスで暴走を始めた瞬間でもあった。


 金目当てに再接近してきた元婚約者、そして同じく借金まみれの新パートナー。彼らの参入に、ステラとフローレンスが狂喜する。誰もが金しか見えていない中で、この悪夢の舞台は一層きらびやかに彩られていく――そのすべてが、いずれ訪れる破滅を加速させる鍵になるとも知らずに。

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