第八話
「だぁーっ! めっちゃ悔しいっ!」
秀有がテーブルをドンッと叩く。
すると、店に居る店員、客までもがシンとなり、辺りは静寂に包まれる。
「声がでかい。あとそれと、物に当たるな。秀有」
水無月がゆっくりと秀有から非難させたコーヒーをすする。
「くっそっ! あともう少しやってんでっ! これ見てみぃーなっ!」
興奮した声で、テーブルに広げてある、ありとあらゆる新聞を指す。
そこには、どこの大見出しにも怪盗R・Bの記事が踊っていた。
そこには英字新聞も混ざっている。
「どこもかしこも、怪盗R・Bやし、日本の警察はどうなっとるんやとかどうたらこうたら書いてまうし、一体どうなってんのやっ! 警察はっ!」
「どうなってるもこうなってるも、新聞に書かれた事は事実なんだろ?」
水無月は淡々と話していく。
「そ・や・か・らっ! 今悔しがってるんやないかっ! わかるか? その場に居たうちは捕まえられへんかってんでっ! 捕まえられへんかっただけでも大損やのに、顔立ちも何も覚えてないんやで、うちはっ!」
手を広げ、水無月に訴えている秀有。
「それがあの怪盗R・Bの能力なんだろ? 『見たことは覚えているけど、話せと言われたら思い出せない』っていう」
またコーヒーをすする水無月。
「そうなんよ。やけど、どこの大学にもそんなおかしな能力を持った犯罪者はおらへんっていうデータが出てるんや。そんな聞いたこともあらへんって。なんでやと思う? もしかしたら、怪盗R・Bは、宇宙人かも知れへん……!」
頭を抱えて言う秀有。
「おいおい、秀有らしくない、変な事言うなんて。そんな事あるわけないじゃないか」
水無月がコーヒーのおかわりを頼みながら言う。
その店員の顔が怯えていた事を知らない秀有が先を続ける。