第三話
二人は講義が終わり、次の講義が始まる場所に移動していた。
秀有の長い黒髪と、水無月の長い黒髪が歩く度に、優雅に舞う。
「怪盗R・Bの予告状、知ってるやろ?」
秀有が言う。
「知らない」
素っ気なく答える水無月。
すると、秀有が小さくため息をついて言った。
「ちょっとはニュース見ろや、お前。今日の夜八時に、『女神の微笑み』っちゅー絵画を盗みにくるんやて」
「その女神の微笑みは時価?」
「数億円。わからへん。なんせ国宝モンや。めっちゃ警備厳しくて、鑑定師さえ触らせて貰えへんねんて」
「そうなのか……」
水無月が答える。
「はぁ~。前の三か月前は失敗したんやから、今度は絶対に捕まえて欲しいわぁー、警察も」
秀有が呆れたような顔をする。
「警察はいくら経ってもあれじゃダメだ。大体、周囲を全体的に景観を配置させて見張るだけじゃ、R・Bは捕まえられないよ」
水無月が言うと、目を輝かせる秀有。
「さすが水無月やな。そんなトコまで分析してんのか?」
「まぁ、テレビでもいろいろやってたしな。これくらいは――」
「あぁ~! お前とうちのタッグで組むんやったら、R・Bなんてコロッと檻の中やねんけどなぁ~!」
その前にR・Bが出なくなるぞと言いそうになった水無月だが、グッとこらえた。
水無月が言う。
「お前は捜査に入らないのか?」
「うちは入られへん。なんせ母さんが前線やからな」
「そうか……」
「今回も、爪かじって黙って見てるくらいしかできへんねん。こんなん大阪人やのにホンマ無理やわぁ~!」
手を大きく広げ、首を横に振る秀有。
「お前はリアクションが一々激しいんだよ」
「おっ! ナイスツッコミッ! 水無月の方からツッコミなんてめずらしいやないかいっ!」
「……。お前とツルんでいたら疲れるよ……」