第二話
怪盗R・B――。
今世界中を賑わしている怪盗である。性別不明、正体不明、年齢不明。何もかもが不明の怪盗。
姿はいつも白いスーツに青いネクタイ。
そして、月の明かりに照らされて光黒く長い髪。
どんな不可能な密室や状況でも、必ず予告状ピッタリの時間に盗む、まさに現代の科学ではありえない怪盗。
そして、美術品を盗んではそれをお金に換えてお金に困っている孤児院などを回り寄付をしているという、善良な怪盗。
現代の科学ではもうとっくにそんなものはいないと認識されてきている怪盗。
しかし、この世には存在する。
怪盗R・Bは「シーニュ」と呼ばれる白い乗り物。フランス語で直訳すると「白鳥」。
そう。それはまさしく夜空に羽ばたいている白鳥のような形からこの名がついた。
なぜフランス語なのか、それはR・Bはフランス語を得意としているから――。
「現に、予告状に全部フランス語らしいからな。……聞いてんのか? 水無月」
秀有が手を水無月の前で振り下ろす。
それに気付いて水無月が秀有の顔を見る。
「ああ、ごめん。聞いてなかった」
「ちゃんと聞いとけやぁー」
「ごめん」
秀有がまた話しだした。
彼女は水無月と受験会場で知り合い、学科が同じで、しかも二人とも頭がよく、論文では、絶対水無月が選ばれたら秀有も。秀有が選ばれたら水無月もというように、二人はそのまま意気投合していった。
水無月はただの大学生ではない、怪盗――。
そして同じく、秀有もただの大学生ではなかった――。
秀有 望――彼女の家はお金持ちの私立探偵。
母親は私立探偵。父親は警視庁捜査一課の警部という両親の間で生まれたのだった。
母親は、捜査が困難な時にいつも手助けをしていることで有名で、新聞にも度々取り上げられている。
そして、彼女も有名な探偵で、今までに数々の何事件を解決。そして、格闘技もかじっている。
現に彼女はアリバイを暴かれそのまま逃げようとした大柄の男をとび蹴りで気をなくさせそのまま犯人逮捕までに至った超怪力の持ち主である。
そんな正反対の二人。だが、それを知っているのは――。
「どう思ってんねん? R・B」
無邪気に聞いてくる秀有。
「……そうだな」
それを苦笑いで答える水無月だけが、この正反対な関係を知っている。