特訓
ーーキィィィィン
俺の体と剣が宙を舞う。
「リアム。ほら、すぐ立ち上がって剣を取れ。まだ特訓は終わってないぞ。」
昨夜の依頼の話から1日。
シルヴァー団の拠点の、まあまあ広さがある中庭で、俺とリリスは特訓をしていた。
俺は団長に武器を使った戦い方と武器がなくても戦う方法を。リリスはひたすら魔法について教わってるみたいだった。
「ゼェ……ハァ……」
もうここ1時間くらいずっと剣と共に吹っ飛ばされているだけだ。こんな特訓になんの意味があるんだよ。
……だが、昔もこんなことがあったな。
「団長、休憩するのも大事だと思うよ〜。」
「そうか。じゃあ休憩としよう。」
はぁ、やっと休める。リリスは……
リリスの方を見ると、バケツ100個程いっぱいに氷属性魔法を使って作られた氷が入っていて、バケツたちの横でぐったりしているリリスがいた。
「副団長、あれ大丈夫なのか?」
「あー、魔力が切れてるだけだし大丈夫だよ。後で魔力回復できる木の実持ってくるから。」
副団長であるレレ•ソラトは、超回復魔法を使える凄腕の魔術師。回復魔法はもちろん、補助系魔法をよく使っている。
攻撃魔法を使っているところは見たことないが、流石に攻撃魔法まで使えるとなるとやばすぎるか。まぁ、初級程度のものなら使えるかもしれない。
あといつも笑っている。多少表情が崩れることもあるが。
「それにしても、リリスちゃんすごいね〜。あの年の子だとあのバケツ50個分くらいが普通なのに、その倍だよ〜!これは鍛えがいがあるね〜。」
俺の妹であるリリス•ノグレーは、副団長と同じ魔術師。多分得意な属性は氷。というか氷属性魔法以外見たことがない。
「レレ、そっちの調子はどうだ。」
「まあまあいい感じだよ〜。今は基礎の魔力量を増やすのと魔法を身体に馴染ませることを目標にしてる〜。魔法は使えば使うほど強くなってくから。」
なるほどな。魔法はあまり詳しくないが魔法を使い魔力を使えば使うほど元の魔力量が増えていく。 そして魔法は使えば使うほど身体に馴染み、扱いやすくなる。例えば発動する速度がはやくなる、とかだろうか。
「団長は?」
「とりあえず実戦をしてるぞ。特訓ってどうすれば良いのかわからんからな!」
おいわからねぇからって1時間吹っ飛ばし続けるな。体ボロボロなんだが。
このシルヴァー団の団長は、強いのにどこか抜けている。
いつも鎧をつけていて、鎧じゃない姿を見たことがない。食べてる時もどう食べてるかわからねぇし、風呂もいつのまにか入っている。
でもやはり、強さは本物。斧を巧みに使って敵を倒していく姿には圧倒される。
「うーん、僕は魔法のことしか教えられないし……まぁ、リアムくんファイト!」
副団長がこちらに向けてグッドサインをしてから拠点に入っていった。
「よし、じゃあリアム。再開するぞ!」
「……お手柔らかに……」
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「いってぇ……」
昨日はあれから走りこみされてたり、ひたすら剣振らされてたりして、全身の筋肉痛がすごい。
「あ……お兄ちゃん……」
リリスも今日はぐったりしてる。
「リリスちゃん、昨日の魔力切れの疲れが響いてるみたいだね〜」
「このくらいでへばるなど、貴様らもまだまだだな!」
ニッコニコな団長をよそに、俺は副団長に回復魔法をかけてもらう。
リリスは木の実をもそもそ食べていた。
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特訓の日々から1ヶ月が経ち、地獄の特訓にも慣れてきた頃。
「よし、ダンジョンに行くぞ」
急にそう言われた。
「急ですね……」
「特訓はもういいのか?」
「ああ。今日は貴様らの特訓の成果を確認する」
説明を聞くと、どうやら俺たちの適正ランクだと思われるCランクのダンジョンに挑んで今の実力を確認するらしい。
「このダンジョンを攻略すれば、晴れて合格。依頼にも連れていく」
合格しない方が安全じゃねぇか?
「ちなみに合格できなかった場合、特訓は続行かつ今よりも厳しくする」
「よし頑張ろうなリリス」
「そ、そうだねお兄ちゃん」
……まぁ、この団でやってくにはこのダンジョンは攻略できるくらいの実力は持ってないといけないだろうしな。
それに、実力を試す良い機会だ。
「ダンジョンに行くのは明日だ。よーく休んでおく事だな」
俺は明日のことを考えながら、眠りにつくのだった。
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馬車に揺られて数週間。俺たちはある町はずれの場所にある、森の中のダンジョンの前に来ていた。
「うわぁ……!高い塔ですね……」
ダンジョンの入り口に立つ。このダンジョンに俺とリリスだけ入り、団長と副団長は外で待つらしい。
「じゃあ行くか」
「2人とも!」
建物に足を踏み入れようとした時、副団長に呼び止められた。
「ーー頑張ってね!応援してるから〜!」
「健闘を祈るぞ」
ダンジョンの門が閉まる。それによって、ダンジョンの中は真っ暗になった。
「ーーお兄ちゃん、一緒に攻略頑張ろうね!」
ニコッと笑いながら言うリリスを見て、つられて口角が上がった。
「ーーああ」