シルヴァー団
「どういうことですかっ!詳しくっ!」
机にバンッ、と手を置き、勢いよく立ち上がるリリス。
俺は慣れたものだが、リリスは差別に長く苦しんできた。そりゃこんなこと言われちゃ食いつくだろう。
「落ち着け。とりあえず、お互いに座って話をしよう」
リリスはハッとした顔をするとすぐに椅子に座った。
一息ついた後、鎧男は俺たちに告げた。
「まず、吾輩たちの目的は、魔王を倒すことだ」
「魔王!?」
「魔王……」
魔王とは、ざっと言えば人間の敵だ。魔族を従え、魔物を操る、悪魔の手先。
人間は神を信仰しているため、神の敵である悪魔とその手先である魔王をはじめとした魔族を敵とみなしていて、おそらく魔族、魔王も神を信仰している人間に敵対している。
魔王の力は絶大で、昔ニ度魔王討伐隊が組まれたがどちらも全滅したと言われている。
それを、こいつらは倒すと言っているのだ。
「それ、本気で言ってるのか」
「ああ、本気だ」
「その、魔王を倒す、ということが差別をなくすこととどのような関係が……?」
「お前たちのような悪魔の容姿をした者が魔王を倒したとなると、悪魔という評価から一転して人間の英雄となれるであろう」
馬鹿馬鹿しい。魔王なんて倒せるわけない。そういうのは言い伝えにある勇者の役目だろ。
「リリス、帰」
「やります」
……は?
「私は団に入ります。魔王を倒します。そして、差別もなくします。」
「リリス!お前自分が何を言ってるのかわかってんのか!?魔王はそんな簡単に倒せる相手じゃない!!」
「お兄ちゃんの言ってることはわかるよ。でも、私はずっとこのまま、何もしないまま虐げられるのは嫌だ」
「だが……」
「私はお兄ちゃんに救われた。だから今度は私がお兄ちゃんに恩返ししたいの。差別を無くせば、お兄ちゃんを悪く言う人もいなくなる。それに助けていただいた恩も返したいしね」
……リリスの決意は本物だ。俺を見るまっすぐな目がそう言っている。
「わかった。なら、俺も団に入る」
「えっ!?お兄ちゃんにそんな危険なこと……」
「どっちにしろ2人一緒じゃなきゃ入れないって話だっただろ」
「あっ、そうだった」
それに、リリスが心配だ。死なれちゃ困る。
「話はまとまったようだな、レレ」
「……なんで僕に振るのさ」
「2人が入ることに対して、あまりよく思っていなさそうだったからな」
「若い子たちが危険な目に遭うのが嫌なだけ。2人とも強いし、団にとってはいいと思うけど〜?」
そう言った後、回復魔術師と鎧男は見つめ合っていた。
その状態でしばらく経った後、回復魔術師の方が折れたようで。
「はぁ……団長のことは信用してるしこの子たちも簡単には死なないでしょ。わかったよ歓迎するよ」
「感謝するぞレレ」
「団長は一度決めたら折れないめんどくさい人だからねぇ。僕の時もそうだったし、しょうがない」
不貞腐れたような顔をしていた回復魔術師だったが、俺たちに向き合うとニコッと笑い、自己紹介をした。
「僕はレレ・ソラトっていうんだ〜。よろしくね!ほら団長も!」
「吾輩は名乗る名などない」
「いつもそうじゃ〜ん。もー、しょうがないから2人とも、この人のことは団長って呼んであげてね!」
「あっ、はい。えっと、私はリリス・ノグレーといいます。よろしくお願いします」
……?一瞬、何か違和感を感じた。
……気のせいか。俺も名乗らなきゃな。
「俺はリアム。よろしく」
「はいそれじゃ、詳しい話はまた後で!とりあえず……」
"シルヴァー団"へ、ようこそ〜!