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今後の課題

 ——◆◇◆◇——


「やっぱり、強すぎるだろあんた……」


 しばらく戦ってみたけど、結局俺達では天満に勝つことができなかった。

 追い詰めたとは思う。二対一ではあったけど、結構いい線いったはずだ。

 でもこれ以上は本当の殺し合いになるし、何より俺の体力が限界だった。腕を潰され過ぎて今はもう腕の感覚もないってのもあって、これ以上戦うことはできなくて戦いは終わることとなった。


「何を言う。ワシとて限界だったぞ。良き修行となった」

「限界って言っても、まともに喰らってないじゃん」

「そうでもないぞ。全身アザだらけだ。今は所詮痩せ我慢をしているだけだ」

「ぜんっぜんそうは見えないんだけど……」


 そういいながら俺に向かって腕を差し出してきた天満だが、確かに見ると青黒くなっているように見える。これは治した方がいいんだろうか? ……いいか治さなくても。どうせこの人ならすぐに治るだろ。そんな能力を持っていないのは知ってるけど、この人ならなんか治りそうな気がするんだよな。

 それに、どうしても必要だったら神在月の方で用意するだろう。


「さて、お前達に関してだが、誠司。お前は単純に能力を使い慣れていない」

「それは、まあ……そうでしょうね。今まで使わずに来たんですから」


 今回は全力で能力を使って何百本と腕を出したけど、全ての腕を完璧に操作しきることはできなかった。

 普通に考えればわかるけど、当たり前と言えば当たり前だ。なにせ人間は自分に生えている二本の腕でさえ完璧に操りきることはできないんだから。


 相手を追い込むだけの大雑把な操作でいいとはいえ、何百……いや、何十ですらスムーズに動かすのは難しい。

 それでも何とか動かして罠を張るくらいには使えたんだから、褒められてもいいと思う。


「うむ。だがこれからはそうはいくまい? 無数の腕を伸ばすという能力は、まともに使いこなすことができるのであれば強力な能力となる。だが、そも人は無数の腕などと使いこなすことができるようにはなっていない。人の腕は二本しかないのだからな。今のお前も、まあ悪くない動きではあるが、腕を操るのに意識を向けすぎると体の動きが疎かになっている。戦闘中であっても自在に動かせるようにしておけ」

「はい」


 自分でも分かっていることだが、こうして俺よりも強い人からはっきりと言われると鍛える方向で迷うことはないからいいな。


「次は祈だが、こちらはあまり言うことはないな。武術の型もしっかりとしている上に、出力自体も問題ない。純粋な力比べであればワシなど話にならんだろう」

「その割には全部流された気がするんだけど」

「それはそうだろう。お前たちに型を教えたのは誰だと思っている。いくら速く強かったとしても、型がバレていれば対処などいくらでもできる」


 それはそうだろうな。祈の戦いの基礎となる型はこの神在月で習ったものだ。そして目の前にいる天満はその神在月の前当主。

 祈としてはまともに攻撃を当てることができなかったことを悔しく思っているのかもしれないが、天満は型なんてすべて把握してるに決まっているし、その対処方法だって把握していて当然だ。


「それよりもだ。もっと大きな問題がある。それは、お前が誠司を守るための行動をとりすぎると言うことだな」


 その言葉に祈は思い切り眉を顰めているが、それにつられるようについ俺も眉を顰めてしまった。

 けど、その言葉は決して間違いではない。だって祈は本当に俺を優先して戦っていたのだから。


「だって、それが私の〝願い〟なんだし仕方ないでしょ」


 祈の願いは『家族に笑っていてほしい』で、〝家族〟を守ることが行動原理の中心に来ている。

 そんな祈だから、俺が危険な状況になれば何を置いてでも助けに入ってしまう。


「わかっておる。だが、それでは逆に誠司の危険となることもあると心得よ。目先の利益、結果だけではなく、最終的にどうするのが誠司のためになるのかを考えて動け。そうすれば、戦闘中であろうと誠司を守ることに傾きすぎずに動くことができるだろう」

「……まあ、考えてみる」

「うむ。それで良い。直接守るだけが〝守る〟というわけではないからな」


 祈は完全に納得したわけではないだろうが、それでも考えてみるだけマシと判断したのか、天晴は満足したように頷いた。


「さて、それでは戻るとするか。もう日も暮れる。他の者達も修行を終える頃合いであろうよ」


 ふう、ようやく終わりか。こっちに着いたばっかりで修行に参加させられるとは思ってもいなかったけど、今日の出来事自体は役に立つ内容だ。だから損をしたわけではないし文句を言うようなことでもないんだけど、その分疲労感が凄まじいんだよな。


 でも今日はもう休むだけみたいだし、後は他の修行生と交流を深めるだけだ。

 そう考えると、修学旅行のような特別感が出てくる気がするから、少しだけ楽しみではある。


 さてそれじゃあ戻るとする……あれ? ここからどうやって戻るんだ?


 俺はこの場所に来るときに天満に攫われるようにしてここに来た。道をまともに通ってきたわけじゃないからここがどこなのかわからない。

 一応方向はわかってるつもりだけど、ここは山の中なんだし下手に歩けば迷子になるかもしれない。


 そうなると……俺はまた荷物のようにして運ばれなければならないんだろうか?



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