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助けたがりの英雄は普通に生きたい  作者: 農民ヤズー


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学校の対応

 ——◆◇◆◇——


 失踪者が出てからさらに一週間が経過したわけだが、やはりというべきか、再び失踪事件が起きた。


「また出たのか」

「でもなんか、今回は早くない?」

「早いな。多分味をしめたんじゃないか? 後は、結構簡単なんだなって調子に乗ってるか、か?」


 前回は二週間経ってからだったのに、今回は一週間で起きた。その違いは何だと考えるなら、向こうの手順が確立された、あるいは問題ないと判断されたか、もしくは学園の警備側がなめられているかだろうな。


 学園の警備って今どうなってるんだろうか? まだ今のところ先輩達から連絡は来てないけど、何かしらの対策は打ってるよな?


 今まで襲われたのはいずれも特待クラス以外の生徒達だったけど、こんな失踪事件が起きているような場所に自分たちの子供を預けておきたくないのはどの親も同じだろう。もしこのまま続くようなら、特待クラスの生徒の親達が黙っていないと思う。


 もしかしたら、今の時点でもなにか裏で騒いでいるのかもしれないけど、特待クラスの生徒に被害が出たらこれまでの比じゃないくらいに騒がしいことになるだろうな。


 そうならないように『上』の人たちも何かしら動いてるだろうけど……一回先輩に電話してみてもいいか?


「無駄に学校に残ってても危険だし、さっさと帰るか」


 俺達なら襲われても大丈夫だと思うけど、襲われないに越したことはない。

 今までは学園の敷地内で失踪が起きてるみたいだし、学園から出て家に帰ってしまったほうが今は安全だろう。

 先輩に聞くにしても、学園内にいるうちは連絡をしづらいし、やはりさっさと帰ってしまったほうがいいな。


「ざーんねーん。今日は生徒会があるの。兄さんに無理やり押し付けられた生徒会がね」


 あー、そういえば祈にはそれがあったか。俺は週一にあるかないかくらいの頻度だから楽でいいけど、祈は毎日活動があるんだった。


 特に、今の時期は襲撃騒ぎもあってやることが増えているのかもしれない。生徒が消えたなんて、同じ生徒のやることではない気もするけど、学内で起きたのだから生徒会が対応に当たるのは当然のことだろうし。


 でもまあ、なんにしてもだ。押しつけたとはいえ真面目にやってるようで良かった。


「へー。頑張ってるみたいで何よりだよ」

「すっごい他人事じゃん。むかつく~」

「でも、一応無理をさせたって自覚はあるんだけど、それなりにうまくやれてるようなら良かったよ」

「自覚があるんだったら、そもそも生徒会なんて入れなければよかったのに……」


 祈は不満そうに愚痴っているけど、俺としてはやっぱり祈を生徒会に入れたのは間違いではなかったと思っている。


 これで祈も他者に関わるようになったわけだし、〝普通の人間〟らしさっていうのを身に着けてくれればいいんだけどな。


「まあ、頑張ってくれ。お前が成長すれば、それは俺にとってすっげえ嬉しいことなんだからさ」

「……まあ、所属しちゃった以上はちゃんとやるけどね」


 祈は観念したように溜息を吐くと、そっぽを向きながらそう言った。こういうところは真面目というか、律儀だよな。流石は〝こいつ〟ってところだな。


「それじゃあ行くね。気をつけて帰ってね!」

「なんだったら終わるのを待ってようか?」

「いいよ別に。どうせ一人で帰るって言っても、私に危険なんてないし」


 そうだろうけど、あまり油断はしないでほしいんだけどな。

 けど、あいつなら大丈夫だろうという思いもあって、俺は教室から去っていく祈を見送ってからカバンを手にして席を立ちあがった。


 軽く教室を見回してみれば、もう教室の中にはほとんど人が残っていない。きっとみんな部活に行ったか、あるいは町へ繰り出すか何かしているんだろう。

 ちなみに、桐谷は真面目に剣術部として活動しているらしく、他の知人達も同じくだ。


 そんな中一人で帰ることを考えると、俺ももう少しまともな部活にでも入っておけばよかったか、とか、もう少し友人を作ればよかったか、なんて思わなくもない。


 けど、部活はスキルの使用が前提になっているところが多いから、万が一にでもボロを出さないようにやめておいた方が無難だ。


 友人も……このクラスで友人って結構難しいんだよな。俺達は寮生活じゃなくて通いだし、クラスメイト達はどこそこの資産家や歴史ある家門の出身だから身分が違うし、単純に話が合わない。俺も一般家庭の生まれとはいえ特殊な育ち方をしたからな。むしろ桐谷みたいに気楽に接してくれる友人が一人でもできただけ上等だと思う。

 一応桐谷以外にも、友達とまではいかないけど学園内で話をしてくれる相手くらいはいるしな。


 まあ今のところは現状に喜んでおくべきだろう。

 そう思って教室の外に出たのだが……


「ん? 星熊か。まだ帰ってなかったのか?」


 教室のドアを開けたところで丁度星熊と鉢合わせた。

 ずいぶん前に教室を出て行ったと思ったけど、なんだってまだこんなところにいるんだ?


「へ? あー、せいっちか。まーね。ちょっち生徒会に呼ばれたんだよねー。ってかまた星熊呼び?」

「あー、瞳子な。でも、生徒会? でもメンバーじゃないだろ?」


 生徒会の一年は九条と祈しかいないはずだ。それとも、あとから別枠で庶務とか雑用係で募集したんだろうか?


 なんて考えたが、それは違ったようで星熊が苦笑しながら教えてくれた。


「そーなんだけどね。例の生徒の失踪事件あるじゃん? あれって単なる失踪じゃなくって誰か犯人がいる、って噂聞いたことない?」

「その噂なら聞いたことがあるな」


 俺は今回の件が単なる失踪事件ではなく『クリフォト』関連の事件である可能性を教えられているが、学生たちはそこまでは知らない。

 ただ、これだけ連続してまったく関連のない生徒が失踪するのはおかしい、ってことで生徒達の間では誘拐事件じゃないかと噂されている。

 まあ、これだけ生徒の失踪が起こればそうなるよな。


「その犯人の対応で来てって頼まれちゃってさー。流石にこれを断るのはマズいかなって感じだから今向かってんるとこー」

「犯人への対応って、そんなの生徒のやることじゃないだろ。教師とか警備とかの仕事じゃないか?」


 本来なら警察組織のやることだ。ただ、この学園は日本にあるとはいえその立ち位置が微妙だからな。ほぼ中立というか無所属というか、日本はあくまでも管理を任されている……いや、押し付けられているだけだから、今回みたいに何か起こった際に下手に国の勢力を放り込むと他の国から面倒なことを言われる可能性がある。


 それに学園自体、捜査のためとはいえ外部の人間を簡単に入れられない規則になっている。

 だがそんな事情があるのは理解してるけど、もし本当に犯罪者集団の仕業だったら生徒に対応させるのは厳しいだろ。


「そっちはそっちでちゃんとやってるみたいだけど、全部をカバーできるわけでもないっしょ? だからうちら生徒の中からそこそこ使えそうなのを選んで軽い見回りとか調査っぽいことさせるみたい。ってかほんとーに犯人がいるって決まったわけじゃないし、うちらはそれを調べるための捜査って感じっぽいかな」


 犯人の確保じゃなくて捜査だけか……それならまあ平気か? でもなぁ……


「まあ、完全に警備しようと思ったら人では足りないだろうけど……それでも生徒の中からって危険じゃないか?」

「でもほら、うちって一応武門の家系っしょ? だから呼ばれんのも仕方ないかなー、ってね。それに、危険って言っても犯人がいたらぶっ倒すってわけじゃなくって、あくまでも通報するだけらしいし、平気っしょ」


 瞳子はそう言うと自信ありげに笑って見せた。

 まあ確かに、以前見たあの動きができる者が集まって調査をするんだったら、最低限生き残ることくらいはできるか。どうせ、クリフォトから誰か送り込まれたって言っても『祝福者』ってわけじゃないんだろうし。


「でもさ、あれだよね。その反応からするとせいっちってば呼ばれてないんしょ? せいっち強いのに呼ばないとかマジ人選ミスじゃん」

「まあ、妹は有名でも、俺は一応一般人枠だからな」


 少なくとも、生徒の中から戦える者を集めて何かをする、なんて状況でお呼びがかかるわけがない。

 学園での授業だってそれほど好成績を残したわけでもないんだし、そういう意味でも呼ばれる理由がない。


「んー、そーかもだけどさー……あっ。一緒に来る? うちが言えば一緒に見回ることくらいできると思うけど?」

「流石に呼ばれてもいないのに顔出すのは違うだろ。まあ、呼ばれたらその時には手を貸すさ。約束したしな」

「あー……それもそっか。じゃあなんかあったら呼ぶから、そん時はよろ~」


 そう言い残すと瞳子は手を振って去っていった。けど、その背中を見送っていてなんだか不安になってきた。本当に大丈夫なんだろうか? 何か起きたりは……しないよな?


「生徒を動員しての調査か……やっぱり、結構騒ぎになってるよな。早く解決すればいいんだけど……そううまくはいかないだろうなぁ」


 生徒達が捜索チームを運営したところでそうそう解決するとは思えない。ここはやっぱり、一回先輩に電話をして状況を確認してみた方がいいか。

 その情報があったところで俺が動くかどうかは別だけど、何か起きた際に何も知らないのとでは雲泥の差があるんだから。



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