祈との再会
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「それで、目的地はまだなの?」
「あと少しだ!」
ここは俺達が入った店と町はずれにある倉庫とを繋ぐための地下通路だ。最初の部屋にいた敵を倒して、道中で回避できる敵は回避して、遭遇した敵は倒しながら進んでいくとここにたどり着いたわけだが、この道は長距離を移動するために車でも通るんだろうか。この通路だけかなりの広さがある。
「この辺りね。広さに不満はあるけれど、まあいいわ」
「それじゃあ、頼めるか?」
「ええ。任せてちょうだい。それよりも、あなた達こそちゃんとやってちょうだいね」
通路の終端に近づいたところで、九条が足を止めたことで俺達も足を止める。
これがここに突入する前に話していた作戦だった。
ここみたいな真っすぐな通路では正面から進んでくるしかない。隠れる場所もなく、見通しのいい場所で九条が待ち構え、近づいてくる奴を片っ端から射抜くことで後方からの敵をすべて処理するというもの。
「ああ。分かってる」
「まっかせろよ! 正直逃げてばっかでまともに戦えてなかったからな」
「そーそー。うちも本気出せなくって結構ストレス溜まってんだよね」
そう話している間にも敵は俺達のことを追いかけてきているため、悠長に話していることはできない。
「そう。なら少しの間よろしく––––再演」
そう宣言した直後九条の手の中に光の弓が生まれ、更に詠唱を重ねていく毎に弓の先に光の矢が生成されていき、遂に敵が間近に迫ったと思うと––––光が放たれた。
通路を埋め尽くす一撃が今しがた俺達のやってきた通路に向けて放たれ、目が眩むほどの攻撃は通路から迫って来ていた敵全てを倒した。
「これで追いかけてくる敵は大体消えただろ」
「その代わり、私の体力も消えたわね……」
そう言って息を吐くと、九条は祝福を解除して弓を消した。
「ありがとうな。お疲れ。ゆっくり休んでくれって言えないところが申し訳ないけど……」
「流石にこんなところで休むわけにはいかないものね」
九条は疲れているだろうけど、ここで休んでいるわけにはいかない。申し訳ないけど、まだもうしばらく走ってもらうことになる。
それを理解しているのか九条も承知しているとばかりに頷き……
「でも、私はここでリタイアさせてもらうわ」
「えっ!? ちょっと、桜! リタイアって何言ってんの!?」
突然の九条の言葉に藤堂が驚いたように目を見開いて叫んだが、九条の言葉には俺も驚かずにはいられなかった。
だって、突入前の話しではそんなこと言ってなかったはずなのに……
「仕方ないでしょう? 私は今ので力を使い果たしたもの。少し休めば回復するといっても、それは全力には程遠い程度でしかないわ。そんな状態で敵の拠点の奥に行こうとすれば、必ず足手まといになる。かといってここで何十分も休ませてほしいとも言えない。となると、私を置いて他の人たちが祈さんを助けるために進むのが合理的よ。そうでしょう?」
「そうかもしんないけど……でもっ!」
「突入前からこうするつもりだったのよ。もちろん、状況次第ではそのままついていくつもりだったけれど、今の自分の状態から考えるとそれは無理だもの。でも……あなたはここで止まったりはしないでしょう?」
九条は疲れを感じさせる表情で真っすぐ俺のことを見つめながら問いかけてきた。
そんな言葉に俺は……
「……分かった。ここまでありがとうな。後ろからの敵はさっきので大体かたずいたと思うけど、まだ外からの援軍が来るかもしれないし、一人で残していくのは不安だから藤堂も残していく。気をつけろよ」
九条を置いて先に行くことにした。
本人が言っているし、状況的に仕方ないのかもしれない。けど、それでも見捨てていくのは本当なんだから薄情と言われるかもしれない。
それでも、俺は先に進む。祈を助けるためにここに来たんだから。
「本当に妹想いね。もう少しくらい悩んでくれてもいいと思わないかしら?」
「悩みたいところだけど、そんなことができないように神様から祝われてるんでな」
「そうだったわね」
中まである九条を切り捨てる判断をした俺の言葉に九条は苦笑いをしたが、すぐに表情を切り替えて真剣なまなざしで見つめてきた。
「言うまでもないと思うけれど、祈さんを絶対に助けてちょうだい。そして、二人そろって私のクランに入ってもらうわよ」
「俺がクランに入るのはいいけど、祈がどうするかはわからないぞ。結局はあいつ次第だからな」
「なら大丈夫よ。きっと祈さんはあなたと同じ場所に所属したいって思うはずだから。だから、私の未来のためにも、絶対に助けなさい」
「お前の未来のためじゃないけど、俺のために祈は助け出すさ。––––それじゃあ、気をつけろよ」
それだけ言うと、俺は九条達に背を向けて走り出した。
その後少し間をおいて桐谷と瞳子が走ってくる足音が聞こえ、隣に並んだが、二人はおいていく九条達のことが心配なのか不安そうに後ろを見ながら話しかけてきた。
「ねえせいっち。マジで二人を置いてくの?」
「流石に二人だけってのはマズいんじゃねえか?」
そうだな。いくら敵を倒したって言っても、ここは敵地なんだ。そんな中に疲弊している状態の人間を置いていくのは安全だとは言えない。
「危険はあるだろうな。でも、さっきので後ろからくる奴は大体一掃したはずだし、援軍が来たとしてもこの通路なら九条にとって有利に働く。藤堂もいるんだし、あいつが足止めしている間に九条が射抜けばそれで大体終わるはずだ」
「つってもよ、それが間に合わねえくらいの数が攻めてきたらどうすんだ?」
「……その時はその時だ。あいつだって、それくらい理解してあそこに残ったはずだ」
「それって……!」
瞳子が目を見開き、一瞬後ろに戻ろうとでも考えたのかわずかに体勢を崩したが、すぐに追いかけてきて再び横に並んだ。
瞳子は驚いたようだが、九条はちゃんと理解したうえでああ言っていたはずだ。理解したうえで、自分は良いから祈を助けろと言ったんだ。
だから俺は迷わない。
「それよりも、俺達のするべきことをするぞ。祈を助け出す。そのついでに、ここから先にいる敵は一人も逃さずに倒せ。そうすることで、俺達の後ろを抜けて九条達に迫る敵をなくすことができる。それだけであいつらの生存率は格段に上がるだろ」
残ることも退くこともできないとなれば、俺達にできることがあるとしたらそれくらいだ。
「……はあ。とにかく、全員ぶっ倒せばいいってわけだな」
「じゃあ、最初っからやることなんて変わんないじゃん」
「そうだな。精々今までよりも見逃しに気を付けようってくらいだ」
見逃した敵がたとえ一人だけだったとしても、そのせいで九条達は前方からの敵を倒している最中に挟撃を受けることになるかもしれない。だから、急ぎつつも敵をすべて倒していくのがあいつらに対する最大限の支援になる。
「あの二人は派手にやったんだし、うちらが見逃しなんてしてたら恰好悪すぎじゃん。見逃しなんて絶対にしないから」
そんなふうに話しているうちに通路を抜け、先ほどまでとは違ってちゃんとした建物らしい場所に出たが、そこにも敵が待っていた。
「なんて言ってっけど、敵さんかなり多いみたいだぞ」
「いーじゃん。全部ぶっ飛ばせば結果は同じっしょ」
「はっ! そうだな。おい誠司! お前はあんまり力使うなよ。俺達も倒れるつもりはねえけど、誰かひとり全力で戦えるだけの力を残しておいた方がいいだろ。そんで残すべきは、俺達よりもお前だからな。……まああれだ。ここは俺に任せてろ!」
「何言ってんの! 俺、じゃなくて俺達でしょ!」
そんなありがたい言葉と共に桐谷と瞳子は今まで以上に敵への攻撃を激しくしていき、俺達は敵の拠点を突き進んでいく。
「なんか向こうからすげえ音がするぞ!」
「何? なんかと戦ってるわけ!?」
しばらく敵を倒しながら建物の中を進んでいくと、突然轟音が聞こえてきた。
少し無茶かもしれないが、先輩の目を乱暴に操って騒ぎが起こっている場所を大雑把に探していく。
すると、その騒ぎが起こっている場所を見つけ、そこで暴れまわっている祈の姿を見つけることができた。
その喜びを抑えつつ、祈が戦っているのなら攻撃に巻き込まれないようにしなければならないと先輩から借りた目を消して、その場所へと全力で走っていく。
そうして走ること数分。俺は先ほど見つけた部屋へと辿り着いた。
「ここか!?」
そう叫びながら入った部屋の中で、俺はついに祈りを見つけることができた。
「祈!」
ただし、首を切り落とされた状態だったが。




