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第39話 甘くて幸福な時間

 リア様が獣の姿になった後で、酷く眠くて──瞼を開けることができなかった。

 深く、深く眠る。

 名前が変わったことで、私の足下が大きく揺らいでたくさんの声が響く。

 それは怖いほど仄暗く、怨嗟の声だった。


「『黄金の林檎』だ! 永遠の命を」

「心臓に『黄金の林檎』はあるのか?」

「いや腹部だ。それを手に入れれば神になれる」

「いいや世界中の叡智を!」

「──っ!」


 ただ怖くて耳を閉ざして、自分の体を抱きしめて耐えた。

 リア様の名前を何度も呼んで、自分を鼓舞する。

 でももしリア様が来なかったら?

 そんな不安に押し潰されそうになる。暗くて怖い。


「リア様……」

「ユティア」


 切羽詰まったけれど、私のことを思ってくれる声が聞こえた瞬間、世界が真っ白な百合の花畑に変わった。

 私って、思っていた以上に単純だったのですね。

 リア様がいるだけで、こんなに世界は変わってしまうのだから。怖かった気持ちなど、あっという間に溶けて消えてしまった。



 ***



「んんっ……」

「ユティア!」


 リア様は私の手を握ってくれて、それが温かくて──もっと温もりが欲しくて手を広げる。


「……リア様。いつものように、抱きしめてくださいませんか?」

「ユティア、私の……獣の姿を見ても……そう言ってくれるのかい?」


 酷く落ち込んだ顔をして、今にも大粒の涙をこぼしそうな勢いだ。

 リア様的に、あの姿は嫌なのかしら?


「え? 大変モフモフして、とても素敵でしたわ。あんな姿があるなんて知りませんでしたけど、落ち着いたら獣の姿を見せて頂けませんか? モフモフに抱きつきたいですし、あの角にも触れてみたいですわ」

「え、あ。……嫌わないかい? あんな姿を見て」

「あら、あんなに神秘的で美しい獣を私は知りませんわ。それに」

「それに?」

「どんな姿でも、リア様はリア様ですわ」

「ユティア!!」


 ガバッと私を抱きしめてぎゅうっと腕の中に閉じ込める。シトラスの香りに包まれて安心したのもつかの間で──、その日はリア様にたくさん愛されまくって、美味しく食べられたのだった。



 後日、獣の姿になったリア様は砂海豹とはまた違った神々しさと白さを誇り、間違いなく最高のモフモフを感じさせた。

 毛並みはモフモフで最高級の手触りだわ。シトラスの香り意外にも、少し植物の良い香りがして好き。思わず顔を埋めてしまう。だって素敵な香りなんだもの。


「ユティアっ」

「リア様、毛並みが最高ですわ。ずっとこうしていたいです……」


 獣の姿のリア様は全長16フィートと、馬車よりも大きいのだ。前脚は蹄ではなく狼の爪と肉球がある。ぷにぷにして最高すぎる!


「リア様、背中に乗ってみても?」

「良いけれど転ばないようにするんだよ。それに角は触れても良いけれど……あとで責任を取って貰うから……」

「角は特別なのですか?」

「……そんな感じかな?」


 樹木のように天に伸びている角はとても美しくて、白い蔦も触れてみたかったのだ。そっと撫でてキスをするぐらいは良いだろう、と思っていたのだが、それが間違いだった。


 神獣種の角に触れるのは伴侶のみの特権で「貴方に全てを捧げます」という意味らしく、さらに角にキスする行為は「昼も夜も貴方と共にありたい」という最大級の求愛だとか。

 そういうことは、もっと早く教えておいて欲しかったわ。

 その結果、リア様が満足するまで離してくれなかった。それはある意味、幸福すぎる時間だったけれど。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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