表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/41

第33話 迷宮での出会い

 

 ばさあああ、と焦げ茶の羽根を広げて、コカトリスも驚愕の声を上げた──が、背に乗った私を振り落とそうとか、攻撃するような反応は見せなかった。


「コケコケケケケ!」


 羽根を広げてバサバサと何かを訴えている。尾の蛇は「シュー」と舌を出しつつも、降参というか危害を加えないというポーズを取っていた。あと泣きそうに目を潤ませている。

 とっても既視感を覚えた。

 なんだかリア様と出会った頃のように、人懐っこい──というか人間っぽい?


「コケコケケケケ……」


 敵じゃないと一生懸命訴えているようだわ。もしかして……。


「魔女様の怒りを買って呪われてしまったの?」

「コケ! コケコケ!!」

「シュー!」


 もの凄い勢いで鶏の頭と蛇がブンブンと頷いた。まさかのビンゴ!

 よく見ると今まで見てきたコカトリスと違って、焦げ茶の羽根は艶々だし毛もモフモフしている。鶏の黄色い嘴、鶏冠は黄金色のように見えなくもない。胴体は少し薄緑で、尾の蛇はよく見たらエメラルドグリーンのようにキラキラしている。

 なんだか可愛い。あとで頭を撫でさせてもらえないだろうか。


「まあ。それなら何とかなるかもしれません」

「コケ!」

「シュウ!」

「私が料理を作ると呪いが解けるらしく、貴方と同じように魔女様に呪われた方を知っているのですよ」

「コケコッコ!」


 リア様、泣いていないかしら?

 私が居ないことに気付いて、悲しんでいたら大変だわ。特にモフモフの毛並みの砂海豹姿で泣いていたら、心臓が痛い。

 早く戻って甘い物、そうだわ。さっき食べ損ねたマカロンを作ってあげなきゃ!

 リア様の元に戻って、美味しいものを食べさせたい──だなんて、なんだか気が抜けた理由だけれど、私には大事な事だわ。


「コカトリスさんは、ここに住んでいるの?」


 私の問いに、コカトリスさんは首を横に振った。周りをよく見渡すと、地下通路が続いており、道が分かれているなど絵物語の迷宮のよう。幸いなことに天井は16フォートほどあって、中々に高い。王城の下にこんな場所、あったかしら?

 それとも王族専用の脱出通路?

 煉瓦の壁に鋭い蹴爪で文字を書き込んでいく。思ったよりも達筆だった。しかもお母様の手帳と同じ日ノ本言葉(異世界言語)だわ!


「ええっと、『王城の地下を邪竜が迷宮化(ダンジョン)にしてしまって、気に入らない人間や呪われた者はここに落とされる。邪竜はこの国を迷宮化(ダンジョン)して、自分の縄張りにするつもりのようだ。すでに王族は魔力を全て奪われ亡者(アンデッド)になって、この国に縛られている』……じゃあ、さっき私が会ったアドルフ様は……」


 それだけじゃない。王妃様や国王様、聖女エリー様もみんな邪竜に殺されてしまった?

 そういえば魔女様も、魂を繋げてうんちゃらって言っていたわ。

 思っていた以上に、国の状況は良くないみたい。でも私にできるのは、この迷宮(ダンジョン)を無事に脱出してリア様と合流することだわ。


 シシンたちを召喚したほうが早いかもしれないけれど、そうすると邪竜に気付かれるわよね。シシンたちを頼るのは最終手段にしましょう!

 私が思考している間に、ガリガリとコカトリスさんは文字を書き続ける。


『自分は宵の魔女の求婚を断ったため、この姿なんだ。元の姿になるのなら助かる。魔法と戦闘に関しては任せて欲しい。ただ料理などは呪いによって、できないみたい』


 魔女様からの求愛を断った。

 眉を顰めるワードが出てきたので、一つ確認をしておこう。


「つかぬことを伺いますが、魔女様の求婚をどのように断ったのですか?」

「コケ?」

「私の呪われた方は、魔女様たちにプロポーズをして呪われたので……」

「コケケ……」


 ガリガリと文字を書き足した。そこには『自分には好いた人がいる。料理を褒めてくれたことは嬉しいが、君との結婚はできない。申し訳ない』と──まともだった。


「まともです……」

「コケケ!」


 当然だということを言っているのだろう。リア様とはまた違ったケースなのかもしれないわ。さっきアドルフ様にプロポーズをされた時に断ったら憤慨していた魔女様がいたけれど、もしかしたらその方が宵闇の魔女様?

 勇気を出して告白したのに、振られたらやっぱり悲しい。

 私だってリア様に同じことされたら──泣くわ。でも好きじゃない人に同じようなことをされたら、困ってしまうのも、わかる。


 お互いに好きになるって状況は本当に奇跡のようで、難しい。

 改めてそう思うと、リア様に会いたい気持ちが膨らんでいく。リア様に会いたい。ギュッと抱きしめて、安心したいわ。

 そのためにも迷宮(ダンジョン)を抜けたいと!


 そう思って前に進もうとした矢先、ズシン、ズシンと牛頭人身の怪物が巨大な斧を持って現れる。

 あ。私、無事にリア様の元に帰れるかしら?


 ──ゴガアアアアアアアアアアアア!


「きゃあああああ!」

「コケ!!」

「シャ!」


 叫ぶ私に、コカトリスさんは目を輝かせて跳躍。蹴爪でミノタウルスの斧を弾き、もう片方の蹴爪で顔を蹴り飛ばす。体勢を崩すミノタウルスに蛇が毒を浴びせて、一瞬で頭が溶けかけたところでコカトリスの鋭い爪が首を切断。

 あっという間に、ミノタウルスの頭部と体が床に倒れた。


「ひゃっ……思った以上にコカトリスさんが強くて助かりました」

「コケコケ!」


 二足歩行で歩いていたけれど、四足獣に近く食用獣の牛とあまり変わらない。色と凶暴さぐらいだろうか。とりあえずこれで食材ゲットである。

 ミノタウルスはとても高価なので、まさかここで食材が手に入るとは思っていなかったわ。


楽しんでいただけたのなら幸いです。

下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

平凡な令嬢ですが、旦那様は溺愛です!?~地味なんて言わせません!~アンソロジーコミック
「婚約破棄したので、もう毎日卵かけご飯は食べられませんよ?」 漫画:鈴よひ 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

【単行本】コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(↓書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください↓)

https://potofu.me/asagikana123

html>

訳あり令嬢でしたが、溺愛されて今では幸せです アンソロジーコミック 7巻 (ZERO-SUMコミックス) コミック – 2024/10/31
「初めまして旦那様。約束通り離縁してください ~溺愛してくる儚げイケメン将軍の妻なんて無理です~」 漫画:九十九万里 原作:あさぎかな

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

コミカライズ決定【第一部】死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! 〜死亡フラグを折るたびに溺愛されてます〜
エブリスタ(漫画:ハルキィ 様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

攫われ姫は、拗らせ騎士の偏愛に悩む
アマゾナイトノベルズ(イラスト:孫之手ランプ様)

(書籍詳細は著者Webサイトをご覧ください)

html>

『バッドエンド確定したけど悪役令嬢はオネエ系魔王に愛されながら悠々自適を満喫します』
エンジェライト文庫(イラスト:史歩先生様)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ