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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第五章 葉月(八月)

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92.八月八日 夕方 大蛇舞祭

 今年もこの日がやって来た。そう、八岐神社最大の神事である大蛇舞祭(おろちまいまつり)である。今年は六田家の三女である(もとむ)以外には村内に八歳となった子はいない。


 大蛇舞祭で行われる八岐贄(やまたにえ)の儀は、八家の子には酷な儀式である。一般の村の子であれば儀式は簡略化されたものとなり痛みを感じることはない。それでも奇怪な祭りであるため八歳の(わっぱ)にとっては恐怖を感じるもので、一般村民の子であっても大多数は泣き叫び助けを請うことになる。


 なんせ、腕と背中に蛇模様の朱書きを行い、それを筆頭当主が模造刀でなぞっていくのだから恐ろしいだろう。それに儀式の際には八畑神社に用意された儀式場に篝火(かかりび)が焚かれ村中から人々が集まってくる。そんな異様な雰囲気の中で八歳の童が平常心でいられるはずがない。


 しかし八家の子であれば、その程度で済むなら土下座でもなんでもするはずだ。なにせ一般村民との違いは明確で、まずは贄となる八歳になった子の目の前に八匹の蛇を置き、贄当人の手でその尾を斬り落とさせる。


 次に八家当主の内、七名が血の流れる尾を用いて贄の腕へ紋様を描く。続いて贄の親である当主が背中へと紋様を描くと言う手順だ。ここまでの準備が整ってからが本番で、朱書きの代わりに蛇の血で描かれた紋様を、呼士の持つ神刃(かみやいば)形代(かたしろ)でなぞっていくのだ。


 それでも今年儀式を受ける六田求にとっては僅かながら安心材料がある。それは六田家の神刃が(つち)という鈍器だからである。


 ちなみに当主継承の儀の場合は、呼士による紋様なぞりではなく、当主自らが体内から呼び出した実体の神刃を用いて紋様へ刃を入れていく。もちろん腕と背中には血が流れ痛みも相当なものだ。


 だが不思議なことに儀式を終えて数日もすれば傷はすっかりを消え跡も残らない。その代わりと言うわけではないが、巫としての力を用いる際には施した紋様が浮かび上がってくる。


 ちなみに継承の儀を受ける者は、八岐贄となって概ね三十年前後は修行してからとなるため三十代、四十代が中心と言うことになる。それでも叫ぶのを堪えて涙を流すほどの苦痛なのだ。長らく不在だった七草家を、十六歳の若さと言う特例で当主継承したドロシーは、さすがに痛みで泣き叫び最後は気を失ったほどである。


 比べるものでもないが、八歳で当主となった八早月は涙を流すどころか、表情一つ変える事もなく儀式を乗り切ったのがどれだけ異常だったのかは誰もが知るところであり、おそらく今後同じことは起こらないだろうと今でも口を揃えるほどだ。


 そして今回は例外中の例外で、村外の人間であり十三歳の寒鳴綾乃(さむなき あやの)も儀を受けることとなっている。しかも行われるのは他の血族である稲荷神社に準ずる儀式なのだ。


 陽が傾きかけた頃から村人たちが家を出て八岐隠者へと向かい始めた。いよいよ大蛇舞祭の開始である。ちなみに祭りの名前に入っている割には誰も舞わないし、それに近い儀式の所作もない。


 とにかく連絡を受けた当主たちは分担して念のための警戒に当たる。人が多く集まると善意悪意に限らず行動には人の念が込められる。するとそこへ巣食おうと妖が近づいてくるのは当然のことなのだ。


 精神的繋がりが強い集団であればあるほど、些細な切っ掛けにより賛美や暴動、悲哀や自決等の集団催眠(マインドコントロール)にかかったような行動を起こすことがある。そんなことが起こらないよう妖を早期発見するため、双宗臣人と三神耕太郎、それに七草ドロシーが警戒に当たっている。


 八岐神社の境内に最初の村人が現れると、それを合図としたように次々と人が集まってくる。老若男女問わず山道を登ってくるので、それらを巫女たちが奥から詰めるように誘導していく。


 しばらくすると儀式場となる神社前の空き地は人で溢れかえった。と言っても百人に満たない程度ではある。前回綾乃の祓いを行った時のように藁が撒かれ、中心にはやはり絹の敷物が拡げられている。


 中心には宮司の八畑由布鉄(やはた ゆうてつ)、その後ろには八家当主が並び贄の入場を待つ。ここで清めを終えた六田求がゆっくりと歩み寄ってきて敷物へ膝をついて祈りを捧ぐべく手を合わせた。


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