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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第五章 葉月(八月)

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85.八月四日 午後 解読

 先日、初崎宿(はつさき やどり)が京都の旧家から持ちかえってきた古文書の写真には参考になりそうなことがいくつか書かれていた。これは八家当主たちが手分けして解読したことで判明したものである。


「それにしても写真に撮ってくるとは考えましたなぁ。

 ワシはいまだにこのすまほというものがうまく扱えんわい」


「どちらかと言うと私も耕太郎さん寄りですね。

 この間もなんで手紙を送ってくるのかと叱られてしまいましたから。

 一瞬で連絡がつく手段があることに未だ慣れることができません」


「筆頭は相変わらず機械に弱いですなぁ。

 まあこうして印刷してしまうのが一番と言うわけです」


 宿の言う通り、結局は写真に撮った古文書を人数分印刷し、全員が顔を突き合わせて広げているのだ。それでも印刷物へ直接書き込みもできて効率は悪くないのかもしれない。


「この幼子へ施すと言う狐参りの儀というものが良さそうですね。

 問題は稲荷の(かんなぎ)でなくとも効果が得られるかどうかでしょう。

 ですが、常世(とこよ)へと繋げることができれば良いのなら再び扉を開くだけ。

 最初からこれがわかっていれば、綾乃さんに痛い思いをさせずに済んだかもと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです」


「いやいや、これだけでは妖憑きを祓うことが出来なかったでしょう?

 それでは意味がありませんから気にしないようにしてくださいませ」


「そう、そうでしたね、まず憑き物を落とすことが前提にあったのでした。

 もし今回追加で行う着で、さらなる覚醒となれば一安心ですね。

 ―― ふと思ったのですが、この儀を室伏家の方に行えば復刻できるのでは?」


「それは僕もご当主へ進言してみたのですがねぇ。

 すでにお役目から退いて久しいこともあり、今は静かに暮らしたいとのこと。

 家族も詳しくは知らないようですから、今後の為にもそっとしておきたいと考えるのも無理は有りません」


「もっともな考えでしょうね。

 今はすでに一般人として幸せであるならそれでいいのです。

 もしお役目を放棄した家系だと負い目を感じていたらとの考えは浅はかでした。

 綾乃さんは普通のご家庭ですから、お役目が与えられることは無く安心ですね」


「それで儀式の日程はどうされますか?

 今年は櫻殿のところの(もとむ)だけで村にも八歳の子はいないそうです。

 形式は異なりますが、綾乃殿も八日に行うと都合はよろしいかと」


「そうですね、ご両親へはそのようにお伝えしていますし予定通り行いましょう。

 問題はこの面描きですね、文献通りなら師が施すのでしょうが……

 私がやってもきちんと効果があるのか不安がありますね」


「そうですなぁ、こればかりはやってみないとわかりませんでしょう。

 筆頭には八岐大蛇様が宿っておりますゆえ、純粋な巫の力と言えぬかも。

 ですが常世へ働きかける役目が果たせればよいのなら問題ないのでは?」


「では今この場で試してみますか?

 朱書きで狐面を描き扉を開けてお狐様を呼んでみるのはどうでしょうか。

 上手くいけば綾乃さんの助けをお願いできるかもしれません」


「ちょっ、ちょっと筆頭!? 本気ですか?

 もしやるなら表で結界を張ってからにしましょう。

 先日の(ぬえ)のような大妖(たいよう)が出て来ては困りますゆえ」


「ふふふ、私にそんな大層な力はありませんよ?

 せいぜい大人のお狐様でしょう。

 しかし誤って逃げ出してしまうと困りますから結界は張ることにしましょう。

 耕太郎さん、櫻さん、結界をお願いできますか?

 宿おじさまは私が倒れた時の始末をお願いします。

 臣人さん、中さん、ドリーは、その…… 暴走したらお願いしますね」


 呼び出した霊獣が暴走するなど考えたくもなかったが、もしもがあり得ると八早月が考えているなら警戒せざるを得ない。中と臣人、それにドロシーはそれぞれの呼士を顕現させその時に備えた。


 八早月が和紙へ狐面の朱書きを行い準備を済ますと、いつものように常世への扉を開くために祈りを捧げはじめた。しばらくすると両腕が輝きをまとった蛇の姿に変わり、その腕を地面へ置いた朱書きの狐面へと掲げる。


 そのまま両の(たなごころ)を狐面へ押し付けてからゆっくりと開いていくと、朱で描かれた狐の顔が光りゆるやかに点滅を始めた。その点滅が段々早くなり完全に点灯した状態になると、光の帯が立ち上り高さ数メーターの狐面を形作っていた。


「気配は隠せませんよ? 出ていらっしゃい。

 こちらには危害を加える意図はありませんから安心なさい」


 周囲を囲む呼士たちが万一の事態に備え体を強張らせると、八早月はそれを制止するように右手のひらを地面へと向けた。警戒を解いた戦士たちに安心したのか、光の帯が何か別の形へと変化していく。


 光が収まり最終的に現れたのは、着物姿の美しい女性だったのだが、その尻には狐の尾が二本生えていた。


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