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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第四章 文月(七月)

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78.七月二十六日 午後 女子力

 昨日の朝は、一番最後に起きてきた夢路が二日酔いだと言って頭を押さえていたので思わずみんなで笑ってしまい、真相を知った夢路に酷く怒られてしまった。


 そもそもなぜお堅い八早月(やよい)がそんな悪戯をしたのかと言えば、みなへ出すつもりで用意した梅のはちみつ漬けを見た瞬間に、幼いころ初崎宿(はつさき やどり)に同じことで担がれたことを思い出したからであった。


 そんな被害者である夢路のリクエストで日中は山菜取りへと出向き、その後は玉枝に教わりながらみんなで山菜料理を楽しんだ。特に昼食で房枝がそばがき(・・・・)を作ってくれて、山菜の天ぷらと一緒に味わえたことに全員がとても満足していたし、それを見た房枝と玉枝の老姉妹は、自分の孫を見ているように嬉しそうだった。


 他にはなにか特別なことなど無かったが、仲の良い友人と過ごす休日は誰にとっても特別に感じられ、妙に色づいてキラキラと輝いた一日だったと言えよう。夜は例によっておしゃべりに興じていたのだが、未成熟な少女たちではガールズトークなどとはとても言えず、言うなればキッズトーク程度の可愛いお話会だ。



 そして本日は川へ行こうと言っていたのだが、天気が怪しげなため取りやめて夏休みの課題である写生をやってしまおうと言うことになった。幸い題材に出来そうな風景はそこかしこにあるわけで選択肢には困らない。四人は家のすぐそばをうろうろしてから、思い思いの場所へ陣取りデッサンを始める。


 人目が途切れたところで真宵(まよい)がうっすらと姿を表し、念話を用いて八早月へ話しかけてくる。どうやら気になることがあるようだ。


『八早月様、先ほどから、というより一昨日からずっとなのですが……

 あの子狐がずっと綾乃殿の後ろをついて回っておりますね。

 誰にも見えてはいないのでしょうが、当人の体力は大丈夫なのでしょうか』


『それなのですけど、どうやら私たちとは根本的に異なっているようですね。

 私が考えるに、護衛をするため受動的に現れているのでしょう。

 ですので主である綾乃さんの力を使ってはいないと思われます。

 恐らく御神子(みかんこ)高岳(こうだけ)さんが連れていた神翼(かんばね)も同じではないでしょうか』


『なるほど、我々呼士(よびし)とは違い、守護獣のようなものと。

 しかしあのような愛らしい姿の獣が(あやかし)と戦うことができるのでしょうか』


『姿が見えていなかっただけで、今までも存在していたのでしょうね。

 報告にあった妖の(むくろ)はもしかしたらあの子の手柄かもしれませんよ?』


 こうして見ている今も綾乃をちょこまかと追いかけ護衛(・・)を続けている子狐の存在が、これまでの謎をいくつも明らかにしたと言える。ただし、その力は未知数だし、骸を残す程度しか力が無いと考えれば過大な期待はできまい。


 まあ綾乃の場合は身を護れれば十分なのだし、そもそも体内に眠っていた妖とほぼ同様だった力は巫と同じ系統のものへと変わっている。今の状態ならば妖が集まってくることはなく、現に儀式が終わってからは綾乃の周囲に悪しき気配はない。


 その様子に安心しながらデッサンまでを終わらせた八早月は、空気がヒンヤリしてきたことを感じ取り、天気が変わることを予感した。雨になるとやることが限られてしまう。そんな心配を払拭するように房枝が鍋を抱えてやって来た。


「お嬢様、枝豆が()だりましたぁよぉ。

 まだあっついですけど雨が落ちてきましたしひと息入れるとよろしいかなぁ」


「房枝さん、ありがとうございます。

 とてもいいタイミングでうれしいわね。

 お昼が軽かったから小腹が空いていたんだもの」


「ほいじゃ皆さんで楽しんで下さいねぇ。

 足りなければ芋もありますからおっしゃってください」


「ええ、本当にいつもありがとう。

 みんなー、おやつにしませんか?」


 細かい雨粒が落ちて来て皆が避難してくるところでおやつを出すとは、さすが長く櫛田家に仕えてくれている房枝だ。いつも八早月のことを気にかけており、様子と天気を見ながら用意しておいた枝豆を出す機会を図っていたのだろう。


 わずかに雨を受けながら濡れ縁に並び枝豆を摘まむ少女たち。綾乃だけ一つ上の中二だが、残り三人は中学一年でほぼ同い年だ。だが見比べるとそこそこ違いがあった。


「この並び方は何か意図があったのですか?

 私、美晴さん、夢路さん、綾乃さんと並ぶと、その、目立つわね……」


「ちょっと、アタシは思ってたけど言わなかったのになんで!?

 綾ちゃんはまだ年上だからあきらめもつくけどさ。

 八早月ちゃんといい勝負なのは正直微妙な気持ちになるなぁ」


「それさぁ、どちらかって言うと男子目線の価値観じゃない?

 私は体育とかでチラチラ見られていい気分じゃないよ?」


「わかるー、私も去年はそうでも無かったけど今年は視線が気になるもん。

 学校変わったら男子の層が大分違くてホッとしたよ。

 やっぱり私立は生徒のレベルが高いって感じ」


「レベルってどう違うの? 頭がいいとかってことじゃないんでしょ?

 久野中ってどんな感じだった? 金井中はいじめとか多くてあんま良くないらしいんだよねぇ」


「久野中も似たようなもんかな、去年なんて教師による盗撮事件があったんだよ?

 ちょっと信じらんなくて、保護者説明会は大荒れだったってさ」


「ひどっ! そんな事件がホントにあるなんてビックリだよ。

 ニュースでしか見ないようなことかと思ってたなぁ」


 話が大分それていったが、どうやらみんなは女性らしいサイズ的なことを言っているようだと八早月は悟っていた。しかし本当は自分が小学生時代の短パンにTシャツと言う幼い格好をしていたことを気にしての発言である。


 美晴はジーンズにブラウス、夢路はフリルのついたショート丈のワンピース、綾乃は丈の長めなセーラーデザインのワンピースだったので、いわゆる女子力順に並んでいると言いたかった。


 だが確かにサイズ順にもなっていたのは事実だと、やや投げやりな気持ちで口の中へ枝豆を飛ばしていた。


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