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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第四章 文月(七月)

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77.七月二十四日 夜半 悪行

「はいこれ、あんまり濃くするよりも薄めでさっぱり飲んだ方がいいと思うわ。

 油っこいものにもよく合うんだから」


 八早月がそう言いながらお盆に乗せた茶ポットを運んでくると、全員がまさか本当に!? と言った様子で驚いている。それもそのはず、ガラスを通して見えているのは琥珀色の液体と梅の実だったのだから。


「ちょっとまって、いくら夏休みだからと言っても梅酒はまずいと思うよ?

 これって八早月ちゃんちで漬けたやつなんでしょ?

 勝手に飲んだら怒られちゃうよ……」


「まあまあ、私はしょっちゅう飲んでいるから大丈夫よ。

 何度か飲めば慣れてくるし、まずは飲んでみてね」


 そう言って、八早月は氷を入れたグラスへと梅酒(・・)を少量注ぐ。分量で言えばシングルと言ったところだろうか。さらに別に用意してあった炭酸水を加えてマドラーで良く混ぜていくと、グラスの中には薄まった琥珀色の(もや)が光を反射しながら漂っている。


「さあどうぞ、一気に飲んだらダメよ? 一口ずつ味わって飲んでみて。

 おかわりも出来るから焦らなくていいんだからね」


「う、うん…… じゃあいただきます……」


 年長者の綾乃が恐る恐るグラスを傾け一口分飲みこんだ。すると――


「おいしい! さっぱりしてるけど梅の風味と甘さが口の中で広がるわね!

 それに炭酸がシュワシュワするとポテチの油がすっきりする!」


 それを聞いた美晴と夢路も次々に口をつける。すると同じように目を丸くしながら味わいつつ、ポテチ、梅酒、ポテチ、梅酒、と繰り返している。あっという間に飲み干してしまうとおかわりを要求し、八早月は笑いながら追加してあげるのだった。


「あまり勢いよく飲んでると酔っぱらっちゃうから注意してね。

 下手をすると急性アルコール中毒で倒れてしまうことだってあるんだから」


「えええ!? こんなにおいしいのに!?

 残念だけどゆっくり味わうことにする……」


「私、お酒って初めて飲んだけど意外になんともないわね。

 両親はお酒飲まないんだけどなぁ」


 美晴と綾乃は何ともないらしく、おいしそうに味わいながら女子中学生たちの晩酌(・・)は続く。しかししばらくすると様子がおかしくなるものが現れた。


「ハル、八早月ちゃん、綾ちゃん…… 私なんだか火照ってきちゃった。

 もう酔っぱらっちゃったかもしれないよぉ……

 んぐっ、この一杯飲み終わったら先に横になるねぇ……」


 そう言い終わったかどうかと言うくらいでうとうとし始めたので、美晴がグラスを受け取って布団の上へと連れて行く。するとそのまま横になりすぐに寝息をたて始めてしまった。


 夢路に布団を掛け寝かしつけた後、八早月が胸元へ風を送るようにパタパタしながら息を大きく吐く。まさか夢路が寝てしまうとは思ってもいなかったのだ。とは言え美晴も目元が怪しくなってきているので、やはり山道を歩いて来たのがよほど堪えたらしい。


「美晴さんは大丈夫? 眠かったら遠慮なくどうぞ?

 今日はたくさん歩いたから疲れたでしょう?」


「うん、それもあるんだけど、これって本当に梅酒なの?

 アタシ、眠いんだか酔っぱらってるんだかわからなくなってきちゃったよ……」


「うふふ、夢路さんはどうだったのでしょうね。

 もちろんこれは本物の梅、を使ったはちみつ漬けよ?

 すっきりしてしつこくない甘さでおいしいでしょ?」


「やっぱりそうよね、私は一口目でわかったけど面白いから言わなかったのよね。

 夢ちゃんは本当の梅酒だと思って飲んでたっぽいから明日怒るかもよ?

 ハルちゃんも怪しかったけど、どちらかと言うと相当眠いんでしょ」


「うん…… お腹もいっぱいだし、足もパンパンだし、お先にお休みだよぉ……

 明日は何して遊ぼうかねぇ……」


 そう言いながらまぶたが閉じていくのを我慢できない美晴は、数分で寝息を立て始めた。八早月と綾乃は向かい合い肩をすくめ笑うと、いそいそと寝る準備を進めたのだった。


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