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5.四月十二日 放課後 書道部

 部活動見学へ行ってみることにした八早月(やよい)は、一度学校を出てから板倉へ三十分ほど待っていて貰いたいと伝え、美晴を陸上部の部室まで送ってから書道部が活動している教室へと向かった。


「失礼します。

 あ、部長、今日はクラスメートを見学に連れてきました。

 書道は未経験らしいですけど構いませんよね?」


「ああ山本さん、こんにちは。

 もちろん見学は大歓迎さ、こちらでクラスと名前を書いてもらえる?」


 そう言いながら部長である三年生の男子生徒が顔を上げた。だが普段は人当たりが良いはずの部長はまたすぐに顔を伏せてしまう。しかし八早月は何かに気付いたようだった。


「夢路さんは以前から書道やっていたのかしら。

 私はちゃんとはやったこと無くて道具もなにも持ってないの。

 分校の教材は共同使用だったのよね」


「私だって初心者だよ。

 小学校の授業でやったことあるだけだもん。

 だからまだまだ全然うまく書けないの。

 でも部長はすごく上手だから見せて貰ったらいいわよ」


「へえ、部長は書道がお上手なのですね。

 良ろしければ見せていただけますか?

 それとこちらが部活動見学の届けです」


「あ、ああ、じゃあ先ほど書いたこれ、をどうぞ、見て、下さい。

 ええと、な、お名前は櫛田八早月、さ、さま……」


「部長どうしたんですか?

 八早月ちゃんがかわいいから緊張してたりしてー」


「ま、まあそんなところ、です。

 それで…… なぜ書道部に?

 帰りが、遅くなる。こと、も、ありますが、へ、平気で、しょうか?」


「それはこれから家族へ相談する予定です。

 もしかして私が書道部に入るとご迷惑ですか?」


「い、いえ、そんなはず、ありません……

 だ、大歓迎、で、す。

 ―― なんであなたがこんなところに……」


 書道部部長の四宮直臣(しのみやただおみ)は、八家筆頭である櫛田家当主の予期せぬ来訪に肝を冷やしながら小声で八早月へ話しかけた。


「特に他意はありません。

 まったくの偶然ですのでお気になさらず」


 そう言われても無理な話だ。なぜならば八畑村の八家には明確な序列が有り、四番目の分家である四宮家にとって櫛田家の人間と言うだけで畏怖尊敬の対象なのだ。しかも相手は八歳で当主を継承した現当主、片や直臣と言えばまだ何の実績もなく長男だから次期当主と扱われているだけの中学生である。


 もしも何か癇に障ることをしてしまい、それが四宮家現当主である父の耳に入ろうものなら何を言われるかわかったものではない。直臣自身は八早月どころか櫛田家と個人的な付き合いがあるわけではない。祭事で一緒になる程度でその人柄を知ることもない八早月のことをただただ畏れていた。


 逆に八早月にとって直臣は分家の次期当主だと知っている程度で、特に上下関係をうるさく言うつもりもなく、彼の学園生活を邪魔するつもりもなかった。いくら世間知らずな八早月と言えど、学校の先輩なのだから顔を立てた方がいいくらいはわかっているつもりだったのだ。


 だが疑心暗鬼になっている直臣へ本心をどう伝えれば良いかわからない八早月は色々と面倒になり、結局は書道部への入部を諦めることにした。


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