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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第二章 皐月(五月)

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33.五月十三日 昼 本家会合

 隣町の地鎮祭で六田櫻(むた さくら)が出会った少女寒鳴綾乃(さむなき あやの)の件について、八家では昼食会を兼ねた会合が行われていた。


「調査によると、彼女は久野町で生まれ育ったようですね。

 年齢は十三歳で久野中学の二年生、父親は高校教師、母親は専業主婦と。

 特に不審な点はありませんから放っておいても構わないのでは?」


「ですが間違いなく弧浦を認識していたのですよ?

 おそらく(あやかし)も見えている事でしょう」


「まあまあ櫻殿落ち着きなされ。

 呼士や妖が見えていたとしてなんの問題があるのか。

 僕たちの邪魔になるわけで無し、筆頭殿はそう言いたいのでしょ?」


「そうですよ櫻さん、見えてしまう人と言うのは間違いなく存在します。

 私たちがその人たちを畏怖する気持ちもわかります。

 ですがそれは本来私たちが一般の人たちに思われていることですからね?

 きっと先祖に八家の血でも入っているのでしょう。

 彼女にはその血が色濃く出た先祖がえりと言うだけのことかと。

 それに八岐贄(やまたにえ)にならずとも呼士が見えることもありますしね。」


 その言葉には、現当主筆頭の体験が重ねられていることを全員が理解し納得した。結局自分たちが不可思議な存在であるのだから、多少常識を超越した少女がいたからと言って警戒する必要などない、これが八早月(やよい)の判断だった。


「確かに言われてみればその通りですね。

 驚いたり畏れたりすることもありませんでしたし、見えるだけのようでした。

 呼士とは会話も出来ないようで、弧浦にも相手の声は聞こえておりません」


「その娘についてですが、もしかすると保護が必要かもしれません。

 我が呼士、縁丸(えにしまる)の調べではあの親子に危機が迫っているやもしれぬ。

 家の近くにはごく弱い妖ではありますが、多量に発生している形跡がございます」


 今までとは異なる緊急性の高そうな報告が四宮臣人(しのみや おみと)からなされると、八早月だけではなく皆が目を見張った。これは見逃すことのできない問題である可能性が高いからだ。


「ですが今までそのような報告は一度もありませんでしたよ?

 ええとあの地域の担当は双宗家か五日市家ですね。

 村からは少し遠いですが、妖の気配に気が付いたことは無かったのですか?」


「はあ…… 臣人殿、それは真でございますな?

 私も聡明(やすあき)殿も朝晩の見回りで手を抜いたことはございません。

 もちろんあの近辺で妖を確認し討伐したことは何度もございますが……」


「左様ですなぁ、(あたる)殿も私も異常を認識したことはない。

 それにしても臣人殿は良く気が付きましたな、いやあ大したものです」


「おそらく妖を発見して即時討伐していたなら気が付かなかったでしょう。

 本当にごくわずか、例えるなら(しゅうとめ)が嫁イビリをする際の小さな(ほこり)程度。

 しかも誰かに倒されたのか、すでに(むくろ)だったのです」


「臣人さんの表現に私情が挟まっている気もしますが問題はそこではないですね。

 誰が何のために妖を倒したのか、それと痕跡が残っていた理由、この三点かと」


「かしこまりました、その点について引き続き調査いたします。

 それと、できればあの家族の系譜を探っておきたいのですがどなたか――」


「それはワシに任せてくれぬか。

 最近は年のせいかあまり活躍の場もなく、せめて情報収集くらいはな。

 とは言え実際に働くのは役所の人間で、ワシはあくまで整理するだけだ」


「わかりました、それでは役所回りは耕太郎(みかみ こうたろう)さんにお願いしますね。

 追加で櫻さんは、あの家族の詳細がわかるか宮司さんへ確認願います。

 依頼が来た経緯とかまあその程度でも構いません。

 今時珍しい神杭打ちを依頼するに至った理由は個人的に興味がありますね」


「仰せのままに、この度はお手を煩わせてしまい申し訳ございません。

 今後はもっとしっかり調べてからご報告するように致します」


「いいえとんでもない、助かりましたよ櫻さん。

 さすが母として立派な目と感性をお持ちですね。

 少女の発した僅かな違和感に気付けたのですから胸を張りましょう。

 これはやはり普段から母として子へ愛を注いでいるからに違いありません。

 臣人さんもそう思うでしょう?」


 流れ弾のように突然名を呼ばれた四宮臣人は、先日やらかしてしまった、直臣を後継者と言う鎖で縛り修練を強要しているような発言を改めて諭されているのだと察し、額を流れていく大汗を拭くことしか出来なかった。


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