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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第九章 師走(十二月)

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225.十二月二十二日 丑三つ時 生誕日

 その夜八早月は八岐大蛇を思い浮かべながら寝てしまった。それはすなわち夢枕へ八岐大蛇を呼び出したのと同意である。


「これ櫛田の娘、今宵はいかなる要件なり?

 なにかをかしき(面白い)、いやこうぜしためし(困ったこと)にもあらば聞かすべし」


「これは八岐大蛇様、願いはございませんが想いを馳せてしまったのでしょう。

 わざわざご足労頂くことになってしまい申し訳ございません。

 ただせっかくなので一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」


「うむ、我との間にはばかり(遠慮)はいらぬ、何なりと申すべし」


「八岐大蛇様のお誕生日はいつなのかお聞かせくださいませんか?

 八岐神社に定められた祭事が多く無いためなのか、生誕祭がございません。

 そんな失礼なことに今まで気が付かぬとは未熟ゆえの至らなさ反省しきり」


「なに? 生誕日と? これまたをかしきことを言ひそむる(出す)ものかな。

 我がこの世にうちいでいで(現れ出て)たりより|遥かなるほど経られより暦ぞえける《遥かな時間を経てから暦が出来たのだぞ》?

 ならば人世(人間社会)に我が生誕日記すべけれど(記録される)無かろうて。

 祝ひせまほしくば(したければ)数寄な日に数寄なだけ祝ふべけれど(祝えば良いが)特段望みはせぬ」


「それは盲点、当然のことでございました。

 と言うことは誕生を祝われている神がいたら偽物と言うことなのでしょうか」


さもあらぬ(そうでもない)、神とはこの(地球)産みいだしし我らのごとき祖神(そしん)ばかりならず(ではない)

 誰かの願ひ産みいだす後天的なる人知神も、自然産みいだす自然神もおるなり。

 また対にてうちいづる(現れる)妖や魔と呼ばるる(存在)も同じことよ」


「ああ、我が無知と思慮の浅さを恥じるのみでございます。

 お言葉を伺うまでそんな簡単なことにも気づかぬとは申し訳ございません。

 人の願いの揺り返しが妖を産み世を乱す、忘れてはいないはずなのですが……」


な案じそ(気にするな)、心に留めめど忘れめどまこと(事実)も出来事もうつろはぬ(変わらぬ)

 お主はなすべきことすべきなり、今もすべきことのあるならむ(だろう)

 友どもと楽しきほどふり(時を過ごし)、いづれ我が元へ参りしほどの土産物語にすべし」


「ははっ、これからも精進し八岐大蛇様をお慕い続けることを誓います。

 なにとぞ我が村我が地域、一族へのご加護をお願い申し上げます。

 それと先日巳女に頂きました肉体、当人非常に喜んでおりました。

 お礼をついで同然で申し上げるご無礼お許しくださいませ」


「うむ、喜びたらば我も甲斐ありきと言ふものなり、それに――」


「それに? なんでございましょう」


「いや、ことなし(なんでもない)さ言はば(そう言えば)我もたより(ついで)に主へ尋ぬべしや(尋ねてよいか)?」


「それはもちろんでございます、何なりとお尋ねください!」


 珍しく八岐大蛇からの申し出に八早月は驚きと喜びを感じていた。しかし八岐大蛇は一呼吸おいてもまだ何も言わず黙ったままである。


「八岐大蛇様? 如何なされたのでしょうか?」


「いや、ことなき、なほよしおかむ(よしておこう)

 とかく皆と睦まじくすべきぞ、ではさらばなり」


 何も言わず去って行く八岐大蛇を見送りながら、八早月は戸惑いつつ再び眠りについた。



◇◇◇


「大蛇? などしかと聞かずや?

 あの鳶の若者をいかが想へるや(っているのか)気になりて|せむかたなからずや《仕方ないではありませんか》。

 はあ、恋に恋ひ焦がるるなど(本当)愛しな(ういですね)


たえて(まったく)そなたは下品ぞ過ぐる? しか(そんなに)他人の色恋が気になるや?

 我には到底心得られぬ(理解できない)趣向なりよ」


「|他人にさうらはぬよ《他人ではではございませんよ》? かの娘は我が黄泉返り同前なればぞ。

 さすれば心地(感情が)こはく(強く)入り込むともたてまつり方(致し方)の無きかな」


たえて(まったく)、物は言ひ様になありそ(であるな)


 八岐大蛇はそう言いながらも地上の様子をうかがうことをやめようとはせず、お櫛もまた一緒になって八早月たちの生き様を楽しんで眺めるのだった。


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 お読みいただき誠にありがとうございます。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨をお伝えくださいますと嬉しいです。


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