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限界集落で暮らす女子中学生のお仕事はどうやらあやかし退治らしいのです  作者: 釈 余白(しやく)
第九章 師走(十二月)

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221.十二月十九日 放課後 秘密の解法

 放課後集まるのは別に久しぶりでもなんでもなく、昨日も一昨日も一時間ほどはおしゃべりをしていた。しかし今日はテスト結果が帰ってきているのだから事情は違ってくる、はずだったのだが――


「ええー、あれだけ苦労したのに八早月ちゃんったら英語は結局赤点だったの?

 数学は大丈夫だったのがまだ救いね、でもハルちゃんは思わぬ伏兵が……」


「そうなんだよねえ、ちょっと暗記時間が足りなくなっちゃったってとこかな。

 大体教科数が多すぎるよ、これじゃやる気があっても全部に手が回らないもん」


「なるほど、物は言いようってやつ? 確かに個人差もあるのは確かだけどさ。

 ハルの場合は完全に普段何もやってないからでしょうに。

 まあ部活もあって頑張ってるから何もって言うのはかわいそうだけどね」


「もうなにその上から目線、夢だって苦手な教科はあるじゃないの。

 ただそれがテストには無いだけでさあ、なんかずるい」


「体育だって実技のテストあるからすっごい嫌なんだよ?

 特に男女混合なのに走る授業はホントやめてもらいたいなあ」


「ちゅっと夢路さん? また少し大きくなったのではなくて?

 気のせいか綾乃さんと大差ないくらいになっているように見えるわね。

 私としては体育の不得手と引き換えで構わないから少しくらい膨らんで欲しいのだけれど」


「実はその通りなんだけどね…… 今年三回目の買い直しはダメって酷くない?

 私のせいじゃないのにさ、おかげで今はママのお下がり使ってるんだよ?

 確かにサイズはあってるけど大人用で派手な柄だから恥ずかしいよ」


「大人用には柄が入っているの? 私のは柄も模様もなにもないわね。

 お母さま曰く『子供用ならこんなもの』らしいのだけれどね。

 それより、あっても無くても特に変わらないのが悲しいところね」


「普通はそんなもんだと思うよ、私だって無地でつまらないやつだもん。

 もう二年生なんだからちょっとくらい背伸びしたいって言ってもダメだって。

 やっぱり上下セットのやつとか憧れちゃうじゃない?」


「そうかしら、私は上下無地の白だからある意味セットだわ。

 もちろん嬉しくもなんともないけれどね」


「八早月ちゃんはこれからに期待だね。お母さんがスタイルいいから大丈夫。

 うちのママはぽっちゃりを通り越してるから不安しかないわ。

 ハルん()や綾ちゃん()もやせ型だからきっと心配ないね」


 それほど大きな声ではないものの、話している内容が内容だけに周囲の男子が興味半分気まずさ半分と言った様子である。しかし少女たちは何も気にせず話を続ける。


「そう言えばこの間の体育の着替え途中に見えちゃったんだけどさ。

 愛美ちゃんがストライプのパンツ履いてたよ。

 さすがにブラは透けちゃうだろうから無地だったけど」


「夢ったらそんなとこまで見てるわけ? 女子まで観察とかヤバすぎでしょ。

 まさか男子の着替えを覗きに行ったりしてないわよね?」


「いくらなんでもそんなことするわけないでしょ! 私をなんだと思ってるの?

 三次元にはあまり興味がわかないよ、カッコいい子も全然いないしさ。

 私は部室で四宮先輩を眺めていれば満足、でもたまにでいいから綾ちゃんが来て並んで会話したりして欲しいなあ」


「もう、夢ちゃんはまた変なことこと言うんだから、意識しちゃうからやめてよ。

 それに文化祭終ったんだからもう部室へ行く用事もないんだからね。

 あ、そう言えば一年生も書初めの宿題出てるの?」


「あるある、でも誰でも道具持っているとは限らないのにね。

 八早月ちゃんは分校で書道用具共同だったって言ってたでしょ?

 家に自分のは無いってことだよね?」


「そうだわ、忘れていたけれど確かに困るわね、宮司さんに借りに行かないと。

 いざとなったら分校の子たちに混ざって一緒に書くと言う手もあるけれどね」


 綾乃が切り出した冬休みの宿題に話題が移ると、ようやく本題を思い出したかのように四人ともポケットへ手を突っ込んだ。


「いい? 一斉に出すんだからね、せーのー、はい!」


「まあ夢路さんの点数はおおよそわかっていたのだけれどね。

 全教科十五位以内は尊敬に値するわ。しかも自分だけ勉強したわけではないと言うのに驚きよ」


「大げさだってば、八早月ちゃんたちの勉強を見るのも自分のためになったね。

 いい復習になってケアレスミスが減った気がするもん。でも綾ちゃんもかなり点数いいね」


「主要教科だけはしっかり復習しているからね。でもその他はさっぱり。

 美術は歴史と通ずるものがあるからまだいいけど音楽なんて赤点寸前だよ?

 技術家庭なんてテストやる意味ある? 栄養士目指してるわけじゃないのにさ」


「綾乃さんはやはりいいことを言うわね、私も数学者にならないし外国に住むこともないのだからどちらも出来なくて困らないわ」


「あーまって、今の無し無し、八早月ちゃんが変な言い訳覚えちゃったよ……

 もしかしたら気が変わって大学行きたくなるかもしれないじゃない?

 その時になって勉強始めても遅いんだからね?

 それに数学は今回とても良かったじゃないの、四十四点だっけ」


「八畑村から通える範囲に大学は無いでしょう? その時点で進学は無理ね。

 もちろん近くにあっても万が一どころか億でも兆でも絶対に行かないわ!

 数学で百点取れるようになったとしてもそれは変わらないことなのよ」


「別に無理にでも行けって言ってるわけじゃ無いけど(かたく)なすぎるよ……

 勉強が嫌いだから以上の何か特別な理由でもあるわけ?」


「いいえ、特別な理由なんて何もないわ、あえて言うなら興味がないだけね。

 英語は頭に全く入ってこないわ、数学は今回の勉強で理解が深まったけれど。

 わかってしまえばなんてことは無かったわね、妖に例えるのはとてもわかりやすかったわ」


「何の話? 私も夢ちゃんもそんな教え方しなかったと思うんだけど?

 それに数学と妖の関係がさっぱり想像つかないなあ」


「あー! 八早月ちゃんったら飛雄さんに数学を教わったんでしょ?

 だからいいとこ見せようとしていつもより頑張ったんじゃないの?」


「別にいいところを見せようとなんて…… 例えがわかりやすかっただけよ。

 掛け算と割り算は大妖(たいよう)だから先に退治するって言われてその通りにしたの。

 そうしたら正答が増えたと言うわけ、きっとこれで数学はもう大丈夫ね」


 鼻の穴を大きくして誇らしげな八早月だが、綾乃と夢路は苦笑いしている。さらに言えば美晴でさえも呆れている様子が見て取れた。


「あのね八早月ちゃん、四則演算のルールがわかったのはいいことだよ?

 でもそれって小学生の算数レベルだからさ、これからも苦労は続くだろうね。

 だからと言って無駄なわけじゃ無いよ? 基礎計算ができれば取れる問題も多いんだから」


「それでいいのよ、私は赤点と追試さえなければ十分満足、あとは英語だけね。

 あのおかしな文字を克服できればいいのだけれどねえ……」


 八早月はそう言いながら、先ほど担任から『八早月専用』だと言って渡された英語のプリントをテーブルの上に出した。その一枚目には問題ではなくアルファベットの書き順や注意点が書いてあり、まるで小学生用教科書の一ページ目のようである。


「ちょっと…… 縦棒を真ん中に書いてもbとdの共用にはならないって……

 八早月ちゃんたらこんな面白い指摘受けてるの!? 夢ちゃんは知ってた?」


「そりゃ同じクラスだから知ってたよ、私もどうすればいいかわからなくてさ。

 ようやく先生が個別に教えようと思ってくれて助かるよ。

 ちなみに今回以外はいつもハルのほうが点数低かったからビックリだよね」


 想像をはるかに超えるデキに綾乃は卒倒しそうなりつつ、冬休み直前だから追試はやらないと決めた教師たちに感謝していた。


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 お読みいただき誠にありがとうございます。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたなら、ぜひそこの戸をお伝えくださいますと嬉しいです。


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